電気使いは今日もノリで生きる

歩海

みらいへ



「イフリート」
『ええ、わかってるわ』


気がついた。今、たった今、世界がなんか変わった。多分これは…ミライが死んだのだろう。わかっていたが、それでも辛いものがある。


『辛いけど…』
「わかってる…あいつが繋いでくれたこの命…この希望、絶対に守ってみせる」


そう思い、僕はイフリートと一緒に逃げた。逃げることしか…できなかった。そうすることでしか、お前に報いることができないなんて…今すぐにでも戻って戦いたかった。でもそれは、お前は全く望んでいないことなんだろう?だから僕は我慢するしかない。ひどいやつだよ。お前は






そのあと、僕はイフリートに言われるがままあちこちを転々としながら武者修行に取り組んだ。ふと、風の便りで僕がもう討伐されることがないと知った。どうやらあの時に発生した魔王を僕ではなく、ミライと決めたみたいだ。ああ、やっぱり、僕があの時逃げてよかったのかもしれない。結局、ミライが死んでも何もこの世界は変わらなかった。ならばあの時死んだのが僕だったとしても変わることはなかったのだろう。


『今は耐えるのよ』
「わかってる。焦ることなんてしない」


今僕が出て行ったとしても…きっとまた同じことが繰り返されてしまう。そうなれば今度こそ本当にミライの死が意味のないものになってしまう。だから…僕は耐えなければいけない。焦ってはいけない。来るべき時に、僕は…この世界の敵になろう。


『そうね…その時はあいつの友人たちが、かなり強くなっているでしょう』
「そうだな」


今までもそうだったけれど、ミライの友人たちが世界のあちこちで活躍していることを聞いた。クスノキが水の国の姫と正式に婚約を発表したとかイチノセが大罪スキル『嫉妬』を完全に使いこなしてあちこちで人々を救っているとか。アオメが勇者として覚醒し、イチノセと同じく活動しているとか…そんなことをよく聞く。


「ミライの世界はすごいんだな」
『そうね…とても面白いところよ』


一方で気になるのはシェミン先輩のことだ。ミライのことを知っているのだろうがせめてお伝えしてあげたかった。ミライは嫌がるだろうが…それでも僕は伝えたいと思った。シェミン先輩のことは全く情報がない。逃げるのが上手であるからきっと今も隠れ続けているのだろうけど…それにもし殺されてしまったのならどの国もきっと大々的に伝えるはずだし。今の脅威といえばシェミン先輩ぐらいだからな


『セリアやサリアも…それぞれちゃんと国を作っているわねそれにシオンも』
「僕も…」
『そうね』


まだまだ先の話ではあるけど僕は国を作る。魔王が国作りなんて笑われるかもしれないけど…それでも、そこにはシェミン先輩を初めとする、差別されている人や行くあてのない人たちを受け入れられるようなそんな国になりたい。


「それに、ミライに託されちゃったからな」
『あなたのこれからが…楽しみよ』


イフリートにうなづき返して、そして…僕はまた歩き始める。ミライが繋いでくれた希望を無くさないようにしたい。それに…国々の対応を見てみれば、これで良かったのだと思う。まだ、吸血鬼を始め差別されている種族も多くある。それに…命の国みたいなことが起きないとは思えない。だから、僕は前に進むしかない。




これが、ミライに救われた僕の日常




























そして…時は流れ、


「ここは?」
「え?ちょっと待ってここどこ?」
「ようこそいらっしゃいました。転移者たちよ…我はこの国の王。お前たちには…魔王を討伐してもらいたい。公には葬り去られているがまだ生きているにっくき魔王、『火』の魔王、クレアを」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品