電気使いは今日もノリで生きる
鬼ごっこ2回戦
再び鬼ごっこが始まった。今回は最初からクレアと行動を共にしている。まだ一人では全方向をカバーしきれないってのが理由だ。二人ならば全方位を安定して観れる。
「そっちにいたか?」
「いや、クレアは?」
「範囲内に三人、ミライの方向へ逃げよう」
ただ、何も変えなければ午前中と同じような結果になってしまう。だから、昼ごはんの間に幾つか対策を考えてみた。まず一つ目に
「牽制は任せた・・・僕のだと危ないからね」
「任せろ!『放電』」
人のいる気配がしたらとにかくスキルを使って妨害をする。スキルを使えば当然位置がバレるがそもそもすでにバレてしまっているので今更感が強い。
「・・・あっちだ!」
次に移動中でも出来る限り領域を発動させるようにすること。常に自分の周りに注意を向けていることで相手の位置をつかんだり接近されているのかをきちんと確認するようにする。でも、これはなかなか難しい。二つのことを同時にこなそうとするのはやっぱり大変だ。
「追っ手は来ているか?」
「・・・いや、来てない。巻いた・・というよりは鬼じゃなかったんだろう」
誰かがいることはわかってもそれが敵なのか味方なのかはまったく判別することができないから今みたいに同じ逃げ役の人にぶつけることもあるだろう。でも、一年生は僕らだけみたいだしきっと大丈夫だよね。
「少し休むか」
「でもここだとすぐに見つかる。隠れ場所を探さないと」
木々が生い茂っているとはいえ、それなりに手入れをされているのかそこそこ見晴らしは悪くない。木の陰に隠れていれば見つけにくいだろうが動いていればすぐに見つかる。
「ああ、今はスキルじゃなくて視覚に頼ろう」
「そうだね」
『領域』ほどではないが目で見てもそれなりに見ることはできる。まあこちらが見つかりやすいということは当然相手も見つけやすいということに他ならない。歩きながら周囲に目を凝らす。もちろん、何か音が聞こえないかも常にチェックしておく
「ミライ!向こうに人陰があった!」
慌てて木の陰に身を隠す。
「様子は?」
「・・・こっちには気がついてない?でもよく見えないから鬼なのかわからない」
困ったな。こういうのが一番困る。さっきみたいに人がいるっていう程度しかわかっていないのなら遠慮なく電撃を放つことができる。大まかな位置しかわからないし、そもそも距離が離れている。かわすのはたやすい。でも今の状況は少し違う。こちらが一方的に相手の位置を把握している状況だ。この状況で電撃を放つと当たる可能性が高い。シオン先輩とかならまったく心配してないけど二年生の実力がわからないのでもしかしたらかわせないのかも・・・っていう不安がつきまとう。ここで変にトラブルとかは避けたいからね。
「そっと逃げようか?」
ただ、さっきもいったけど常に移動することが大切だ。だからあまり長い時間悩んでなんていられない
「そうだね・・・少し離れてから『領域』で確認しよう」
「それでいこう」
移動する。山だから斜面に沿って登るように心がける。これも午前中の教訓だ。山を登りながら逃げるよりも下りながら逃げたほうが捕まるまでの時間が比較的長かった記憶がある。下っている途中で急に方向を入れ替えたら追う側も対応のために少しだけ回るときに硬直が発生していた。だからできるだけそれを意識する
「少し離れたね・・・『火の領域』」
「『電気の領域』・・・どんな感じだ?」
「えっと・・・あ!まずいこっちに近づいてくる」
「マジかよ」
鬼のほうだったーーー!そして下か向かってくるってことは当然僕たちは山を登ることになるわけでさっき考えた対策がまったく意味をなさなくなってしまったじゃないか。
「僕が先に行く・・・『電気鎧』」
電気をまとっていることによって道を切り開きやすくなった。これで枝木とかにとらわれずに進むことが可能だ。
「待ってミライそれ逆に鬼がすぐに追ってこれるんじゃ・・」
「・・・あ」
「しかも」
「こうしてお前たちの逃げ道がわかりやすいってわけだ」
「「グレン先輩・・・」」
