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落ちこぼれの少年が世界を救うまで

歩海

同期との戦い


「いくよっシルフリード!」
『はいはい。お手柔らかにね』
「手加減なんてできるかよっ」

 俺は『死に巡る命の輪サクリクルト』を構えながらライトたちの方を見る。今までも契約獣に対して生身で戦うことはよくあったけどことごとく負けているからね。基本的に一方的に力押しされて負けることが多い。

「とりあえず風で吹き飛ばそうか」
『エルを近寄らせたらダメだからね』

 シルフリードがこちらに向けて息を吹きかけると俺に向かってかなり強い風が吹いてくる。風の塊が襲ってくる感じなのだけど。契約獣での戦い方は主に種類によって依存する。動物系の契約獣ならば狼みたいに殴りかかってくるし、精霊系ならば魔法を扱う。まあ、基本的に普通の生き物の殴り合いになるのが自然だ。で、人間が何ができるのかっていうと、精霊には遠く及ばないが簡単な魔法とそれから体術ぐらいかな。

「まじかよっ」

 刀を構え、向かってくる風を斬るようにした。普通ならばほぼほぼ意味のない行動。でも、なぜだかそう体が動いた。

「風を、消した?」
『うわっ、やっぱその刀とんでもないわ』

 ライト及びシルフリードが驚いているが、それは僕も同じである。なんで風までも斬ることができたのだろうか。それが不思議でならない。

『風がそこに存在しているでしょう? 目には見えなくても……存在していれば斬ることができる。それがその刀の能力よ。輪廻の輪には返ってないでしょうけどね』
「そういうものなのか」

 シルフリードの言葉に納得した。確かにこないだも木という生きているけどよくわからないものや『災厄の獣』という意味のわからないものを斬っていたからね……風くらいいけるのか。

「これなら……あいつに近づける!」
「くそっシルフリード、切り刻め」
『わかったわ』

 シルフリードから風の刃がどんどん飛んでくる。でも、なぜだろうか。その流れ・・を目にすることができる。これが、あの刀を持ったことによる影響なのだろうか。僕の体を真っ二つにするように風の刃が飛んできているので、それに合わせて刀を構える。

「どうして怯まない……吹き飛べ」
『吹き飛びなさい』
「うわっ」

 地面からの突風が吹いてきて、空中に投げ出される。でも、これで怯むわけにはいかない。空中に投げ出されたことをいいことに、俺は上空から理事長に渡された方の刀をライトに向かってぶん投げる。

「え? なにそれっ」
「俺は一本しか使わないとか言った覚えないからな」

 ずるいと思われるかもしれないが、仕方がない・・・・。俺が中学時代にたくさんのやつと戦って全て負けてきた。その中で少しでも勝ちを引き寄せるためにはずるい手段をしなければいけなかった。これも、そのやり方の一つだ。

「シルフリード! 頼む」
『……いいわよ』

 ライトはシルフリードに頼んで刀を横に飛ばしてしまった。急に飛んできたからとっさにいつもしているやり方で避けようとしたのだろう。普通ならば遠距離の攻撃をしてくる相手は接近してくることはないからね。

「あっ」
「これで、終わりだよ」

 俺はライトの首に刀を添えている。なんてことはない。刀を投げた後、そのまま着地してライトの元へと走って行っただけだ。刀に意識を裂かれていたので俺から意識を逸らしてしまったな。

「嘘だろ」
『なんであんた着地の姿勢があんなに綺麗なのよ』
「何度飛ばされて地面に叩きつけられたことか……」

 シルフリードにボヤかれたけどその理由は簡単だ。中学時代によく模擬戦をした時に何もできないからといって空中に投げ出されていた。その度に何度もなんども叩きつけられた思い出がある。それが嫌なのでこっそり木の上から飛び降りて着地の練習をしたものだよ。最初のうちは失敗して身体中傷だらけになっていたのでおばさんとかに心配されたっけ。

