電気使いは今日もノリで生きる
先輩からのお言葉
長月一週目水曜日?
「う、ううん」
「あ…目が覚めた…」
「シェミン先輩?」
目を覚ましたら目の前にシェミン先輩が居た。僕の顔を覗き込むようにしているからなのかかなり顔が近い。ぼんやりした頭でシェミン先輩を眺めていると先輩は顔を上げてしまった。ちょっと残念だと思ってみたり
「先輩、今は?」
「まだ…日にちは経っていないよ…でも…もう夜」
「そうですか」
先輩の答えにひとまずほっとする。これでまた一週間ぐらい寝てしまっていたらそれはそれでなんか嫌だもんね
「それで…どうしたの?」
「…負けました」
よく覚えていないけれど僕がここにいるということそういうことなのだろう。あの時、楠の魔法によって僕は眠ってしまった。その後なにか悪夢を見たような気がする。そっかナイトメアって日本語に訳すと悪夢ってことになるな。なるほどね。あの魔法は通常時にはそこまで怖くないけれども眠っている時ならかなりキツイ魔法になるのかな
「…はぁ」
本音をいえばかなり悔しい。これが模擬戦だから僕はこうして今生きているけれどもこれがもし本当の戦いだったら…いやそんな生ぬるいものじゃない、生死を賭けた戦いだったら僕は死んでいた。眠ってしまった時点で僕はなすすべもなく殺されてしまうだろう。それが何よりも悔しい。
「大丈夫?」
「え?あ、はい」
考え込んでしまっていたのだろう。シェミン先輩が不安そうに僕に問いかけてくる。いや不安というよりもどちらかといえば心配、か。先輩に心配をさせてしまうのはとても心苦しいのですぐに返事をする…これで心配が取り除かれるのかといえばよくわからないけど。
「なんか…ミライくん…辛そう」
「あはは、わかりますか」
まさか僕の心を見透かされるとは思ってもみなかった。だから僕は苦笑するしかない。そして僕はポツリポツリと心情を吐露していく
「まあ…まさかここまでとは思ってもみませんでしたから」
「相手の…実力が?」
「そうですね」
かなり簡単に言えばそういうことになる。僕は自慢じゃないけれども誇張なしにこの世界に来てかなり強くなったと思う。シェミン先輩やクレア、サリア先輩を初めてとしてかなり恵まれた環境ではあったけれど、そこで僕はかなり貴重な経験をした。たくさん修行というか強くなるために考えて新しい魔法をどんどん習得して練習して命がけの戦いをくぐってそうして今の僕がある。それなのに…
「ほとんど何もできずに負けてしまいました」
「…」
楠との戦いで僕の魔法は全く効かなかった。正確には全ての魔法を無力化されてしまっていた。似たような事は何回か経験している。クレアの『領域』やあの吸血鬼の王の『世界』など使う魔法を打ち消されたこともある。でもそんな時でもなんとかして潜り抜けた。策を考えて打開してきた。でも
「今回は何をしたらいいのかわからない…」
どうしようもない実力の差がある。それが僕の心を暗くする。楠がクラスメートであるということも関係しているだろう。クレアは元々この世界の住民だ。それに対して楠はクラスメートでこの世界に来たタイミングも同じ…なんなら僕の方が一ヶ月ほど早い。10年、20年と過ぎているのならそこまで気にしなくてもいいのかもしれないけどまだ一年と経っていない。その時の一ヶ月はかなり大きいはずなのに、僕は負けてしまった。あんなに努力したのに…僕は楠に勝てることができなかった。かつて戦ったときはあいつはいくつもの制限をしていたのだろう。今回はその制限をなく戦った。そして僕は負けた。くそっなんなんだよあのスキル「夢」は。チートにもほどがある。あれには勝てねえよ。てかどうすれば僕のスキル「電気」で勝つことができるんだよ。まったくビジョンが浮かばないんだけど。結局…どんなに僕が頑張ったとしても主人公には勝つことができないっていうのかよ
「そう…」
そんな僕の心情を…半分くらいは妬みも入った僕の言葉をシェミン先輩は黙って聞いてくれていた。どうしてだか先輩になら全部話せる気がする。
「ミライくん…頑張ってた…もんね…でも」
「はい…」
「それは…本当に…努力なの…かな?」
「え?」
シェミン先輩の言葉が頭の中でぐるぐると廻っている。えっと…僕がいままでしてきたことは無駄だった?意味がなかった?そういうことなのか?
