電気使いは今日もノリで生きる
胃の痛い部屋割り
各自でそれぞれ考える時間が必要だということで当てられた部屋に向かう。場所がわからないのでメイドさんの後について行っているだけだが。一人一部屋かと思っていたが、あいにくクラスメイト全員分の部屋はないとのことで四人一組で一つの部屋を使うことになった。それはいいのだが・・・
「なんでこの面子なんだ」
「どうした紅?何か言ったか?」
「何も言ってないよ」
思わず溢れた本音を一ノ瀬に拾われてしまう。危ない、角先も天衣もいないんだから僕を知ってくれている人はいない。軽口もまともに叩けないな。まあ1日の辛抱だし問題ないかな。
「そうか・・・おい、青目、楠に絡むんじゃない」
「ああ?別にいいだろ?」
「あ、そ、その・・・」
・・・言いたいことが分かっただろうか。おかしいでしょ。なんでこのメンバーなんだよ。僕に楠、一ノ瀬、青目、そう、僕以外明らかに主要人物的な人で固められている。くそう、角先め・・・許さん。
なんで僕がこの場違いなメンバーと一緒の部屋に放り込まれたのかというと単純に余ったからだ。正確には一ノ瀬以外の三人が余ったと言ってもいい。
四人一組になるように言われたが、幸いにしてうちは男子20人、女子20人の計40人だったために余ることなく組める。僕は当初、角先と天衣と同室にするつもりだった。しかし角先のやつ我先に天衣、麺山、米柔の三人と組んでいやがった。角先いわく「お前の目標の達成のためにはもっといろんな人と交流を持った方がいい」とのことだが、あいつ絶対楽しんでやがる。というわけで僕は余りました。他に友人と呼べるような人もいないからね。実は天衣が二人目の友人だったりする。悲しい。
次に楠、まあいじめられっ子だったし誰もこいつに積極的に関わろうとしないよな。しかも今は異世界でスキルなんてものもある。あるとどうなるのかといえば、こいつをいじめるやつに一人が『勇者』という明らかなあたり持ち。自分のスキルと比較して勝てそうになかったらそりゃ関わらないよな。目をつけられたくないもの。
最後に青目。こいつに関してはなんでみんな避けたのかわからない。そりゃいじめっ子だったのはわかるけど。赤髪や緑肩までもが避けた理由はわからん。いつもお前ら三人でつるんでいたでしょ。
そして三人あてもなくふらふらしていたところ臭いものには蓋をしよう精神でくっつけられることになった。んで、このままでは楠が青目にいじられて終わるだけだと感じた勇気ある一ノ瀬がこっちにきて、この四人で仲良く一つの部屋を使うことになったということです。
「こちらになります」
案内されたのはごく普通の部屋。メイドさんに聞いてみたところ普段は客人の従者の宿泊場所として使われているところらしい。いや、王様よ。自分のところに残ってほしいのなら少しでもいい評価が得られるように僕らの待遇をよくしなさいよ。こんなところでケチってもなんの得にもならないぞ。さて、従者用の部屋とはいえ、さすがは国王のお城、それなりの広さはある。部屋の真ん中に空間があって両端に二段ベットが二つずつ。なんか青少年〇流の家とかの部屋に近い感じだな。小学生の時に宿泊体験とかで行ったようなところの。
「夕飯になりましたらお呼びにきますのでそれまでこの部屋でお過ごしください。ああ、お手洗いは廊下を曲がって右でございます」
それはそれはご丁寧にどうも。というか部屋から出てはいけないんですね。ことば使いは丁寧だけども有無を言わせない圧力があるな。
「では、ごゆっくりとおくつろぎください」
優雅に一礼して去っていく。うん、イメージ通りのメイドさんだったな。顔はあまり見なかったけど、メイド服に身を包んでいたし。髪の毛は金髪だったし。ほんと黒髪なんてみないな。
さて、ごゆっくりと言われても・・・どうしよう。ここものすごく気まずいんだけど。外に行きたいよ。
「なあ。お前らはどうする?1日だけとはいえ同じ部屋になったんだお前らの意見を聞かせてくれ」
そんな空気をぶち破って声を発したのは一ノ瀬。ほんとこいつ最初の一矢になることに抵抗がないな。まあせっかく話題を振ってくれたんだし、乗っかるとするか。
「僕は学校に行くよこの国に残るメリットがわからない」
いくらサポートしてくれるって言っても国となると色々と政治面とかでめんどくさいことが起きそう。そんなのに巻き込まれたくないからね。
「そうか。楠や青目は?」
「ぼ、僕も学校に行こうかなって」
「俺もかな」
「やっぱりみんなそうだよな」
さっきも言ったけどここに残るメリットが本当になさそうだしな。まあまさかみんな即答で学校を選ぶのだけは少しだけ予想外だったけど。青目とか特に城に残りそうなのにな。
「というか一つ聞きたいんだが、、残る人っているのかな?」
「そうだな」
間違いなく男子は残らないだろう。理由は王様と美少女さんのどちらについていきたいかと聞かれた時の男子高校生の回答をイメージすれば自ずと明らかだろう。
「みんなはどんなスキルを手に入れたんだ?青目は『勇者』ってことだけわかってるけどみんなのは知らないからさ」
うーん、教えないことによるメリットはなさそうだしいっか。それに教えなかったらそれこそ逆になにか言われそうだな。この人を信じきった目よ。隠すことが逆に悪いみたいに思えてくるじゃないか。
「あ、ちなみに俺は『炎』だな。これがどんなスキルなのかはわからないけど」
へえ、『炎』か。一ノ瀬がいたら絶対にもっと楽に森を抜けることができたよな。過ぎた過去の話ではあるけれども思わずにはいられないな。
「ぼ、僕は『夢』です」
『夢』!これまたチート感溢れるような・・・気がしない。聞いたことのないスキルなんだけど?どんなスキルなんだよ。もしかして任意の相手を夢現の状態にするとか?なにそれ最強じゃん。脳を眠らされてしまうと人間は動けないからね。まあ第六感とかがあって脳を経由しない脊椎反射を連続して行えばなんとかなるのかな?とにかく夢が溢れるスキルだな。『夢』だけに
「へえ、なんかすごそうなスキルだな。ぞれで?紅はどんななんだ?」
「『電気』だよ」
「なるほど」
自分で言っていてあれだが、悲しくなってくるんだが。この部屋にいるのってちょっと前の主人公の保有スキルNo.1の火系統の『炎』、最近は勇者(笑)な風潮もあるけれどそれでも一部では最強の能力『勇者』、謎な能力ではあるが未知数ゆえにこの世界のチート足り得るスキル『夢』。そしてなんの変哲もない『電気』。場違い感がえげつないな。すでに『帯電』という完全に相性の悪いスキルの存在が明らかになっている分辛いんだけど。
「やっぱ『勇者』が強いのかな」
「まあ定番だろうからね」
「知らねーよ。勝手に言ってろ」
それはどうだけどね。なにが強いのかなんて誰にもわからないんだし。それこそ小説とか読んでいると色々なスキルが最強でした!みたいな感じになっているもんな
こんな感じで不安だったけれどもそれなりに大きな争いもなくメイドさんが夕飯のことを伝えにくるまで会話が続いていった。
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