電気使いは今日もノリで生きる

歩海

同系統の魔法使い

葉月一週目月曜日


「早く帰りたい。だからはやく私に倒されて」
「嫌だよ!」


威勢良く返事したのはいいものの、かなり厳しいんだよな。ガスのせいで思うように体が動かないし・・・。まあうまいこと『電気鎧armor第三形態third』を使えばなんとかなるかな。


「『放電thunder』」
「その速度では私を捉えられない」


苦し紛れに電撃を放ってみても避けられてしまう。かなり動きが早いな。それなりに距離があったとはいえ普通に避けられてしまったんだけど。いやでも・・・この動きは?


『なんかあんたみたいね』


そうだよね。動いた瞬間彼女の体の周りに電気が集まったように見えたけれども気のせいじゃなかったよな。てことはあれか。同じような魔法を使う相手と戦うことになるのか。


「にゃろう・・・」


さっきからずっと体に電気を回そうとしているんだけどなかなか上手くいかない。正確には電気を写すことは可能なんだけどそれをしてしまうとすぐに眠ってしまうのが目に見えている。だから動くことができない。


『リソースが足りていないわね』


えっと、要は魔力不足ってこと?


『うーん、まあ魔力は特に問題ないのだけどどちらかっていえば熟練度が足りていないってことかしらね。あなたのその魔法は極めればもっと自由に動くことができるようになるわ。ただ、今はそれが足りていないから一つで精一杯なだけ」


なるほどね。僕はまだまだ未熟だと。確かに『電気鎧armor第三形態third』を使っている時にふと思うのがどうして僕は手とか足とかに集中するのはいいけどその他が弱すぎるのかってね。次の目標が決まったな。もっと使いこなせるようにならなきゃ


「何をのんびりしてるの?」
「ぐう」


思考にふけり過ぎてしまったのか接近していたミヨ『ミイよ』ミイさんでしたか。ミイさんの接近にまったく気がつかなかった。そのまま脇腹に一発食らってしまう。吹き飛ばされて近くの壁に激突してしまう。ここから体制を立て直さないと


「そんな時間は与えない」
「ぐふえ」


腹を蹴られる。ああ、倒れた敵を前にして一旦立ち上がるまで待とう的な精神を持っていないわけですか。こんの悪魔め


『ねえ、ブーメランって言葉を知っているかしら?』


そういえば僕も倒れた敵に電撃をぶちかましていましたねー。なんとか距離を取らないと厳しいな


「『電気の領域field』」
「っ!何をする」
「まじか・・・」


思ったよりも吹き飛んでないんだけど。これ踏ん張られたってことでいいのか?結局は風で吹き飛ばしている感じだから踏ん張られると意味ないのかな。いや誰かが言っていたけど心の壁なんだっけ?


『うーん、厳密には精神世界の具現化なんだけど要は吹き飛ばしているのは魔力なのよね。今のあなたは魔力の大部分を「電気鎧armor第三形態third」の制御に当てているわ。だから単純にリソース不足。それに尽きるわ』


脳を操作しているからいつも以上に辛いんだよな。いや体を動かしている原因である脳を操作するってどういうことなんだよってことなんだけどそれはともかく、僕がここまで神経質になっている理由は単純。楠と戦った時のことが忘れられていないから。あの時僕は『電気鎧armor第三形態third』の制御に失敗してしまって楠をほとんど殺しかけてしまっていた。あの時みたいにまたしても暴走指定しまったらどうするんだろうっていう恐怖からーおまけに今はサリア先輩もセリア先輩もいないしー神経質にならざるを得ない。


『もしもの時は私が燃やすから安心してね。まあ私に頼るのもよくはないけれど』


ありがとう。僕の心を落ち着けようとしてくれて。でも大丈夫。もう迷うようなことはないから。確かに色々とリソースが足りていなくて距離を稼ぐことができなかったけれどもそれでも僕が立ち上がる時間ぐらいは確保することができた。


「肉弾戦で戦えばなんとかなるはず」
「そんなに私は甘くない」
「そうですか!」


またしても直線的な動きで向かってくる。大分接近戦に自信があるのかそれとも僕が鈍っているから大丈夫だと高をくくっているのかわからないけれど直線的ならばこの状態でも戦える


「!」
「甘いよ」


見え見えの拳を受ける。右手で殴ったからなのか重心がかなり右方向によっている。だから左からの攻撃には対応できないはずだ。左足で踏ん張って右足で蹴る。受けた拳のエネルギーを受け流すように体を動かしているしミイさんも殴っている最中なので避けられないだろう


「その手は私には効かない」
「な・・・!」


明らかに避けることができないタイミングだったはずなのに左手が前に動いてきて防いだ。いや、これは慣れている人ならば普通に対応することができるか。


「ふっ」


左足に力を込めて蹴り上げ受け止められている右足を起点にして左足で回し蹴りをお見舞いする。


「それも無駄」


今度は自由になった右手で防がれる。まあそれはそうだよね。だからこれくらいは読むことができるので腹筋に電気を集めて体を起こし両手でミイさんの頭に拳をぶつけるようにする。


「・・・まあそうするよね」


僕の動きに気がついたのか僕の足を持っていることをいいことにそのまま放り投げる。空中にいながら体勢を立て直してミイさんの方を見据える。


「ほお。31ミイの攻撃をここまで耐えるとはね。ますます興味深い」
「そう・・・かよ・・・」


どこに興味を持たれているのか知らないけれど今は自信満々なところを見せないとな。今そうとうきついのは変わらないんだけどね。


「私の方が強い」
「そうか?・・・催眠ガスに頼らなければ・・・まともに戦えないのに?」
「たとえなくても私が勝つ」


挑発をしたところで結局僕が不利なのは変わりない。ここでもしかしたらじゃあ催眠ガスを解除してやろう的な展開になるのかと思いきやまったくそんなことないじゃないか


31ミイ、そろそろそいつをとらえてくれないかい?解放・・を許可するよ」
「了解した」
「・・・解放?」


どういう意味だ?もしかして第二形態とかそういう感じなのかな。電気を体にまとっているみたいだけど制限解除ってどんな感じなのかな


「はあぁ・・・」
「!」


なんだかものすごい威圧を感じるんだけど。さっきまでの感じとまったく違う


『確かにそうなんだけど・・・どこが違うのかよくわからないわね』


なんだかさっきと比べて電気が体の内側にある気がするんだよな。体の外に漏れでている電気の量が減ったというか・・・でも放っている量は変わりないけど


『それって・・・』
「!」
「遅い」


さっきよりもはるかに速いスピードで向かってきた。慌てて防御姿勢を取ろうとしたけれど間に合わない。後ろに吹き飛ばされる。ああ、もう『感知feel』をもっと使うことができたら楽になると思うんだけどな。あんなに電気をバチバチで使ってるし


「どこ見てるの?」
「え?」


後ろから声が聞こえたと思ったら頭に衝撃が走り・・・そして僕は意識を失ってしまった。いつのまにか後ろに回られていて蹴られたのだと気がついた時には僕の意識は闇に沈んでしまっていた。


「よくやったよ。にしてもやばいな。解放状態のお前の動きに対応するなんてな。・・・催眠ガスにゴロツキや14イヨとの戦闘を経てなおね。いい研究材料になりそうだ」

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