電気使いは今日もノリで生きる

歩海

遠距離戦の限界

葉月一週目火曜日


さてと、まずは相手の能力を把握したいな。さっきから僕の電撃をずっと防いでいることから見るにおそらく防御系の能力なんだろうけどまだ決めつけるのはさすがに早計だな。もしかしたら僕の『領域』みたいな感じで全部防いでいるのかもしれないし


「イヨさん少し離れていることは・・・いや僕から離れないで」
「う、うん」


こうもしがみつかれていれば動きずらいなって思ったけどでも下手に離れてしまうとまた連れ去られてしまうからなぁ・・・いや今度は逆に僕が狙われるとかそういう展開もあるかもしれない・・・いやねえよ。さすがに男捕まえるやつどこにいるんだよ。こいつらってそんな特殊性癖の持ち主か・・・あ、持ち主だった


「なんかごめんな」
「それは小生への当てつけか!やはりゆるせん」
「あー」


間違えた。タイミングを完全に間違えてしまった。これ僕が頭の中で考えていることをなにも話していなかったらまるでイヨさんとの関係を見せつけているみたいじゃないか・・・・いやこれできることなら訂正したいところだけど言葉ミスったら最低な人間になってしまうので注意が必要だな。てかそもそもあいつこっちの言葉届くのかな


「死ね!『鎌鼬』」
「『放電thunder』」


あーこれこっちの言葉にまったく耳を貸さない感じだ。それはそうとこいつのスキルがわかったな。こいつは天衣と同じく『風』スキルの持ち主だな。相性的には・・・どうなんだ?普通なのかな?天衣とはあんまり戦ったりしたことないからどんな魔法を使うのかわからないけどとにかくやるしかないな


「『放電thunder』」
「イヨたんから・・・離れろぉ」
「くっ」


両手を使って反撃をしてみるもののあいつの発生させる風にほとんどが打ち消されてしまう。あーこれで僕の攻撃を全て打ち消していたのか。だからなんど攻撃してもまったくダメージを与えることができていなかったんだな


となると遠距離をメインに戦うことになるんだけど風属性って遠距離がかなり得意なイメージがあるし。ここはえっと・・・通路だからいささかまずいな。あれ?こういう時って開けた場所の方がまずいんだっけ?隠れる場所がある方がいいから通路の方が隠れやすい?でも今はお互いに視認しているしここにとどまることだけは避けた方がいいな


「イヨさん、ごめん」
「きゃっ」
「きさまぁあ」


またしてもイヨさんをお姫様だっこしてここから脱出を図る。後ろからどんどん風の刃が飛んできている。イヨさんに当てないようにと配慮されているのか牽制が多いな。


「『放電』」
「ありがとう」


イヨさんが当たりそうになってる攻撃を電撃で弾いてくれる。これは本当に助かるな。でも。


「どこに逃げ込めばいいんだ!?」
「そこを右に曲がってください」
「ここか!了解」
「待て。うらやま・・・けしからん」


目の前に一つの扉がある。そこか。さて、蹴破ることはできるのかな。いや普通に頑丈な扉で開かなかった時のことを考えるとイヨさんに開けてもらうことが一番だな


「イヨさん、扉を」
「わかってます『放電』」
「ナイス!」


イヨさんの電撃によって扉が壊される。そして中に入る。ここは・・・どうやら事務室的なところみたいだ。広さは学校の教室二つ分くらいで真ん中に机が置いてある感じだ。


「他に人は・・・いない!」


すばやく付近を索敵する。でも特に誰かが近くに接近しているとかそういうことはないみたいだ。さっきの騒ぎで誰かに気付かれるかと思っていたけどそこまでじゃあなかったみたいだ。


「やっと追い付いたぞっ・・!」
「おらぁ」


不意打ちまがいの攻撃だけど相手が部屋に顔を出した瞬間になぐりかかる。「貴様!不意打ちとは卑怯な」黙れよ。戦いには不意打ちもクソもないって有名な言葉があるんだよ。


「イヨさんは少し離れてて」
「イヨたんを巻き込まないのは小生も賛成だ『暴風』」
「『電気の領域field』」


『領域』を使って相手の攻撃を弾くとそのまま接近する。こういうタイプの研究者は体力がないと相場が決まっているというど偏見を思いながら近づく


「近づかせませんぞ『竜巻』」
「!」


あいつ・・・そろそろ名前を呼んであげるかケンゴを中心にして風の渦が巻きおこる。足を踏ん張っていてもすぐに風で吹き飛ばされてしまう。まるで『領域』みたいな感じだ。


「『放電thunder』」
「ぐはぁ」


でも電撃といった魔法攻撃は貫通して貫くことができるみたいだ。術者にダメージを与えたことで魔法が消えた。ケンゴの姿が見えるようになった


「なんだ。この程度か」
「お前も電撃吸収服を持っているのか」
「いや、風の壁で威力が落ちただけだ」


なるほどね。『領域』と違ってある程度永続効果が見込める代わりに魔法攻撃は防げない。そして飛んでくる魔法の威力をある程度減少させることができるわけか。なかなか便利な魔法だな


「貴様は小生にダメージを与えることができないいいい『竜巻』」
「ちっ」
「貴様は遠距離戦が苦手だと知っているのだ」


そうだよ。近距離戦闘に特化した魔法しか使えないんだよ。ただ遠距離から魔法を打ってくるだけのやつだと一気に近づいたり粉塵爆発をすることでなんとかしてきたけど・・・ここまで風が強いと巻き起こすための砂鉄が思うように広がらずに不発に終わってしまう。粉塵爆発っていうのは適度な風が吹いていることが条件の一つだからな。・・・あれ?これ詰んでない?


「大丈夫ですか?」
「わりとピンチ」


風の壁の向こうからどんどん風の刃が飛んでくる。これを一応電撃で応戦しているけどこちらがかなり不利だ。向こうからしたら待っているだけで仲間が来てくれるもんな。こちらとしては短期決戦をしなければならないっていうのに


せめて一瞬だけ相手の意識を奪うことができたらいいのに・・・


「イヨさん!」
「はい」
「・・・ごめんなんでもない」


さすがにやめておこう。うん。今イヨさんにケンゴの意識を向かせるようにしてって頼もうとしたんだけどなんとなくセクシャルハラスメントになりそうな気がしたからやめておこう


「私、どうすればいいですか?」
「あいつの意識を一瞬だけそらす方法ない?」
「・・・すみません知らないです」
「イチャイチャしない!『嵐の繭』」
「きゃああああああ」


イヨさんを中心に風が巻き起こる。イヨさんを囲うようにして風が吹いていて近づくことも・・・それに言葉すらかき消されているみたいで何も聞こえない。音って結局空気の振動だから風などが吹いているとまともに届かせることすらも困難なんだよな


「てかイチャイチャしてねぇよ」
「小生の目にはそう見えるんだよ!」


まじかよーあーこれがあれか持てない非リアの妄想ってやつか。まあよくわかる。その気持ちはよくわかるけれどもまさか自分が言われる側になるとは思わなかったなぁ。教室にいた時に女子と気軽に話している男子を見るたんびになに見せつけてるんだよって思っていたもんな


「お前の気持ちはわかるけど・・でももう少し目を凝らせよ・・・ん?」


別に意識をそらすことだけが全てではないな?目を潰せればそれでいいのか。それならば・・・一つ賭けになるけれど方法がある。一度しか使えないからつかいどきを慎重に吟味する必要があるけど。一つ閃いたからそれで挑戦してみるか!

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