電気使いは今日もノリで生きる

歩海

コミュニケーション能力って大事だよね

???


「あの、大丈夫ですか?」


さてと、呼吸を整えて少女に改めて会話を試みる。「ミライどもりすぎ」うるさいな。僕的にはちゃんと言えているから問題ないんだよ。


「は、はい」
「あー僕らは別に・・・」


うわー警戒心MAXでこちらを見つめているんだけど、どうしよう。こういう時は怪しいものじゃあないんですよっていうのが定番なんだろうけどそれ言ったところで怪しいものになるのは間違いないんだよな。


改めてこの少女を観察してみる。え?いや別に変質的な意味じゃないですよ。自分が助けた少女がどんな女の子なのか普通気になるじゃないですか。やっぱり一番印象的なのはぱっちりとしてる目かな。澄んだ青色をしていてとてもきれいだ。容姿も整っているし改めて見ても将来が楽しみな女の子だなぁ。


『変態・・・いや紳士?』
「この子そこまでロリっ子じゃないでしょうに!」


見たところ僕より少しだけ年下っぽい感じだけどな年齢でいうところの15ぐらい。


「ひっ」
「あ、え、その・・・ごめんなさい。君を怖がらすきはありませんでした。これは本当です」


イフリートが口出ししてこなければ僕は突っ込みがてら大声を発することがなかったっていうのに。この子怯えちゃってるでしょ『え〜心当たりがあるから反応したんじゃないの〜?』あなたはもう黙っていてください。いやてかなんで僕ら以外には聞こえないようにしているんだよ。都合よすぎるだろ。でも今はそれよりもこの子の警戒心をどうやってなくさせよう。話を聞きたいけどこのままじゃまともな会話にならない


「ミライ、怯えさせすぎ」
「だから・・・いやそうだな。本当ごめん。ああ、僕はミライ、こっちはクレア」
「・・・」


自己紹介したはいいけど返事はなしと。困ったな。僕に対女性との会話スキルなんて言われてもどうしようもないっていうのに。ちょっと不自然だけど今からクレアに変わるか?僕よりかは多少でもマシな対応をしてくれるでしょ。


「そんなこと言ってもねぇ。あー名前は教えてくれなくてもいいからさ、ここがどこだか教えてくれないかな?僕たち旅人でさ」
「・・・」
「せめてあそこに見える都市が『命』の国においてどれくらいの大きさなのかとかさ、そういうのだけでも教えて欲しいんだ」
「あそこは・・・普通の都市よ」
「そっかありがとう」


さすがクレア!僕よりも情報を引き出すことに成功している!あ、そういえばイフリート、ここと学校ってどれくらい離れているのかわかる?


『さあ?私地理とか詳しくないし〜基本的に転移魔法でちょちょいって感じで移動するからね〜』
「そうですか」


だめだこれは。精霊に聞いたのが間違いだったと言わざるを得ない。これはあれだな。お嬢様にファストフード店に入った時に注文は自分でするんだよ?って言ったらいつもシェフが運んでくれるからわからないわと返されるような感じだろうか。微妙に違うな、うん


「そっか。えっと、君はあの都市に向かおうとしていたのかな?」
「あ・・・うん」


え、それまで聞いちゃう?この流れって正直もうでは一緒に行きましょうルートに入ってしまっているじゃないか。やっぱりイケメンは敵だな


「そっか、じゃあ僕らと一緒に行動しない?少し距離があるから僕らがボディーガードになるよ?いいよね?ミライ?」
「まあ、僕も構わないよ。土地勘のある人が一人いるだけで全然違うし」
「また打算的にいうごめんな、こいつこんなやつだから」
「誰がこんなやつ・・・いやその通りだわ。すまん。君も気を悪くしたのなら申し訳ない」
「・・・別に」


初めて僕に反応してくれた。うんうん、最初の一歩はこんな感じかな。でもすぐに別れてしまいそうだけどさ。


「というわけで君の名前を教えてくれないか?その方が効率的だろ?」
「えっと・・・」
「やめとけよクレア。誰にだって言いたくないことあるだろうし」
「それもそうか。さっきから君の気分を悪くさせてばっかりだね。面目無い」
「いいよ・・・それに名前は、あるけどないの」
「「あるけどない?」」


別名があるっていうことだろうか。いやそれなら普通に別名を名乗るだけで問題ないはずだ。通り名として世間に通じるからそれをここでも話せばいいはずだし。でも言えないっていうことは何か理由があるとしか考えられない。ならばその理由を考えようか。やめておこう。今はすこしゆっくりしたいんだ。ダンジョンでの戦いがかなりハードだったからゆっくりしたいんだよ


「別にいいでしょ?」
「ああ、ならなんて呼べばいいかな?さすがに名無しは嫌だし」
「そうね・・・ナナとでも呼んで」
「りょうかい、ナナ」


ナナさんね・・・ん?ナナ?どこかひっかかる名前だけど、どこかで聞いたことある名前なのかな。まあそんなことを言えばミラさんとかシオン先輩とかも聞いたことある名前になっちゃうしさ。だからそこまで深刻に悩む必要もないのかな。


「ナナさん、よろしく」
「呼び捨てでかまわないわ・・・えっとミライくんね」
「君も呼び捨てで構わないよ。お互い様だろ?」
「いい、この呼び方がしっくりくるから」


ああ、「いい」ってのは遠慮しとく的な意味合いね。日本語って難しいよな。この人たちが話しているのが日本語なのかはわからないし突っ込んではいけないことなのだろうけどそれでも僕にはそう聞こえるんだしな


『あーそのうち教えるわ』


なるほど、時期がくればイフリートが教えてくれるのか。それならその時を待つとしますか。で、話を戻すけど断られた。まあ呼び方なんて人それぞれだし僕がとやかくいう筋合いなんて全くないんだけどさ。僕は僕のやり方をすれば全く問題ないわけだしね。


「それじゃあ、ナナさっそくだけど向かおうか」
「その前に索敵、他に敵がいるかもしれないだろ?」
「そうか?ミライは心配性だな。ゴブリンなんて基本的に逸れることなんてなかなかないから問題ないと思うけど」
「そういうものなの?」
「だいたいね。必ずしも言えるわけではないけどだいたいこんな感じ」


群れからはぐれたら死んでしまうとかあるのかな。ゴブリンって言っても個体差はあるにしても比較的弱い魔物だしありえそうだな。


「決まった?じゃあ向かおう」
「あー」
「どうしたミライ?」
「いや、なんでもない」


まさかとは思うけどあのゴブリンってナナさんを追ってきた魔術師が召喚したものじゃないだろうなって予想したんだけどさすがに考えすぎか。僕だけなら考えすぎってことで落ち着けるんだけど今はイフリートがいるからな。これくらいのベタといえばベタだけど展開ぐらい普通に仕込んでそう


『出来る限り楽しみたいけど私そこまで干渉しないわよ』
「本当ですか?」
『まあ私がしなくても』
「え?」
『なんでもないわ』


ごにょごにょって言っていたけどこの精霊なんて言ったのだろうか。小さすぎて聞き取れなかった。間違いなく僕らにとって悪いことだ。推測しよう。どうせイフリートよりも大きなものの存在がなにか干渉しているのかな?あ、僕転移者だしそれくらいありそうだな


「なにしてんのミライ?さっさといくよ」
「あ、ああ。待てって」


ちょっと考え事をしていたらすぐにおいて行こうとしてたよ。まあ声をかけてくれただけマシか。僕、ナナさん、クレアの三人は周囲に気をつけながら近くに見えた都市に向かって歩いて行った。

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