電気使いは今日もノリで生きる

歩海

移動魔法を習得しよう!

葉月一週目日曜日


次の日、昨日しっかり休むことができたというか強制的に休まされたので元気いっぱい魔力も回復している…のはイフリートの言葉。僕はまだ魔力とかがいまいちピンときていない。クレアはなんとなくなら分かるみたいだけどこれはまあ慣れているかららしい。僕もこの世界にしばらくいたらわかるようになるだろうって


『二人ともおはよう。それじゃあ早速朝ご飯食べて移動しましょ?』
「ん、そうだね」


今日はクレアではなくて僕が準備をした…って言いたいけど森の中で手に入れられる材料だなんてそんなにたくさんあるわけじゃないし結局クレアが火魔法で焼いただけの食事で済ますことにした。まあ「電気」だなんてスキル、そんなに便利性がないからね


「さて、と移動するか」
「どうやって移動するんだ?」
「試したい魔法があるからそれを試しながら移動するよ」


「命」の国での戦いは厳しかったし失うものも多かった。でもそれと同じくらい手に入れたものも多かったようにも思える。それがメイさんを初めとする多彩な電気使いの人たちと出会うことができたことだ。彼女たちの戦いをみて僕は自分のスキルの可能性を見ることができたし僕はまだまだ強くなれることがわかったからだ。そして移動についても…まあもちろん戦闘でも使えるわけだけど…試してみたい魔法がある


『へえ、それはどんななの?』
「イヨさんが使っていた『設置』の魔法、それでインスピレーションを得たんだ」


インスピレーションとか一度は言ってみたかったんだよな。響きが格好いいし


『言葉だけ飾っても中身が伴っていなければ意味ないわよ』
「それを言わないでくれよ」


水を差して来ないでくれよ…せっかく決まったって思っていたのに『それ無駄よ』はい、すみませんでした


「それで?どんなことを思ったんだ?」
「要はあれは電気の反発を利用していた…だから自分の足と地面を反発させて加速させてみようかなって」
『それメイも似たような魔法使っていたわね』
「へえ、そうなんだ」


すでにメイさんが発明していた魔法な訳か。ならば僕も頑張れば使うことができる訳だよね。それを使えば加速して走ることが可能になるから多分間に合うはず。使いこなすことができれば、の話だけど


「僕は『加速ブースト』の練習かな。あれを足からでも放出できるようになったらかなり動けるようになるし」
『じゃあ二人とも練習というか修行を兼ねて移動しましょうか』
「おっけー」


移動するために意識を集中させる。地面と反発をさせるっていうことはとにかく地面にも電気を張り巡らせておく必要があるよな。…ん?それって一々『領域』を発動させているっていうことになるのか?それかなり燃費悪いんだけど


「まあまずは挑戦あるのみだな『電気の領域field』」


僕は自分の周りに『領域』を出現させる。そしてそのまま地面にも電気が伝わっているのを確認して…それから


「『電気鎧armor』」


電気を身にまとう。この時できれば地面にある電気と反発するようにする。具体的にはSとN?いやどちらかといえばプラスとマイナスか。まあ細かいことは気にしない方向で、そして地面を強く踏みしめる


「うわっ」


確かに反射はきた。でもそれがうまいように自分が進みたい方向にはならず上方向を向いてしまう。あー今は確かに地面に対して垂直に力を加えたからなぁ。ということは…


「これなら…!」


今度は走りながら進んでみる。そうすると確かに自分が進みたい方向に推進力が発生してそこそこ早い速度で進むことができた。でも…


『「領域」範囲外に出ちゃうとすぐにダメになっちゃうわね』
「だな…」


やっぱり考えた通りにならないというかこれはまあ予想できたことだよな。電気が張り巡らせていない場所に進むとなれば当然反発なんて起きるはずがないし…でも今の感じでいけば「反発」自体は成功していることはわかった。そういえばクレアは…


『もうかなり先に進んでいるわねー』
「てかなんでクレアにウィンディーネがついて僕にイフリートがついているんだ?普通逆じゃないの?」
『え?ああ私がクレアの近くにいると…っていうか精霊と契約した人間は契約した精霊が近くにいる時に自然と加護を得られるのよね。だから私が近くにいけばクレアの特訓にならないわけ』
「そんな仕組みがあるのか…」


それは初めて知ったんだけどそんなことがあるのかよ。ならクレアとの差がかなり開いたことにならないか?その分もちろん頑張るけどさ


『それもあるけどクレアよりもあんたの方が面白そうだったのよね。だって一から魔法を作り出しているわけだし』
「結局それが理由かよ!」
『いいじゃない。それに最悪あなたは「第三形態third」を使えば間に合うでしょ?不眠不休で走り続ければ追いつけるわよ』
「代替案が酷すぎるんだけど!」


そもそも使いすぎないようにって意味で昨日は一日中休んだんじゃなかったんだっけ?それなのにかなり酷使させようとしているんですけど『世界とあなたを天秤にかけたら世界の方に傾くに決まっているでしょ?』それもそうですね!まったくもって当然の話ですよ。もはややけくそになって叫ぶ。ああそうだよ。誰だって世界を前にしてしまえば霞んでしまうって


『ほらほら、頑張って』
「わかっているよ」


でもそれならば『領域』ではないところでも地面と反発できるようにする工夫をしないとな…あ!


「そういえばメイさんはどんな風に魔法を使っていたんだ?」


ヒントを貰えばいい。メイさんが使っていたというのならば、そしてそれをイフリートが近くで見ていたというのならどうやって魔法を使っていたのか知ることができる。それを僕は真似ればいいんだ


『え?知らないわよそんなの』
「えぇ…」


しかしながらイフリートはまったく意識していなかった。人間にたいしての意識なんてこんなものだろうか。でもヒントが与えられないとなると自分一人で頑張るしかないのだろうな


「じゃあイフリートはなにか思いつく?」
『なにも。こういうのはミライの得意分野でしょうが』
「簡単に言ってくれないでよね」


反発を作るにはどうすればいいだろうか。『領域』を展開したとしても一時的なものだし継続して使えるようにするにはどうすればいいのだろうか。いや、これがただの戦いならば別に問題はない。『領域』の範囲内で戦えば常に足に反発がかかった状態で戦うことができるわけだ。急激な速度変化になれるためにこれまた練習が必要ではあるけれど、それはなんとかなるだろう。要は、問題なのは僕自身が移動してしまうことなのだ


「あーいっそのこと『領域』でこの世界を覆うことができないのかな!そうすれば解決するのに」
『多分だけどあなたの魔力でも不可能ね…そうね、私たち精霊の全魔力を注げば国一つぐらいは覆えるんじゃないかしら』
「精霊の全魔力って言ったって要は自然に存在する対象の属性の魔力すべてってことだろ?」
『ええ、よくわかったわね』


そうだと思ったよ!よくある展開だもんな。精霊は自然を司る存在であるからして自然界にある例えばイフリートならば「火」からいくらでも魔力を受け取ることができるってやつ。だから世界中の火が消えれば一つの国をすべて覆うことができるわけか。これは燃費がいいのか悪いのかまったくわからないんだけど


『そこをクリアすればいいのね』
「どうすればいいんだよ、これ」


悩んでいても仕方がないししばらく歩きながら考えるとするか、タイムリミットになったとき、できる限り近くにいた方がいいもんな

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