電気使いは今日もノリで生きる
覚醒・後編
長月二週目日曜日
「なんだこの魔法は…」
「はぁ…はぁ…」
魔法を放った瞬間、あたり一面に電気が走った。この感じはほとんど『領域』と同じであるけれど、僕はそれが異なると知っている
「まあいい、君を倒すことに変わりはない『土の槍』…え?」
ハジキさんが間抜けな声を上げている。それも当然だ。だって今、ハジキさんの魔法は一切発動しなかった。うん、困惑するのもよくわかる。僕も最初の時はそうだったから。
「なぜ、僕の魔法は発動しないんだ…」
「僕の力ですよ『放電』」
「ぐああああああああ」
「!、はやい」
放った電撃がいつもよりもかなり早い速度でハジキさんの体に命中した。いや、発動速度とかが桁違いなんですけど、あ、待てよ
「『創造』」
試しに砂鉄を集めてみたらかなり簡単に集めることができ、そして何個もの砂鉄の塊を生み出すことができた。
「『電磁砲』」
「ちょっ『土壁』…やはり反応しない」
塊を放つ。ハジキさんは無謀にもその位置で魔法を使おうとしたのでやはり発動することができず、その右腕に命中してしまった。そして、肉の焦げるような匂いが立ち込めると、ハジキさん右腕を失っていた。
「きゃああああああ」
「ちょ、あいつまじか」
『電磁砲』は超高温の塊を射出している。そのおかげだが傷口はすでに止血されている。まあ高熱で強制的に焼かれていることでふさがっているんだけどね。でもそれでも吹き飛んだ時に散った血しぶきがあちらこちらに点々とある。それを見て、恐怖する観客もいた
「くっ、お前、何をした…まさかあの吸血鬼から教えてもらっていたのか」
「いいや、違うよ…それにもう発動できるはずですよ」
「?『土壁』…なぜ」
便利な魔法ではあるけれどももう効果時間が切れてしまったみたいだ。作っていた砂鉄の塊もすべて粉となって風にまってしまう。意外と効果時間が短いんだな
「さて、もういいですか」
「待っててくれたのか」
「ええ、でも容赦はしませんが…一応聞きます。降伏しますか?」
「…すると思うかい?」
「ですよね『創造』」
砂鉄の剣を構えながらハジキさんの様子を見る。腕が吹き飛んでしまったのは正直ちょっと予想外だったけれどもまあ許容範囲だね。ハジキさんも僕を殺そうとしていたしお互い様でしょ
剣で壁を切り裂く。腕を失ったショックからかその場を動いていない。でも壁に隠れた一瞬の隙にすり替わった可能性もある。さて、どうしよっかな
「『起爆』」
「!」
やっぱり人形だったのか。でも僕はまだそこまで接近していないけど…ああ土煙を発生させるのが目的なのか。これで距離をとって一旦呼吸を整えようってことなんだろうね。でも甘い、今土人形が爆発したっていうことは今、電気信号を発生する可能性があるのはハジキさんの本体しかいない
「『感知』…ああ、そこですね『地雷』」
「!」
あえて横方向に魔法を放つ。さて、ここで逆方向から突っ込んだら多分怪しまれるだろうな。つまり…真正面から殴ればいいか
「ちっ」
「はぁぁ」
目視、そのままハジキさんと近接戦闘が始まる。でも向こうは片腕を失っているので攻め手が少ない。悪いけどそこの弱点は容赦なく使わせてもらう。攻撃しにくい右側に回り込んだりそれを見越して動こうとするの
「『地雷』」
「あがっ」
だから僕が仕掛けた『地雷』を踏んでしまう。さっき向こうの罠に引っかかってしまったからその仕返しだよ。まあ、かなり小さい復讐だけどね
「これで終わりです」
「うぐっ」
麻痺して動けなくなっているところに拳を思いっきり叩き込む。二発打ち込んだところでハジキさんの体からあ力が抜けて地面に崩れ落ちた。確認するまでもない、気絶している
「…」
観客たちもあまりのことに茫然としてしまっている。まあ無理もないだろうな。だって明らかに向こうのほうが勝つ可能性が高いというか勝つと思われていただろうし
「ミライ…お前」
「先ほどの力は…」
僕の元にクレアをはじめとして、先輩たちが駆け寄ってくる。しかしクレアの顔はかなり悪い。まあわからないでもないけど今は後にしてほしいな
「クレア、僕は大丈夫だ」
「なにがだ!今の力…それって『せか』」
『そこまで』
「!」
イフリートが釘をさすように言葉を遮る。ただ、その言葉を聞くことができたのは僕とクレアだけ。だから観客たちは…ああ、あまりのことでまだ茫然としているな
『「世界」については他言禁止よ…「領域」のさらに奥の話はしてはいけない』
「なぜ…」
『今は言えない…でも安心してミライは魔王じゃないわ…今のところは』
「…」
その言葉を受けて僕もクレアも黙ってしまう。まあクレアが危惧していたことはわかる。吸血鬼の王に蟲の王、どちらも『世界』という魔法を使っていた。『領域』と似て非なる魔法、それを使っていた。そしてどちらも『領域』に関してなにかしら思うことがあった。その上、僕が『世界』を使った…だから僕も魔王の一員じゃないかと思うことは当然だ。