「違う…そういうことじゃない」
「?」
「…みんな…生きるために…頑張ってる…」
「…」
「誰もが…生きるために…いまを…必死に…生きてる」
「…」
「君だけが…頑張っている…わけじゃない」
「…」
ふと、僕の頭にクレアが浮かんだ。あいつも僕と同じか…いや、それ以上にあいつは努力している。あいつのことは一番僕が知っていると思う。少なくともここ2、3ヶ月はあいつと一緒にいたんだ。あいつが頑張ってイフリートの力を扱えるように、朱雀を殺すために頑張っていることを僕は知っている。それが、誰にも当てはまる
「じゃあ…どうすれば」
「だから、人間は努力をするんだよ…信じるものを…信じて」
「…」
「大丈夫…ミライくんなら…きっと…勝てるよ…だって…今…生きているんだから」
「…」
こんな風に言ってくれる人を初めて知った。僕は…無意識のうちに慰めを期待していたのかもしれない。でも、それじゃあダメだよね。楠の方が強かった。僕は負けた。でもそれは僕よりあいつの方が強かっただけ…もっと言えば相性の問題もあったかもしれない。多分だけどお互いに初見殺しタイプ。けどあっちの方が初見殺しの度合いが強い。でも、それでいいじゃないか
チートだのズルイだの、自分は弱いだの、言い訳をすることも逃げることも僕はもうしない。しなくてもいい。今のシェミン先輩の言葉でわかる。先輩は、僕を見てくれる。信じてくれる。だから、僕は、戦える。先輩がいるからこれほど心強いことはない。
「うん…私は見てるよ…それに…ミライくんなら…大丈夫…何度でも言ってあげる」
「はい」
「それに…私をすぐに受け入れてくれたし…きっと…誰よりも強くなる」
「そりゃシェミン先輩だからですよ」
「え?」
「なんでもないです」
待て待て。落ち着こう。なんだかいい雰囲気…なわけあるか。僕がちょっと弱気になっていてそれを先輩に慰められているという状態だぞ。どこがいい雰囲気だよ。でもそれでなんで気が緩んで思わず隠しておきたい本音までもを語らなくちゃならないんだよ。ここは一旦落ち着こうか
『あー今回は見ていたけどすぐに立ち直ったわね』
「うわああああああああああ」
突然外から聞こえてきた声に僕は思わず悲鳴をあげてしまう。しまったとは思うけれども考える時間なんてまったくない。
「え?…ああ、イフリート」
『姫、久しぶり〜』
「見えているのか」
どうやらシェミン先輩は見えているらしい。見えている人と見えていない人の違いというのがよくわからない。サリア先輩のフェンリルとか最初は見えなかったけれども最近はよく見えるようになったしイフリートやウィンディーネなんてずっと見えているし
『ま、精霊に認められているか否かってところよ』
「それがわからないんだよ…」
「それで…どうしてここに?」
話題が逸れそうになったところをシェミン先輩がきちんと修正してくれる。いや本当にそういうところもありがたい
『ミライが試合に負けて落ち込んでいるんじゃないかと思っただけよ。まあ姫のおかげですぐに立ち直ったけど』
「そう…」
「いや本当にありがとうございます」
それに、こいつもなんだかんだで心配してくれていたのか。すぐにここに来たっていうことはそういうことなんだろう
『べ、別にね。ここであんたが心折れちゃうと色々とまずいから』
「心折れると思っていたのか」
『うん』
そんなに強くうなづかれてもなって思うが実際そうなりかけていたし何も言えない。今まで自分の実力のなさに悩むことはあったけれどもクラスメートが対象になることってあんまりなかったもんな。そして今回初めてクラスメートと比較してかなり落ち込んだ。異世界転移の小説とか読んでいたけれども主人公のチートに対して周りがどう思うかとかあんまり考えたことなかったけどこんなに悩むものなんだな。
「嫉妬は正直します。でも…」
「…」
『…』
「僕は僕のやり方で生き抜きます」
『そうよ。あんたはそれでいいの。次、勝てばいいの』
「そうだな…次があるから…次勝とう」
僕は負けた…でもきっとよかったのかもしれない。もう一度僕は自分のやりたいことを再認識できた。『意味のある敗戦』があるとすれば…きっと、今回のことを言うのだろうな
「う、ううん」
