電気使いは今日もノリで生きる

歩海

遭遇

???


「倒せたのか?」
「うん、なんとかね」


そう言ってクレアはその場に崩れ落ちた。なぜ?とは聞かない。だって僕が今こうして地面に這いつくばって立てないでいるのと同じ状況だろう。お互い魔力を全て使い果たしてしまったからその反動で立ち上がることができないのだろう(ついでに僕は『電気鎧armor第三形態third』の反動と脇腹に突き刺さった刃によって動けない)あれ?もしかして僕このままだと死ぬんじゃないか?『電気鎧armor第三形態third』は制限なく使えるからついつい乱発してしまうけどよくよく考えたら自分の命を縮めているんだよね


「どれくらい休憩したら立てそう?」
「2、3分だ・・・てかミライのほうがやばいでしょ」
「うん」


魔力が回復したらすぐに『自己活性heel』を使って傷口を塞がなきゃ、クレアに頼んでタイミングよく抜いてもらおう。かなり血が出ると思うけど早く抜かないと絶対にまずいことになりそう


『はははははは、あー面白かった。やっぱり合流すると面白さが増し増しだねー』
「「イフリート」」


突然イフリートの声が聞こえて来る。この感じだと僕らの戦いをずっと見ていたのだろうか。


『だってー他の人たちつまんないんだもん。モンスターを強くしても魔道具使ってすぐに逃げるしーほんっと君らくらいだよ。逃げるだけでそんなに面白いのって』


これって褒められているんだよね?馬鹿にされているようにも聞こえるんだけど、まあ精霊のご機嫌をしっかりと取ることができたと考えればそれもそれでいいのかな?


『そうだよー君たちをもっと見てみたいと思ったからさっき加護をなくした・・・・・・・んだし、感謝してよねー』


最後のクレアの攻撃がやけに効いているなって思っていたけどあれは火の加護を失ってしまったからなのか。それは本当に感謝しても仕切れないな。おかげさまで生き延びることができました。ありがとうございます


『うんうん、素直なのはよいことだーさーってと、お?まだまだ受難が続くねーじゃ私は一旦ここで消えるねー』
「え?」


いや消えるって言われましても姿をずっと見つけられていないんですけど。てか僕まだ一度もイフリートの姿を見たことがない。いつも声だけだ


「僕もだね・・・てか受難?ってなに?」
「さあ・・・」


考えたくはないけれど近くにスケルトンの群れが徘徊していてまた戦闘になるとか?いやそれなら受難どころの騒ぎじゃなくて人生終了のお知らせってやつになるんだけど。たとえ一番弱いスケルトンが来たとしても僕ら負けます。  あ、まって今意識飛びかけたんだけど・・・一応止血っぽい感じになっているとはいえそれでも少しずつ血は流れ出て行っているし鈍い痛みが続いている。痛みが耐えないからこそなんとか意識を保っていられるんだけどそれもいつまでもつかな。人間って血液を3分の1ほど失ってしまったら死んでしまうんだっけ?


「そんなことあるのか?」
「知らないのか?詳しく説明しろって言われても無理だけど、失血死っていう死因もあるみたいだ」
「そうなのか」


どこか納得したような顔をしているけど今の説明の中のどこに納得できる要素があったっていうんだろう。


「昔、吸血鬼に襲われて死んだ人の中に外傷がなく死んでいるのもいるって聞いてなんでかなって思っていたんだ」
「あー吸われつくしたんだな」
「今ので納得したよ。血を失いすぎたんだな・・・ああ、だから急所に当たらなくても切られたりして死ぬ人もいるのか」
「うーん。どうなんだろ」


切られた箇所にもよるし、内臓とか貫かれていたらそれはそれで致命傷になりそうなんだけどな。あ、これって急所に入るんだっけ?人間の急所って股間と心臓とうなじだっけ?あとこめかみ。探せばいくらでもありそうだな。きちんとした定義なんざ知らないけど


「でもイフリートの言葉も気になるな・・・何か来てるのかな?『熱探知』・・・!」
「どうした?」


探知魔法を発動した瞬間クレアの顔色が変わった。いや間違いなく近くに他の生き物の存在がいるってことなんだけどつい『どうした?』って聞いてしまうよね。こればっかりは悲しい人間の性ってやつかもしれない。


