電気使いは今日もノリで生きる

歩海

自分が異常だと自覚しようにね

???


「なんとか倒せたか?」
「みたいだね・・・」


スケルトンの時と比べたら被害は軽い。でも疲労が蓄積しているせいで同じように動けなくなっている。てかユンさんたちいつまで探索しているんだろうか。


「まあここ広いから探索に時間がかかるんだろうけどね『炎の陣』」
「?何をしたんだ?」


急に違和感を感じるんだけど、クレアが何かしたのか?いやしたに違いないんだけど何をしたんだろう。


「ああ、『領域』をちょっといじって結界みたいにしたんだ。ゾンビたちって炎が苦手っぽいしこうして囲っておけば接近してこないかなって」


なるほどね。そんな使い方あるのか。僕も今度試してみよう。っと忘れるところだった


「『自己活性heel』」
「ああ、しっかり回復させないとね」


魔力の回復は早いのかそんなになくなるっていう感覚はない。でも体の方はやばい。クレアのおかげで血は止まっているとはいえ肉が抉れているし痛みもひどい。さらに『電気鎧armor第三形態third』の副作用まで出てきたからもう限界。気をしっかり保たないと普通に意識を持っていかれそう。


「クレア、寝ていいか?」
「それ下手したら死ぬよ?」
「だよな」


雪山で遭難した時と同じような感じなのかな。あれは体温が低下しすぎてしまうからって聞いたことあるけど。今回に関していえばクレアのおかげで暖かいし大丈夫じゃないのかな


「ユリさんがくるまで待とう?」
「それしかないか・・・」


幸いというかそれからユンさんたちが戻ってくるまでにゾンビはおろかこの階層にいるであろうボスも出くわすことがなかった。ついでに言えばきてるはずの他の冒険者たちもね。










「お前らいつも重傷じゃないか?ユリ、頼む」
「わかりました・・・とはいえ、さすがに肉体修復は魔力の消費が激しいです。少し休んでからでもいいですか?」
「そうだな、この階層のボスも倒したし、休憩するか」
「え?」


今ユンさんなんて言った?この階層のボスを倒した?え、この四人で?


「まあ機動力のない敵なら俺の魔法で簡単に処理できるからな」


確かにあの空間をえぐる魔法は凄かったからな。あれやっぱり弱点は起動するまでの時間が少しかかるってところなのか。ということはですよ、もう2階層をクリアしたってところなのか。


「にしても妙だよな」
「ああ、他の人間が誰もいない」


あーやっぱりユンさんもそこは気になっていたのか。確かに誰にも出くわさないってのは少し妙だよな


「倒されたとか?」
「あり得るが・・・でもボスクラスは最悪誰かを犠牲にしたらいいし普通の敵はクレアたちでも倒せているんだ。そうそう死ぬことはないと思うが」


まあ覚悟していたけれど、やっぱり僕らはまだまだ弱いんだな。てかこの人たちの実力がわからないな。うーん、相性が極端に悪くない限り・・・つまり機動力が凄まじい敵ではない限りかなり簡単に勝てるぐらいか。それやばいな。でもユンさんってセリア先輩のお兄さんだしな。兄の方が強いのがいつも正しいとは限らないけど見る限りかなりやばい兄弟であることは明らかだよな。


「『修復』はい、これで大丈夫だと思います」
「ありがとうございます」


そうこうしているうちにユリさんの治療が終わったようだ。お、すげえ、攻撃を喰らう前の状態に戻ってる。自分の周りにいないから知らなかったけどやっぱり回復魔法ってすごいんだな。お礼を言って立ち上がろうとすると、またしてもふらついた。


「え?」
「回復するのはあくまで傷のみです。さすがに失った血液などを回復させることは不可能です」
「まあ、なくはないけど、今はもう無理だ」
「へえ、そういうのもあったんですね」
「ま、失われたスキルというか、種族だからねぇ」
「ああ、『吸血鬼』の」
「そ、『吸血鬼』の固有スキル『血』。それは『聖』スキルでも不可能とされる血液の補充を唯一行うことのできるスキルだ・・・まあ『聖』スキルでも失われた腕ぐらいなら再生するしどっちもどっちなんだけどね」
「腕ぐらいって・・・」


なんかやっぱりとんでも魔法だったか。えっと、『聖』スキルを持っていたのって確か・・・四万十さんだっけ。彼女も極めればそれくらいのことできるようになるのかな。さすがは転移者。


「それで?ユリ。ミライの状態は?」
「不思議な感じですね。肉体にダメージはかなり負っているみたいなのですが自己修復がかなり進んでいます。あの、ミライさんって『電気』スキルなんですよね?」
「はい」
「ならどうして・・・『電気』スキルは回復魔法を覚えないはずなのに」


あ、そうなの?てか普通に考えれば神経を活性化させて修復を促すとか思いつきそうなのに。これ黙っておいた方がいいのかな?でも僕らに回復魔法があることはもうばれたっぽいし下手に隠すよりもきちんと話して信頼を得た方が得策、か。


