電気使いは今日もノリで生きる

歩海

唐突な参戦と退場

葉月一週目月曜日


「これは・・・」
「逃げるぞ」


騙し討ちもいいところの方法で相手の視界及び体の自由を奪う。ヒーローあるまじき行動だけれども今僕実は大分きついからね。てか『電気鎧armor第三形態third』使用からどれだけ時間が経ってる?そろそろ体が限界を迎えてもおかしくない。おまけにさっきは『領域』を含む三つの魔法の同時展開を続けていたし魔力が切れるかもしれない。


「甘いね」
「!」


見えない何かがこちらに飛んできた。感知魔法を解除しているから何が飛んできたのか全くわからなかった。ただし空気の乱れというかなんとなく何かが飛んできたのだけはわかった。


62ムツキ邪魔しないでもらえるかな?」
「・・・先ほども言ったけど私たちはこの人を信じることにしたのよ」
「イヨもそうなのかい?」
「この人なら・・・マスターを自由にできる」
「なるほどねぇ。君らが従順なわけだ。メイが自由になれると言われたらそりゃついていくわけだ・・・はぁつらいなぁ」


さっきの攻撃ムツキさんが攻撃をそらせてくれたのか。ということはあの人の魔法も電気系統なのか?いやそれだとおかしい。ルドーさんの魔法って確か催眠とかそういう系統じゃなかったっけ?


『ムツキの魔法には何かしらのトリックというかまだ他にも用途があるのかもね。でも注意しなさい。「領域」を発動させたほうがいいかも』


それもそうか


「『電気の領域field』」
「なるほど、君『領域』使いだったのか。それが私の魔法を防いだ理由というわけか。はぁ。ますます残念だよ。この研究を潰すって?君まで・・・殺すことになるなんてな」
「僕・・・まで・・?」
「きゃあああああああ」
「イヨさん!?」


肉が貫かれる音がしたと思ったあと、イヨさんの悲鳴が聞こえたので振り向いたら・・・僕の先を進んでいたムツキさんが倒れていた。


「・・・え?」


なんで?どうして・・・というかいつ?いつ、彼女は襲われたんだ?


『さっきの攻撃・・・どうやらあなたの代わりに受けたみたいね』


嘘だろ?そんな。だって。僕はたまたまここにきただけで今日初めて会ったばっかりだっていうのに・・・どうして僕を助けてくれたっていうんだ?


「ムツキ!しっかりして」
「死んではダメですよムツキ」


フタバさんとイヨさんが語りかける。でもどうなんだろう。胸に穴が空いているし。そこから血があふれんばかりに流れ出ている。・・・!


「『電気の領域field』」
「へえ、こんどは防ぐか」
「休む暇無しか」
「そりゃ君だって早々に殴ってきたじゃないか」


『領域』を展開していなかったらおそらくまたして放たれた魔法に気がつくことなくやられてしまっていただろう。イフリート、もしかしてこの流れに気がついていた?


『いいえ、でも視認できなかったていうことは当然感知魔法が必要になるだろうなって思っただけ・・でもまずいわね』


ああ、まさかこんなに早く死者が出るなんて・・・『まだ死んでいないけど・・・もう虫の息ね』。僕は全員を助けたかったんじゃなかったのか。それがこのざまかよ。・・・奥歯を噛みしめる


「『放電thunder』」
「へえ、まだやる気なんだ・・・でもね。私たちはいつも誰がクーデターを起こすことを想定しているんだと思う?」
「・・・」


僕の魔法はまたしても完全に防がれる。てかルドーさんの服には命中したんだけど特に何もダメージを与えていないようだ。メイさんが反乱を起こした時に沈められるように電気を通さない特別製なんだろう・・・ここが屋外だったら粉塵爆発をしてなんとか戦えると思ったのに。


