挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)

チョーカー

ダンジョンの暴走と反逆

 「この世界におけるダンジョンの存在意義とは人類に成長を促す事にあります」

 「人類に成長を?」

 「そのためにダンジョンは人類に困難と報酬を与える存在になりました」

 「……確かに心当たりはある」

 
 ワラワラと出現するモンスター。 悪意ある罠の数々。

 しかし、それらは経験と知識を得て、鍛錬を積む事で克服する事はできる。

 卓越したゲームバランスのような印象をダンジョンに感じた事が何度かある。

 まるで最初から攻略されることが前提であるようかの作り……を。


「それで、そのダンジョンさんが私たちと会話を望んだの理由はなに?」とアイル。


「はい、実は想定外の出来事が起きてしまったのです」

 ダンジョンの意思、インターは苦悶の表情で、こう続けた。


「キョウさまとアイルさま、両勇者さまが同時に同じダンジョンに立ち入ることは想定外でした」


「はぁ?」と俺とアイルは同時に声を出してしまった。


「同時期に数名の勇者が生まれる事は少なくありません。 珍しい事態ではありますが、同時にダンジョンに入ることも―――― しかし、今回は事前に予知する事もままならずに――――

 結果、重要なシステムエラーが生じてしまったのです」


 俺は「重要なシステムエラー?」と唐突なパソコン用語に困惑する。

 いや、考えてみれば目の前の人物もインターフェースと名乗っているわけで……

 もしかしたら、俺たちに理解できるように訳した言葉なだけなのかもしれない。


 「それで重要なシステムエラーって何よ?」


 アイルは鋭い視線を飛ばして問い詰める。


 「はい、世界にある112のダンジョン。 そのうち5つが本体から意思を切り離し、暴走……人類へ反逆を開始しました」

 「ダンジョンが人類への反逆を?」


 はっきり言って意味がわからなかった。 そもそも、ダンジョンの人類に貢献しているなんて話を聞いたばかりだ。

 今までの認識では、ダンジョンは人類に仇す存在。ただでさえ、そうなのに……

 一体、ダンジョンの反逆とは、どんな現象なんだ?

 「つきましては御両人に問題解決のお願いを――――」


 と最後までインターは口にできなかった。 アイルがインターの首元を掴んだからだ。


 「お前っ! 一体なにを?」

 「なにふざけた事を言ってるのよ!」


 怒鳴られたインターは眼を白黒させている。


 「さっきから黙って聞いてたら、人の事を成長させると上から目線で、いざって時には私たちに頼む? 馬鹿じゃないの!」


 こともあろうにアイルはインターの体を持ち上げ、地面に叩きつけるように投げた。


 「――――ッ!?」とインターは地面に衝突する直前に体を反転。

 地面に着地すると、目前にはアイルが既にいた。


 「なによ。やっぱり、アンタって強いじゃない」


 その言葉にインターは俯き「……」と何かと思考するような顔をみせた。

 それから、頭を上げると――――


 「まさか、私にも戦え……と?」


 その答えにアイルは満面の笑みをもって答える。


「そうよ、アンタは今、人を無理やり成長させようとして失敗したわけよ。 問題解決を人に頼む前に自分で試す! 試行錯誤ってやつから始めるが筋ってやつでしょ?」


 ・ ・ ・

 ・ ・ ・ ・ ・ ・

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「これでいいのでしょうか?」とインター。

彼は……いや、彼女・・はそういった。

暴走したダンジョンを止める。 それを手伝うためにアイルが出した条件は2つ。

まずは仲間になって一緒に戦う事。

次は、その姿についてだった。


「まず、私よりも背が高いのが気に食わない」


そんな無茶苦茶ない言い分を強行させた。

元はスライムという事もあって、見た目は変更できる仕様らしい。

アイルよりも低めに設定し直された身長。 それに伴い「じゃ、折角だから性別も変えちゃおうか?」と女の子にされたインターだった。

「ふぅ~ これで大丈夫よね?」とまるで一仕事終えたように息をつくアイル。


「いや、俺に聞かれても……何がだ?」

「何がって……こういう風貌の方がアンタの屋敷で暮らしても違和感がなくて良いじゃない?」

「あるわい! 今でもご近所さまによからぬ噂になってるわい!」

「1人のロリなら犯罪臭が酷いけど、2人のロリなら……」

「なんか、うまい事を言おうとして諦めんな!」


そんな俺たちの様子を見ていたインターがクスと笑った。


「それではこれからよろしくお願いします」


インターは最初から素直そうな少女だったかのように振る舞い頭を下げた。



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