「何黄昏ているんだよ。近くに人間の存在・・・それも4人」
「まじか」


人間、つまりそれは、どこかの国から派遣された攻略者なわけで、つまり奴らにとっては僕らは排除するべき存在なのであって、それが近くにいるということは見つかってしまったら命はないわけで


「でも、僕動けないし」
「・・・静かに、動きがない・・・いや、一人消えた?」
「え?」


それってまさか戦闘中ってことだろうか。本来は喜んではいけないことだけど恐らく一人お亡くなりになってしまったんだよな。でも僕らが生き延びるための犠牲だと思ってくれ。てかできれば相打ちになってくれ。敵がいるのにまともに動けないから


「あいつら・・・僕らがさっきのスケルトンと出会った場所で動いていないぞ」
「そこでリポップが発生したのか・・・あ!」
「どうした?」


あそこには僕のナップザックが切られたことで荷物が全部ぶちまけられているんだけど。そこそこの量の甲板が飛び散っているんだけど。シェミン先輩から渡された薬もあそこにある。あれは取りに帰らないと。


「やつらが見つけないことを祈るしかないね」
「さすがに無理だろ。国の精鋭だし」
「はい、私たちは国のエリートです。そしてあの薬はあなた方の持ち物なのですね」
「「!!」」


突然僕らではない声が響く。イフリートではない。別の女の人の声。普通なら慌てて振り向いて・・・とかそんなベタな展開が始まるんだけど悲しいかな。僕は何も見えません。最初っからずっと天井を見ています。寝返りとかうちたいけど下手したら突き刺さっているのものがさらに深くなりそうであんまり刺激したくないんだよね。というわけで振り向いたり驚いたりする役目はクレアに任せます。クレア、ファイト


「あなたは・・・」
「私ですか?あなた方には関係ない話です」
「それもそうだね」


だって僕らすぐに殺されちゃうもんね。


「やけに物分りがいいですね」
「だってあなたに勝てないので僕らは死ぬだけです」
「ふむ」


お、なんか流れが変わったか?いやむしろ呆れられている空気があるんだけど


「わかりました。ただ、あなたたちは今は殺さないようにと隊長に言われているので・・・ああ、きましたね」


床を伝ってくる振動でわかる。他にも人が来たのか。てか隊長はなぜ殺さないようにってこの女の人に行ったのだろう。あ、普通に僕らから情報をもらうためか。納得


「やっぱりミライとクレアだったか」


え?この声って・・・確か


「ユンさん!?」


そうだ。ユンさんだ。セリア先輩のお兄さんで僕らになんやかんや色々と教えてくれているようでその実実は勝手に学べとばかりに崖から突き落とされてそしてついでにサリア先輩やミラ先輩を初めとする女性陣からはことごとく振られているユンさんだ


「最後のはいらないよ・・・この薬はシェミンのものだな。それで?ってああ、ユリ治療を頼む。死んでもらったら困るから」
「助けるの?」
「このままだと死んでしまうからな」
「わかった隊長が言うのなら」


流しかけたけどユンさんが隊長なのか。強い人だとは思っていたけれど国の精鋭の隊長になれるくらい強いなんてね。っと僕の目の前に綺麗な黒髪をした女性の姿が見えるんだけど。紫色の目をしていて目をひくけど服装が巫女服だからおそらくさっきユンさんが言っていたユリさんなんだろう。このパーティの回復役


「痛いよ?」
「ぐうえ」


そしてためらうことなく僕から刀を抜き取る。まって、それによってせき止められていた血が大量に吹き出すんですけど。死んじゃう、僕死んじゃう


「『回復ヒール』」
「!」


傷口が塞がった。どうやら助けてくれたみたいだ。これでなんとかなるか?


「う」
「ミライ!」


立ち上がった瞬間ふらついてしまいクレアに支えられる。やっぱりそれなりの血を失っていたのかな。今乗って貧血に症状が近い気がする。早いところ体力を回復させないと・・・


「『自己かっhe』」
「魔法は使うなよ?」
「・・・」


ユンさんから睨まれる。そしてすぐに僕が魔法をキャンセルしたのをみると大丈夫だとばかりに手を振った。ああ、そっか、今魔法を使おうとしたらこの人たちに殺されたかもしれないのか。


「よし、じゃあ今からお前らの尋問を始める」


尋問・・・ですか。まあ別に隠すことなんてないし問題ないか

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