挫折した召喚勇者は転生勇者の師匠になりました (タイトル変更)
新たな脅威?
「それで、お前は何やってるんだ?」
「え? 階層主って要するに超レアなモンスターでしょ? 持って帰ったら、高額で売れるんじゃないの?」
アイルは黒く変色したドロドロとした物体を素手で掴んている。
「いや、倒した直後のまま小型の保存庫で持ち帰れば、魔法使いが素材に使いそうだが……それ、もう腐ってるだろ?」
凄い異臭が鼻を刺激する。 なんでコイツは平気なんだ?
犬は人間の嗅覚の1億倍あるから、逆に異臭に対して麻痺してるみたいな話は聞いた事あるが……
アイルは「じゃ、いらない」と手にした階層主の遺体は地面に放り投げた。
なぜだろう? 初めて魔物相手にいたたまれない気持ちになった。
「収穫は……ないみたいね。 宝箱くらい用意しておくべきだわ」
そんな事を言いながら、ボス部屋の隅々まで歩き回るも、すぐに飽きたようだ。
「それじゃ帰りましょう」と踵と返した。
しかし――――
「痛っ! なによこれ!」
何かに、ぶつかったかのように後ろに倒れて尻餅をついていた。
「……? 何をしてるんだ?」
「知らないわよ! 見えない壁みたいなものがあるわよ!」
「ん? 結界か? でも魔力の流れはないが……」
俺は目前に向けて手を伸ばす。 確かに見えない壁のようなものが存在していた。
「何かの罠か? しかし……」
俺は腰から剣を抜き、軽く一振り――――やはり弾かれた。
奇妙な事に、剣から伝わった感触では、物理的な壁ではないのがわかった。
では、魔力を使用した結界なのか? それも違う。
「魔力の気配もしない。 物理的な質量とも違う……何だこれ?」
いざとなれば、切り札である魔法を使って脱出すればいい。
冒険者としてのブランクだろうか? その判断は誤りだった。
『エマージャンシーコール 再構築を開始します』
女性の声が聞こえた。
まるでスピーカーから流れているような音質であり、どことなくゲームのシステムボイスのように淡々とした口調。
「なによこれ? 階層主って倒したら、こんなアナウンスが流れるの?」
「……」と俺は返答できなかった。なぜなら――――
「いや、これは俺も初めてだ」
もしかしたら、出現したばかりの階層主を倒したら特別ボーナスみたいなのが、あるかもしれない。
だが、少なくとも俺は聞いた事が無い。 何が起きてもいいように警戒心を強める。
すると――――
「ちょっとあれ!」とアイルが悲鳴じみたこえを出した。
彼女が指差す方向に視線を向けると、確かな異変が起きていた。
階層主の残骸。
黒く変色していたそれが、緑色に戻っている。
「階層主の即時復活? ……いや違う!」
よく見れば、スライムである階層主の中に何かがいる。
そして、それは人影だった。
その人影を認識したのも一瞬だけ、何者かを覆っているスライム状の物体は四方へ弾けとんだ。
「消えた?」
そう呟いたのアイルだろうか? それとも俺か?
確かにいたはずの人影は消え失せていた。
「な、なんだったの? あれ?」
そういうアイルの額に汗が浮き出ている。彼女もアレがありえない存在だという事を認識したのかもしれない。
そう思った直後――――
「アイル! 後ろだ!」
ソイツは現れた。 視界の隅、気配もなく歩いている。
一方でアイルの対応は早かった。
振り向きもせず、前に大きく跳ぶ。確認するよりも間合いと取る事を優先したのだろう。
だが、ソイツは動かなかった。 ただ、観察するようにコチラの様子を窺っている。
緑色の髪。 色素の薄い肌。 ちなみに全裸だ。
「なにコイツ? 人間なの?」とアイル。 それは俺にもわからない。
ソイツはパクパクと口を動かしている。 まるで餌を催促する鯉のようだ。
何がしたいのかわからない。 少なくとも攻撃ではないようだ。
俺はアイルに近づき耳打ちする。
「魔法を使用する」
「アンタの魔法って、火属性の攻撃魔法じゃ……」
「いや、もう1つの方だ」
そう言って、俺はもう1つの魔法を発動させた。
「え? 階層主って要するに超レアなモンスターでしょ? 持って帰ったら、高額で売れるんじゃないの?」
アイルは黒く変色したドロドロとした物体を素手で掴んている。
「いや、倒した直後のまま小型の保存庫で持ち帰れば、魔法使いが素材に使いそうだが……それ、もう腐ってるだろ?」
凄い異臭が鼻を刺激する。 なんでコイツは平気なんだ?