『ご、ごめんなさい』
「同情はいらない……その理由はわかったからね」

 そんなことを話していたらシルフリードからとんでもなく同情の視線をもらった。でも、もう過ぎたことだ。それにあの時受け身の練習を山ほどしていたおかげで今かなりスムーズに動くことができたからよしと思うことにしよう。それにしてもライトのやつ、何も喋らないのだけど少し不気味だな。

「……悪かった」
「ん?」
「僕の負けだよ……契約獣がいないからといって……舐めていた。本当にごめん」
「え? あ、ああ」
『なんでそんなに不思議そうに見ているのよ』
「だってそんなこと初めて言われたから」

 素直に負けを認めて謝罪してくるような人を俺は知らない。まあ中学時代にどんなに頑張っても誰にも勝てなかったからこんな展回になることがなかったとも言える。むしろそれしか知らないか。

「今までのやつがそうだとして、僕は素直に負けは認める……次は勝つけどな」
「一回きりの攻撃手段だったしな」
「ああ、それに反省しないといけないし。いつもシルフリードの風で吹き飛ばしていたから……今まではこれでなんとかなっていたけど、これからは知恵を使わないといけないな」
『そうね。気をつけなさい。今までは相手が弱すぎたけど、これからは対等……下手をすれば格上と戦うことになるのだから。エルの方が徹底しているくらいよ』
「そうでもしなきゃ勝負にならなかったからね」

 シルフリードはなぜか過大評価をしてくれているけど、本当に今まではひどかったからね。そんなことを思っていたらシルフリードがこちらを向いてきた。

「どうしたの?」
『はぁ、負けちゃったし、少しくらい手助けをしてあげようと思ってね。刀を出しなさい……ああ、それじゃなくて投げてきたほうのをよ』
「え? うん」

 理事長にもらったほうの刀を……そういえばこの刀に名前って何かあるんだっけ? 聞いていなかったから知らないな。すると、シルフリードは差し出された刀に手を当てると目を閉じた。

「何をしているんだ?」
『はい、これで終わったわ。私の加護を授けてあげる。持っているだけで風が自然に纏うことになるわ。あと少しなら飛ばすこともできるわよ……今回はライトが油断していたからなんとかなったけど、これからあの刀を使えない時はたくさん出るのだからね』
「まじか……ありがとう」

 シルフリードから言われた内容は非常にありがたいものだった。そんなことまでしてくれるとか至れり尽くせりだよ。

「そういえばエルの刀ってどんな感じなんだ? 正直シルフリードがそこまで怯えている理由がわからないんだけど」
『まあこれは口で言ってもしょうがないからね』
「そうだな……」

 ライトから出てくる当然の疑問、それに答えるために辺りを見渡す。すると、空き地に来ているので手頃な木が見つかった。

「ちょっと見ててよ」
「え? ああ……あ?」

 木に近づいて、そしてすぐに躊躇うことなく振り抜く。するとすぐに木は光の粒子となって天に登って言った。それを見ていたライトは目の前の現象に言葉を失ってしまったようだ。

『これがあの刀の能力よ……そして恐ろしいことに対象はこの世界の全てなのよ。だからあれで斬られたら私も消えてしまうわ』
「まじかよ……」

 シルフリードからもたらされた情報を聞いてライトは開いた口がふさがらないようだった。そして、そんなことを話していた俺らに話しかける人物が。

「二人ともお疲れ様ーいやぁ、いい勝負だったよ」
「あ、ありがとうございます」
「さ、二人とも、いい時間だし帰ろっか? 夕飯の時間だよ?」
「わかりました」

 今までずっと見守っていたのだろ。リシナさんは俺たちを見て優しく微笑んでくれた。そして俺たちは三人揃って寮へと戻っていった。ちなみに帰り道の途中にリシナさんからこっそり囁かれた。

「あ、さっきの君の刀のことは誰にも言わないでおいてあげるね? エルくん」

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