最悪だ・・裏目に出てしまったか・・・。
「さあ、ということで「火の壁」うおっ」
「クレア!」
「ミライこうなってしまっては仕方がない。隙をついてグレン先輩から逃げよう」
お前なんて無茶をいうんだ。・・・でもまあどうせ捕まるならギリギリまであがいても問題ないか。
「『放電』」
「へえ、その意気は嫌いじゃないぜ・・・でもな!甘ぇ『力の領域』」
「ぐっ」「まじかよ・・・」
グレン先輩の領域によって火の壁や放電が全てかき消されてしまう。これも『領域』の効果の一つなのだろう。おまけにまったく身動きが取れなくなってしまった
「さて、これで」
「まだだ!『放電』『電気鎧』」
使えるものはなんでも使う。でもまったく発動しない・・・
「諦めたくない・・・『電気の領域』」
「へえ」
!発動した『領域』には『領域』で返すことができるのだろうこれは新しい発見だ。・・・そういえば最初にそう説明されてたっけ魔族の気に対応するための唯一の対処方法だって
「クレア!」
「わかってる!『火の領域』」
「ぐっ」
「「いまだ!」」
一瞬だが隙が生まれた。この間にうまいところ逃げよう。
「一気に斜面を下れーーーーー!」
もう逸れても構わない。どうせお互いに『領域』を使うんだ。すぐに合流することができるだろう。
「やるな・・・だが詰めが甘い!『力の領域』」
「なんの!」
それはもう対処方法がわかってる。すぐにまた『領域』を発動させて・・・
「筋は悪くないが一瞬の隙で俺からにげれるように一瞬の時間でお前たちを捕まえることができるんだぜ」
やられた。解除のために・・・いや、解除までの一瞬の硬直を読まれた。
「ははは、まだまだ一年生に負けるわけにはいかないからな」
なかなかいい感じに決まっていたからこそ余計に悔しい。でも今の感じでいけばうまいことすると先輩たちから逃げられるんじゃないのだろうか。
「そうかもな・・・っとユンさんから伝言。午後は一度捕まったらおしまいだって」
そうなのか〜悔しいけどしょうがないね。せっかく糸口が見つかったのに。一度でもいいから逃げてみたかった。
「お前ら一年ながらよく頑張ったと思うぜ。さ、戻ろうか」
仲良く三人で最初の位置に戻ってくる。二年生は半分くらいすでにいた。
「お、ミライにクレアも捕まったか。まあ一年生にしてはよく頑張った方じゃないのか」
「そうですか・・・でも『領域』がまったく使いこなせなかった」
「まあ『領域』って結局のところ基礎だからな〜おまけに周りにここに敵がいますよって伝えるようなものだからな」
便利ではあると言っても基礎であるがゆえに限界があるのだろう。でもグレン先輩のはかなり強い感じがしたんだけどな
「まあグレンのは特殊だからね『領域』を使うのは間違っていないけど、少し工夫が必要かもね」
「どうすればいいんですか?」
「うーん、さすがにそれは言えないね。自分で見つけてこそ価値があるから」
やっぱり教えてくれないか。でも目標ができた分少し進むことができたのかな。
「大丈夫。君達には頼りになる先輩たちがいる。正しい道を教えてくれるさ」
そうなのかな・・・。だったらいいけど。ま、少しづつ頑張りますか。こうしてなんかヤバそうな水曜日の授業は終わった。思っていたよりもきつくなかったな。過剰だったのかな?
「あーそうだ。一年生と二年生。お前ら捕まった回数が一回ごとにここから山の頂上までのランニングを二回な」
・・・なるほど。これはきつい。じゃなくて。
「体力作りですか・・・」
今山の中を走り回っていて疲れているんですけど
「そうだな。体力がしっかりついていればいいからな。ま、頑張れ」
前言撤回。これはきついわ。でもそれだとグレン先輩とかずるくないか?ペナルティとかとくになさそうだし
「ミライ・・・俺たちは全員捕まえるまでにかかった時間分走ることになってるけどそれでも変わりたいか?」
いいえ、自分たちの方が簡単でした。すみませんでした
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