「・・・やべぇな。早くミイさんを救わないといけないのに」
「ほお?・・・ああ、精霊か。気付かれていたとは」
『まあちょっと偶然ってのもあるけどね』


あの、その声僕以外には聞こえていないんですけど『クレアー追加の魔力ちょうだい?』いやそんな追加注文みたいなノリで言われても困るだけでしょうに


『普通に断られた・・・』
「クレアもかわいそうに」
「ん?クレア君が契約者なのか」
「なぜばれた・・・」
「いや君普通につぶやいていたよ」


あれ?まさかの敵側の人からも僕呆れられていない?なんかかなりショックなんだけど。てか思っていたことを気がつかずに呟いていたのか・・・てかそれはやばい。痴呆症の老人みたくなっていないか


「イヨさん、ムツキさんの容体は?」
「・・・ギリギリ息がある、でも早く手当てしないと」
「残念ながら回復魔法を扱えるのは77ナナだけだからね。まあもう正直用済みだし処分しようと思っていたところだ。むしろ消す大義名分ができてありがたいよ」
「てめぇ・・・」


いや、普通ここまで言うか?なんか急にこいつがクズになったんだけど。せめてもう少し隠せよなぁ。なんとなくだけど気配でわかる。後ろで彼女たちが傷ついているのが。こんなやつだけど一応恩義は感じて尽くしていたっていうのにな。


『それでもあなたの言葉に騙されるぐらいの信頼だったみたいだけどね』


あ、ということはお互い様か。まあ・・・僕がこなくてもそのうちいつか瓦解していただろうね。そもそも悲しみしか発生しない研究だし。


「『放電thunder』」
「?、君がどうして怒るんだい?君正直無関係だろ?」
「無関係だけどさ・・・僕の国では人が粗末に扱われていたら怒るっていう風に教育されてんの」
「へえ、そんな平和ボケした国があるなんてな」
『一応言えばこの世界には奴隷もいるからね』


あーそういえばそうだっけな。僕まだそういうのと出会っていないからいまいち実感わいていないけれど『それクローンも同じじゃない?』いやクローンはほら、今彼女たちという生きた証がいるじゃん。実際に会っているのと会っていないのとでは天と地ほどの差があるんだよ。


なんか考えをまとめようと落ち着こうとしてみたはいいものの、なかなか治らないな。どうやってあいつに一泡吹かすことができるだろうか


『それもいいけど・・目的を見失ってはだめよ』


あ、そっか。今僕がしなければいけないことはクレアとの合流か。今の状況から見るに明らかにルドーさんと僕とでは相性が悪すぎる。まあ正確には僕とメイさんの技量を比べた際に僕の方が圧倒的に劣っているのが原因なんだろうけど。


『こればっかりは仕方ないわよ。なんせ歴が違うもの向こうはおそらく幼い頃からずっと鍛錬していたはず』


才能はあるけれど努力もものをいう感じなのかな。・・・あ、そっか。そういえばここには僕だけじゃなくてイヨさんとかいるじゃないか。イフリート、ルドーさんの服って電気を吸収するだけ?あれって体の内部まで影響あるのかな?


『うーん、どうかしら。多少はあるだろうけど効率は悪いと思うわ・・・あなたの「電気鎧armor第三形態third」なら少しだけ持つはず』


それに体の外側に残っている電気が先に吸収されるし殴る勢いぐらいはきちんと保証されるだろうな。


「イヨさん」
「はい?」
「僕を飛ばしてくれ・・・それからミナさん隠密魔法って他の人にかけることできる?」
「・・・できないことはないけど、多分すぐに見抜かれる」


まあそりゃあそうか、僕の勝手なイメージだけどおそらくメイさんはこの人たちの魔法を全て使えるんだろうしな。ま、でもいいや。遠距離戦闘がダメなれば近距離戦闘で戦うのみそれから・・・コソッとイヨさんに指示を出す。イフリート、クレアはこっちきてる?


『さすがに救援は送ったわ。ここの位置も特定してるしもうすぐ来るわ』


おけ、なら後処理はあいつに全部任せよう。僕はここで暴れるだけ暴れればいいし・・・一応感知魔法で見る限り相手はルドーさんただ一人。あんまり時間をかけすぎてしまえばきっと他にも増援が来るだろうから早めに終わらせなきゃな

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