でも、今はそれどころじゃない。やらなければいけないことがある
「サリア先輩、賭けはどうなりました?」
「え?ああ、あなたが勝ったから引き止めています…それでも進もうとする者はセリアが止めています…しかし、一晩が限界でしょう」
「つまり、今日の内はまだ誰もシェミン先輩を追っていないと」
「そうです…まさか」
それなら、話は早い。もともと向こうに約束なんて守る予定なんてなかったのだろう。でもこれでセリア先輩たちは止めることができる。血迷いごとではあるけれども一応止める大義名分はできたわけだ。
「なら…僕は追います…追って追いついて、話がしたい」
「無茶です…その傷で、その状態で動くなんて。それに、どうやって追跡するのですか」
「それは、僕が手伝います…僕の力を使えば」
「クレア…」
クレアの力、それはつまりイフリートの力。精霊の力を借りることができればシェミン先輩を見つけることがかなりたやすくなるだろう。問題は協力してくれるかどうかが問題だ
『まあそれは別にいいわ。力を貸してあげる』
「え?」
『でも…それは明日以降の話ね』
それはどういう意味なのか聞こうとした瞬間、僕は地面に倒れていた。え?いや、ちょっと待って。僕さっきまで普通に立っていたよね。ハジキさんとの戦いもそこまで傷を負っていなかったよね。なんでこんなことになっているんだ?
「ミライ!!」
「ミライ、どうしたのですか?」
『姫の魔法ね…あの土使いの子に勝ったら発動するようになっていたわ…さっきかけた回復魔法を解除するって』
「なんで…そんなことに」
『多分、気づいてたのでしょうね』
そんな素振り一切見せていなかったのに、どうして急に、というかみんなに吸血鬼のことが知れ渡ってしまったのって僕が迂闊な質問をしたからだ。そんなことがわかるなんてありえない
『…まあいいわ。とにかく、その体じゃ追跡は無理ね』
「まだ…『電気鎧・第三形態』」
『クレア』
「ごめん、ミライ『火』」
「うぐっ」
『無駄よ、回復魔法のなかにあんたの魔法を阻害する効果も含まれている…吸血鬼を舐めないほうがいいわ』
「そん…な…」
薄れゆく意識のなかで、僕は…ただただ、後悔していた。なんだかんだで…結局…守ることができなかった…
「なんだこの魔法は…」
「はぁ…はぁ…」
魔法を放った瞬間、あたり一面に電気が走った。この感じはほとんど『領域』と同じであるけれど、僕はそれが異なると知っている
「まあいい、君を倒すことに変わりはない『土の槍』…え?」
ハジキさんが間抜けな声を上げている。それも当然だ。だって今、ハジキさんの魔法は一切発動しなかった。うん、困惑するのもよくわかる。僕も最初の時はそうだったから。
「なぜ、僕の魔法は発動しないんだ…」
「僕の力ですよ『放電』」
「ぐああああああああ」
「!、はやい」
放った電撃がいつもよりもかなり早い速度でハジキさんの体に命中した。いや、発動速度とかが桁違いなんですけど、あ、待てよ
「『創造』」
試しに砂鉄を集めてみたらかなり簡単に集めることができ、そして何個もの砂鉄の塊を生み出すことができた。
「『電磁砲』」
「ちょっ『土壁』…やはり反応しない」
塊を放つ。ハジキさんは無謀にもその位置で魔法を使おうとしたのでやはり発動することができず、その右腕に命中してしまった。そして、肉の焦げるような匂いが立ち込めると、ハジキさん右腕を失っていた。
「きゃああああああ」
「ちょ、あいつまじか」
『電磁砲』は超高温の塊を射出している。そのおかげだが傷口はすでに止血されている。まあ高熱で強制的に焼かれていることでふさがっているんだけどね。でもそれでも吹き飛んだ時に散った血しぶきがあちらこちらに点々とある。それを見て、恐怖する観客もいた
「くっ、お前、何をした…まさかあの吸血鬼から教えてもらっていたのか」
「いいや、違うよ…それにもう発動できるはずですよ」
「?『土壁』…なぜ」
便利な魔法ではあるけれどももう効果時間が切れてしまったみたいだ。作っていた砂鉄の塊もすべて粉となって風にまってしまう。意外と効果時間が短いんだな
「さて、もういいですか」
「待っててくれたのか」
「ええ、でも容赦はしませんが…一応聞きます。降伏しますか?」
「…すると思うかい?」
「ですよね『創造』」
砂鉄の剣を構えながらハジキさんの様子を見る。腕が吹き飛んでしまったのは正直ちょっと予想外だったけれどもまあ許容範囲だね。ハジキさんも僕を殺そうとしていたしお互い様でしょ
剣で壁を切り裂く。腕を失ったショックからかその場を動いていない。でも壁に隠れた一瞬の隙にすり替わった可能性もある。さて、どうしよっかな
「『起爆』」
「!」