「あ…目が覚めた…」
「シェミン先輩?」
目を覚ましたら目の前にシェミン先輩が居た。僕の顔を覗き込むようにしているからなのかかなり顔が近い。ぼんやりした頭でシェミン先輩を眺めていると先輩は顔を上げてしまった。ちょっと残念だと思ってみたり
「先輩、今は?」
「まだ…日にちは経っていないよ…でも…もう夜」
「そうですか」
先輩の答えにひとまずほっとする。これでまた一週間ぐらい寝てしまっていたらそれはそれでなんか嫌だもんね
「それで…どうしたの?」
「…負けました」
よく覚えていないけれど僕がここにいるということそういうことなのだろう。あの時、楠の魔法によって僕は眠ってしまった。その後なにか悪夢を見たような気がする。そっかナイトメアって日本語に訳すと悪夢ってことになるな。なるほどね。あの魔法は通常時にはそこまで怖くないけれども眠っている時ならかなりキツイ魔法になるのかな
「…はぁ」
本音をいえばかなり悔しい。これが模擬戦だから僕はこうして今生きているけれどもこれがもし本当の戦いだったら…いやそんな生ぬるいものじゃない、生死を賭けた戦いだったら僕は死んでいた。眠ってしまった時点で僕はなすすべもなく殺されてしまうだろう。それが何よりも悔しい。
「大丈夫?」
「え?あ、はい」
考え込んでしまっていたのだろう。シェミン先輩が不安そうに僕に問いかけてくる。いや不安というよりもどちらかといえば心配、か。先輩に心配をさせてしまうのはとても心苦しいのですぐに返事をする…これで心配が取り除かれるのかといえばよくわからないけど。
「なんか…ミライくん…辛そう」
「あはは、わかりますか」
まさか僕の心を見透かされるとは思ってもみなかった。だから僕は苦笑するしかない。そして僕はポツリポツリと心情を吐露していく
「まあ…まさかここまでとは思ってもみませんでしたから」
「相手の…実力が?」
「そうですね」
かなり簡単に言えばそういうことになる。僕は自慢じゃないけれども誇張なしにこの世界に来てかなり強くなったと思う。シェミン先輩やクレア、サリア先輩を初めてとしてかなり恵まれた環境ではあったけれど、そこで僕はかなり貴重な経験をした。たくさん修行というか強くなるために考えて新しい魔法をどんどん習得して練習して命がけの戦いをくぐってそうして今の僕がある。それなのに…
「ほとんど何もできずに負けてしまいました」
「…」
楠との戦いで僕の魔法は全く効かなかった。正確には全ての魔法を無力化されてしまっていた。似たような事は何回か経験している。クレアの『領域』やあの吸血鬼の王の『世界』など使う魔法を打ち消されたこともある。でもそんな時でもなんとかして潜り抜けた。策を考えて打開してきた。でも
「今回は何をしたらいいのかわからない…」
どうしようもない実力の差がある。それが僕の心を暗くする。楠がクラスメートであるということも関係しているだろう。クレアは元々この世界の住民だ。それに対して楠はクラスメートでこの世界に来たタイミングも同じ…なんなら僕の方が一ヶ月ほど早い。10年、20年と過ぎているのならそこまで気にしなくてもいいのかもしれないけどまだ一年と経っていない。その時の一ヶ月はかなり大きいはずなのに、僕は負けてしまった。あんなに努力したのに…僕は楠に勝てることができなかった。かつて戦ったときはあいつはいくつもの制限をしていたのだろう。今回はその制限をなく戦った。そして僕は負けた。くそっなんなんだよあのスキル「夢」は。チートにもほどがある。あれには勝てねえよ。てかどうすれば僕のスキル「電気」で勝つことができるんだよ。まったくビジョンが浮かばないんだけど。結局…どんなに僕が頑張ったとしても主人公には勝つことができないっていうのかよ
「そう…」
そんな僕の心情を…半分くらいは妬みも入った僕の言葉をシェミン先輩は黙って聞いてくれていた。どうしてだか先輩になら全部話せる気がする。
「ミライくん…頑張ってた…もんね…でも」
「はい…」
「それは…本当に…努力なの…かな?」
「え?」
シェミン先輩の言葉が頭の中でぐるぐると廻っている。えっと…僕がいままでしてきたことは無駄だった?意味がなかった?そういうことなのか?