犬は人間の嗅覚の1億倍あるから、逆に異臭に対して麻痺してるみたいな話は聞いた事あるが……
アイルは「じゃ、いらない」と手にした階層主の遺体は地面に放り投げた。
なぜだろう? 初めて魔物相手にいたたまれない気持ちになった。
「収穫は……ないみたいね。 宝箱くらい用意しておくべきだわ」
そんな事を言いながら、ボス部屋の隅々まで歩き回るも、すぐに飽きたようだ。
「それじゃ帰りましょう」と踵と返した。
しかし――――
「痛っ! なによこれ!」
何かに、ぶつかったかのように後ろに倒れて尻餅をついていた。
「……? 何をしてるんだ?」
「知らないわよ! 見えない壁みたいなものがあるわよ!」
「ん? 結界か? でも魔力の流れはないが……」
俺は目前に向けて手を伸ばす。 確かに見えない壁のようなものが存在していた。
「何かの罠か? しかし……」
俺は腰から剣を抜き、軽く一振り――――やはり弾かれた。
奇妙な事に、剣から伝わった感触では、物理的な壁ではないのがわかった。
では、魔力を使用した結界なのか? それも違う。
「魔力の気配もしない。 物理的な質量とも違う……何だこれ?」
いざとなれば、切り札である魔法を使って脱出すればいい。
冒険者としてのブランクだろうか? その判断は誤りだった。
『エマージャンシーコール 再構築を開始します』
女性の声が聞こえた。
まるでスピーカーから流れているような音質であり、どことなくゲームのシステムボイスのように淡々とした口調。
「なによこれ? 階層主って倒したら、こんなアナウンスが流れるの?」
「……」と俺は返答できなかった。なぜなら――――
「いや、これは俺も初めてだ」
もしかしたら、出現したばかりの階層主を倒したら特別ボーナスみたいなのが、あるかもしれない。
だが、少なくとも俺は聞いた事が無い。 何が起きてもいいように警戒心を強める。
すると――――
「ちょっとあれ!」とアイルが悲鳴じみたこえを出した。
彼女が指差す方向に視線を向けると、確かな異変が起きていた。
階層主の残骸。
黒く変色していたそれが、緑色に戻っている。
「階層主の即時復活? ……いや違う!」
よく見れば、スライムである階層主の中に何かがいる。
そして、それは人影だった。
その人影を認識したのも一瞬だけ、何者かを覆っているスライム状の物体は四方へ弾けとんだ。
「消えた?」
そう呟いたのアイルだろうか? それとも俺か?
確かにいたはずの人影は消え失せていた。
「な、なんだったの? あれ?」
そういうアイルの額に汗が浮き出ている。彼女もアレがありえない存在だという事を認識したのかもしれない。
そう思った直後――――
「アイル! 後ろだ!」
ソイツは現れた。 視界の隅、気配もなく歩いている。
一方でアイルの対応は早かった。
振り向きもせず、前に大きく跳ぶ。確認するよりも間合いと取る事を優先したのだろう。
だが、ソイツは動かなかった。 ただ、観察するようにコチラの様子を窺っている。
緑色の髪。 色素の薄い肌。 ちなみに全裸だ。
「なにコイツ? 人間なの?」とアイル。 それは俺にもわからない。
ソイツはパクパクと口を動かしている。 まるで餌を催促する鯉のようだ。
何がしたいのかわからない。 少なくとも攻撃ではないようだ。
俺はアイルに近づき耳打ちする。
「魔法を使用する」
「アンタの魔法って、火属性の攻撃魔法じゃ……」
「いや、もう1つの方だ」
そう言って、俺はもう1つの魔法を発動させた。
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