電気使いは今日もノリで生きる

歩海

弱者とは

???


傷を完全に治療することができなかったのでちょっとフラフラしているんだけどそれでも一旦状況把握に努める。新しくきた、というかユンさんのパーティはユンさんを含めて4人。一人はさっき僕の命を救ってくれたユリさんで。残り二人・・・ああ、片方が男性だからさっき一足先にきていたのが女性の方だよな?偏見を持つわけにはいかないけれどさすがにさっきの声は女性だよな?男性の方は多分騎士なんだろうな。鎧きてるし。てかこの四人の衣装が鎧1、巫女服1、コート1、そしてユンさんはいつもの服装だ。パーティって6人だった気がするけどあと二人はどうしたんだろ?まあこの人たちが優秀とかで少数精鋭で挑んでいるってこともありえるけど。


話を戻そう。男性の方は・・・なんでイケメンなんだよ。おいこら、顔面偏差値が普通のやつを求む、なんだけど。この世界って顔面偏差値と戦闘能力が比例しているとでもいうつもりか。それ自分の限界を感じちゃうから悲しくなってくるだけど。・・・で?残り一人がさっきここにきていた人ね。マスクをかぶっているから顔は見えないけど、多分女性だろう。その・・・女性特有の膨らみがあるし(めちゃくちゃ鍛えている男性とかならもう知らん)それよりも気になったのが4人全員が若いということだ。見たところ全員20代前半、どんなに年を高く見たとしても30はいっていないようにみえる。


「さて、把握はもう十分かな?」


どうやら僕が状況把握に努めていたことが筒抜けだったようだ。いつもの授業の時とは違う、かなり低い声でユンさんが僕らに話しかける。めちゃくちゃ冷たい声で背筋が凍るってこんな感じなんだな。残念ながらちびるまではいかないけど


「ツキ」
「了解」
「ミライ!」


「う・・・ぐう・・」


声が出ない。ツキと呼ばれた女性の持っていた刀で僕は腕を貫かれていた。


「余計なことは考えるな。俺の質問にだけ答えろ・・・安心しろ、確認が取れるまでは・・・・・・・・・殺しはしない」
「わかりました」


怖い・・・いや、むしろこれが当然・・なのか。僕は今、僕の命は今、この人たちに握られている。イフリートは助けて・・・くれないよね。きっと。この状況を密かに楽しんでいるに違いない。


「まずは・・・お前らはどうやってここに、いや、順番が逆か。お前らの他にこのダンジョンにきたのは誰だ?」
「ここにいるのは僕らだけです」


ダンジョンにきたってことだから入らなかった先輩たちはカウントされないよね。


「わかった。次、入らなかったがここにきたのは」
「・・・」


これは答えてもいいのだろうか。僕が答えることによって先輩たちになにか不利益がぁ?


「早く答えろ。変に隠し立てをするなよ」


先輩たちならなんて言うだろうな。僕は勝手に想像する。きっと、先輩たちを守ろうとして僕が死んだとなればきっと悲しむんだろうな。それに僕はみたじゃないか。先輩たちの覚悟を。あえて名前を公表して精霊を出現させてオリジナルの魔法を放って自分たちの存在を知らしめようとしたじゃないか


「シェミン先輩、サリア先輩、グレン先輩・・・そして」
「セリアか」
「「!」」


セリア先輩の知り合いだろうか。この名前を聞いた瞬間だけ急に彼らに衝撃が走った。いや正確には僕が名前をあげるたびに少しだけ反応があったようにも思える。


「隊長、セリア様がいるとなると」
「ああ、だがそれは後だ。それより、なぜお前たちはここにきた。まさかダンジョンのきまりを知らなかったわけではあるまいな?」


いやー知らなかったんですよね。クレアはともかく僕はこの世界の人間じゃないので。


「僕がここに呼び寄せられたからだ」
「なに?」


お?一番の反応を示したぞ?なるほどな。この人たちはこのダンジョンを誰が作り出したのかわかっていないのか


「誰に呼ばれた?」
「・・・『火の精霊』イフリート」
「イフリートか」


この人たちのスキルってなんなんだろ。火属性じゃないと契約できないとかそういうイメージあるんだけど実際どうなんだろう。サリア先輩は『精霊』スキルだから多分例外になるんだろうけど


「隊長」
「なんとかしよう。どのみち決めるのは精霊だ・・・場合によってはクレアを殺せばいい」
「なんで・ぐぅ」


なんでそんな結論になるんだよ「少なくともお前は気に入られている」それは間違いないんだけど思考が短絡過ぎないか?


「大丈夫だよ・・・その場合他の人たちは見逃してくれますか」
「クレア」
「ケイ」
「は!」
「ぐうう」


肉を貫く音とクレアの叫び声が聞こえる。多分残りの一人、ケイさんが自分自身の剣を突き刺したのだろう。


「それを決めるのはこちらだ・・・お前らは口答えするな」


こういうのってアニメとかでは定番なんだろうけど、かなり理不尽だな。弱者は一方的にむしりとられるみたいな。あ、でも今回の場合って僕らに非があるからなんとも言えないんだよなぁ。この世界のルール的に犯罪を犯しているのは僕なんだよね。クレアはまあ・・・事情が事情だしセーフ?いやそれを立証することができないから僕が助けに来たわけで


「次の質問に移る。この薬は誰のだ?」


そういってユンさんが掲げるのは散らばったはずのシェミン先輩の薬。それをみた瞬間思いっきり動揺してしまった。それをユンさんに悟られてしまったみたいだ


「そうか、お前のか・・・調合はシェミンか?」
「そうです」
「なるほどな。では他に、このダンジョンで知っていることは?」
「知っていること?」
「そうだな・・・例えばあのゴブリンはなんだ?」
「あれは・・・」


なんて説明したらいいんだろう。イフリートがめちゃくちゃに強化したゴブリンで片付くんだけどそれで納得してもらえるのだろうか。


「その顔は何か知っている顔だな。話せ」
「いや、その」
「イフリートが超強化したゴブリンです」
「やはりか。それで?」
「え?いえ、それだけです」


それ以上なにも聞かされていないしなにを期待しているのだろうか


「は?そんなわけないだろ?ほら、イフリートに聞かされた攻略法を教えろよ」
「そんなものありません」
「そうか?」


ぐ、また僕に剣を突き刺してきた。クレアの声も聞こえたしクレアも刺されたのだろう。いや本当に知らないんだけどそんなものを与えてくるような人っていうか精霊じゃないしな


「他にはなにも知らないのか?」
「知りません・・あ、でもこのダンジョンのモンスターは火属性の耐性を大幅に強化されているみたいです」
「そうか」


考えこみはじめるユンさん。これで質問は終わりだろうか。この後開放っていうのが一番理想だけれども多分無理。彼らの監視下に置かれるのは間違いないだろう。せめて戦闘だけは参加させてくれるとありがたいな。


「わかった。ではもう。君達に興味はないな・・・ツキ、ケイ殺していいよ」
「「え?」」


いやいやちょっと待って。さっきあなた殺さないって言ったじゃないですか。それを速攻で撤回するつもりですか!?


「言ったよ?確認が取れるまではって。君たちがもう役に立たないと確認が取れたしもういいかなって」


まじかよ・・・ここで終わってしまうのか。

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