やっぱり人形だったのか。でも僕はまだそこまで接近していないけど…ああ土煙を発生させるのが目的なのか。これで距離をとって一旦呼吸を整えようってことなんだろうね。でも甘い、今土人形が爆発したっていうことは今、電気信号を発生する可能性があるのはハジキさんの本体しかいない
「『感知』…ああ、そこですね『地雷』」
「!」
あえて横方向に魔法を放つ。さて、ここで逆方向から突っ込んだら多分怪しまれるだろうな。つまり…真正面から殴ればいいか
「ちっ」
「はぁぁ」
目視、そのままハジキさんと近接戦闘が始まる。でも向こうは片腕を失っているので攻め手が少ない。悪いけどそこの弱点は容赦なく使わせてもらう。攻撃しにくい右側に回り込んだりそれを見越して動こうとするの
「『地雷』」
「あがっ」
だから僕が仕掛けた『地雷』を踏んでしまう。さっき向こうの罠に引っかかってしまったからその仕返しだよ。まあ、かなり小さい復讐だけどね
「これで終わりです」
「うぐっ」
麻痺して動けなくなっているところに拳を思いっきり叩き込む。二発打ち込んだところでハジキさんの体からあ力が抜けて地面に崩れ落ちた。確認するまでもない、気絶している
「…」
観客たちもあまりのことに茫然としてしまっている。まあ無理もないだろうな。だって明らかに向こうのほうが勝つ可能性が高いというか勝つと思われていただろうし
「ミライ…お前」
「先ほどの力は…」
僕の元にクレアをはじめとして、先輩たちが駆け寄ってくる。しかしクレアの顔はかなり悪い。まあわからないでもないけど今は後にしてほしいな
「クレア、僕は大丈夫だ」
「なにがだ!今の力…それって『せか』」
『そこまで』
「!」
イフリートが釘をさすように言葉を遮る。ただ、その言葉を聞くことができたのは僕とクレアだけ。だから観客たちは…ああ、あまりのことでまだ茫然としているな
『「世界」については他言禁止よ…「領域」のさらに奥の話はしてはいけない』
「なぜ…」
『今は言えない…でも安心してミライは魔王じゃないわ…今のところは』
「…」
その言葉を受けて僕もクレアも黙ってしまう。まあクレアが危惧していたことはわかる。吸血鬼の王に蟲の王、どちらも『世界』という魔法を使っていた。『領域』と似て非なる魔法、それを使っていた。そしてどちらも『領域』に関してなにかしら思うことがあった。その上、僕が『世界』を使った…だから僕も魔王の一員じゃないかと思うことは当然だ。
でも、今はそれどころじゃない。やらなければいけないことがある
「サリア先輩、賭けはどうなりました?」
「え?ああ、あなたが勝ったから引き止めています…それでも進もうとする者はセリアが止めています…しかし、一晩が限界でしょう」
「つまり、今日の内はまだ誰もシェミン先輩を追っていないと」
「そうです…まさか」
それなら、話は早い。もともと向こうに約束なんて守る予定なんてなかったのだろう。でもこれでセリア先輩たちは止めることができる。血迷いごとではあるけれども一応止める大義名分はできたわけだ。
「なら…僕は追います…追って追いついて、話がしたい」
「無茶です…その傷で、その状態で動くなんて。それに、どうやって追跡するのですか」
「それは、僕が手伝います…僕の力を使えば」
「クレア…」
クレアの力、それはつまりイフリートの力。精霊の力を借りることができればシェミン先輩を見つけることがかなりたやすくなるだろう。問題は協力してくれるかどうかが問題だ
『まあそれは別にいいわ。力を貸してあげる』
「え?」
『でも…それは明日以降の話ね』
それはどういう意味なのか聞こうとした瞬間、僕は地面に倒れていた。え?いや、ちょっと待って。僕さっきまで普通に立っていたよね。ハジキさんとの戦いもそこまで傷を負っていなかったよね。なんでこんなことになっているんだ?
「ミライ!!」
「ミライ、どうしたのですか?」
『姫の魔法ね…あの土使いの子に勝ったら発動するようになっていたわ…さっきかけた回復魔法を解除するって』
「なんで…そんなことに」
『多分、気づいてたのでしょうね』
そんな素振り一切見せていなかったのに、どうして急に、というかみんなに吸血鬼のことが知れ渡ってしまったのって僕が迂闊な質問をしたからだ。そんなことがわかるなんてありえない
『…まあいいわ。とにかく、その体じゃ追跡は無理ね』
「まだ…『電気鎧・第三形態』」
『クレア』
「ごめん、ミライ『火』」
「うぐっ」
『無駄よ、回復魔法のなかにあんたの魔法を阻害する効果も含まれている…吸血鬼を舐めないほうがいいわ』
「そん…な…」
薄れゆく意識のなかで、僕は…ただただ、後悔していた。なんだかんだで…結局…守ることができなかった…
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