「あ、実はですね。僕電気を身体中に張り巡らせて細胞を活性化させてるんです。それが僕の回復魔法ですね」
「え?」
「は?」
「ねえ、クレア、ミライって頭おかしいのかな?」


おい!なんてこと言いやがる。僕の頭がおかしいとか・・・久し振りに聞いたなこのフレーズ。もう言い返すのも疲れた言葉だな


「そうですね。頭と態度がおかしいものです」
「ねえさすがに言い過ぎじゃない?」
「ありえません・・・電気の回復魔法なんて聞いたことありません」
「それがあり得るのが『領域』持ちなのかもな」


あのーなんかよくわからないところで納得しないでくれませんか?こういうのって発想の勝利でしょうに。あ、これがいわゆる知識チートとかいうやつか。・・・かなりしょぼい気がするけどね。だってこの魔法他人に使えないし


「自分限定ですか・・・興味深いですね。三階層に上がるまでに少しお話ししませんか?」
「え、ま、まあいいですけど」


なんか急にぐいぐいきたな。回復魔法になると性格変わるタイプなのかな


「あ、そうだな。ユリは回復魔法の習得に関して言えば熱心だからな」
「何を言っているんですか。これはいわゆる『根源魔法』の一種だと思われます。その原理を解明できれば魔法がまた一つ広がるんですよ」
「そ、そうか」


あ、ユンさんが押されてる。てかまた新しい言葉が出てきたんだけどなに『根源魔法』って。


「いわゆる自然の摂理そのままの魔法を指します。基本魔法とも呼ばれますね」
「僕の『fire』みたいなものだね」
「ふーん」


言われてもよくわからないけどね。でもまあこれで少し仲が深まるとでも思えば別にいいか。同じ魔法を他の人が使っても・・・まあ別に大した問題じゃないし。使うとその間魔力がほとんど回復しないしデメリットもきちんとあるからね


「・・・いいえ。その魔法はあなたにしか使えません。こんな魔力消費の大きい魔法を扱えるだけの魔力量の持ち主はいません」
「でも僕は特に魔力量が多いとは思わないのですが」
「あなたなにかした?例えば魔力を全て消費するのを日常的にしてたとか」


なにか、と言われても考えられるのって転移者チートしかないんだよね。あ、そういえば角先の練習に付き合うためにあいつにずっと電気を放電していたな


「それですね。『帯電』スキルの許容一杯まで電気を放電するのを繰り返すなんて正気の沙汰ではありませんよ」
「そうなんですね」


筋肉とかも痛めつけたらその分成長するし魔力も似たような感じなのかな。そんなこと知らなかったけどいつのまにかここまで成長していたのか・・・


「というかクレアさんもそのミライさんとほぼ同じ魔力量って・・・あなたたちどんな生活を送っていたんですか」


平和な生活です。こんな戦地では育たなかったです。生まれも育ちも平和なところで生きてきました。クレアもかい。お前こそどんな生活を送っていたんだよ。あ、王様か。王様だったな。この世界王様が優れた魔力を持っているのか知らないけどさ。でもこういうファンタジーなら当然でしょ


「お前ら、雑談もいいけど気を引き締めろ」
「え?」


階段を上ったところで急にユンさんが警告を発した。どうしたんだ?急に


「クレア、ミライお前ら二人とも合図をしたらすぐに『領域』を発動してくれ」
「・・・これは」
「え・・・」


僕もユンさんの指差す方向を見た。向こうからこちらに近づいてきている飛んできている影が二つ。飛んでいるってことは飛行能力を持っているっていうことか。それがこの階層のモブモンスターなんだな


「違うぞ。よく見ろあれ・・がごろごろいるとか考えたくないっての」
「な!」
「ちょっとまて・・・」


近づいてきている存在を知る。それは、一度目にしたことのある生き物だった。いや当たり前なんだけどちょっと慌ててしまって語彙力を消失してしまった


『みんなー二階層突破おっめでとー。そんなみなさんに二つのニュースです!』
「「イフリート」」


急にイフリートの声が聞こえる。ほんとこいつ自由だな


『一つ目は、もう他の生き残っている攻略者たちはみんなこの階層に転移させましたー』


あ、そうなのか。だから誰も出会わなかったんだな。てか転移とか僕らにも使ってさっさとここから逃げさせてくれ


『そして二つ目はー、この階層のボスは・・・』


いや、言わなくてもわかります。だって今近づいてきているもん。その巨体を振り回して


『そう!雄と雌の一組のドラゴンでーす!』
「いまだ!ミライ、クレア」
「『電気の領域field』」「『火の領域《fire・field》』」


ユンさんの合図に合わせて『領域』を発動する。すぐにドラゴンの対魔力に弾かれてしまうとはいえ少しの間だけは作用する。


「助かった!『空間転移』」


ユンさんの魔法が発動した後、僕らは少し浮遊感を感じ、その場所から脱出した

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