「違う…そういうことじゃない」
「?」
「…みんな…生きるために…頑張ってる…」
「…」
「誰もが…生きるために…いまを…必死に…生きてる」
「…」
「君だけが…頑張っている…わけじゃない」
「…」
ふと、僕の頭にクレアが浮かんだ。あいつも僕と同じか…いや、それ以上にあいつは努力している。あいつのことは一番僕が知っていると思う。少なくともここ2、3ヶ月はあいつと一緒にいたんだ。あいつが頑張ってイフリートの力を扱えるように、朱雀を殺すために頑張っていることを僕は知っている。それが、誰にも当てはまる
「じゃあ…どうすれば」
「だから、人間は努力をするんだよ…信じるものを…信じて」
「…」
「大丈夫…ミライくんなら…きっと…勝てるよ…だって…今…生きているんだから」
「…」
こんな風に言ってくれる人を初めて知った。僕は…無意識のうちに慰めを期待していたのかもしれない。でも、それじゃあダメだよね。楠の方が強かった。僕は負けた。でもそれは僕よりあいつの方が強かっただけ…もっと言えば相性の問題もあったかもしれない。多分だけどお互いに初見殺しタイプ。けどあっちの方が初見殺しの度合いが強い。でも、それでいいじゃないか
チートだのズルイだの、自分は弱いだの、言い訳をすることも逃げることも僕はもうしない。しなくてもいい。今のシェミン先輩の言葉でわかる。先輩は、僕を見てくれる。信じてくれる。だから、僕は、戦える。先輩がいるからこれほど心強いことはない。
「うん…私は見てるよ…それに…ミライくんなら…大丈夫…何度でも言ってあげる」
「はい」
「それに…私をすぐに受け入れてくれたし…きっと…誰よりも強くなる」
「そりゃシェミン先輩だからですよ」
「え?」
「なんでもないです」
待て待て。落ち着こう。なんだかいい雰囲気…なわけあるか。僕がちょっと弱気になっていてそれを先輩に慰められているという状態だぞ。どこがいい雰囲気だよ。でもそれでなんで気が緩んで思わず隠しておきたい本音までもを語らなくちゃならないんだよ。ここは一旦落ち着こうか
『あー今回は見ていたけどすぐに立ち直ったわね』
「うわああああああああああ」
突然外から聞こえてきた声に僕は思わず悲鳴をあげてしまう。しまったとは思うけれども考える時間なんてまったくない。
「え?…ああ、イフリート」
『姫、久しぶり〜』
「見えているのか」
どうやらシェミン先輩は見えているらしい。見えている人と見えていない人の違いというのがよくわからない。サリア先輩のフェンリルとか最初は見えなかったけれども最近はよく見えるようになったしイフリートやウィンディーネなんてずっと見えているし
『ま、精霊に認められているか否かってところよ』
「それがわからないんだよ…」
「それで…どうしてここに?」
話題が逸れそうになったところをシェミン先輩がきちんと修正してくれる。いや本当にそういうところもありがたい
『ミライが試合に負けて落ち込んでいるんじゃないかと思っただけよ。まあ姫のおかげですぐに立ち直ったけど』
「そう…」
「いや本当にありがとうございます」
それに、こいつもなんだかんだで心配してくれていたのか。すぐにここに来たっていうことはそういうことなんだろう
『べ、別にね。ここであんたが心折れちゃうと色々とまずいから』
「心折れると思っていたのか」
『うん』
そんなに強くうなづかれてもなって思うが実際そうなりかけていたし何も言えない。今まで自分の実力のなさに悩むことはあったけれどもクラスメートが対象になることってあんまりなかったもんな。そして今回初めてクラスメートと比較してかなり落ち込んだ。異世界転移の小説とか読んでいたけれども主人公のチートに対して周りがどう思うかとかあんまり考えたことなかったけどこんなに悩むものなんだな。
「嫉妬は正直します。でも…」
「…」
『…』
「僕は僕のやり方で生き抜きます」
『そうよ。あんたはそれでいいの。次、勝てばいいの』
「そうだな…次があるから…次勝とう」
僕は負けた…でもきっとよかったのかもしれない。もう一度僕は自分のやりたいことを再認識できた。『意味のある敗戦』があるとすれば…きっと、今回のことを言うのだろうな
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