最弱種が最強だったらどうします?

時雨

プロローグ

「おぎゃー!おぎゃー!」

 赤ちゃんの第一声はみんな同じ、この叫びから始まる。自分はちゃんと生まれたよ。無事だよ。と、知らせるように大きな声で。

 しかし、この子は違った。
生まれた瞬間、泣き叫ぶのではなく、笑っていたのだ━━━━━

 それから5年経ったある日の朝、その子に変化が訪れた。生まれた時から赤かった髪と瞳の色が赤色から青色になったのだ。本人は自分の顔を見ることがないので、最初に気づいたのは両親だった。

 その子の両親は、生まれた瞬間笑っていたことや急に髪と瞳の色が変わったことを気味悪がって、色が変わった一週間後にその子を置いて家を出ていった。何かしらの方法でその情報が伝わったのか、その日のうちに親戚のおじさんが迎えに来てくれた。

「捨てられたのに泣かないんだな」

 そう一言だけ呟いて、おじさんはその子と家へ向かった。

 このおじさんの家はとても厳しいことで有名だった。姫柊ひめらぎ家は鶴姫つるひめ流と呼ばれる武術の道場を経営している。この国最古の武術であり、国でいちばん強い武術でもある。

 なぜ、そんな厳しい家に引き取られたのか、幼いながらにその子は理解していた。

 みんな親と一緒なのだ。出産直後に笑っていたこと。髪と瞳の色が変わったこと。それが気味悪くて近づかないようにしている。さらに悪いことに、その子の親は、家を出ていった次の日に事故を起こし亡くなった。そのせいで「忌み子」「呪い子」
と親戚の中で呼ばれることになった。それでもおじさんが引き取ってくれたのは、自分にも他人にも厳しいが故に差別というものをしなかったからなのかもしれない。

 それから十数年━━━━━━━━━

 17歳になったその子は、成績優秀、運動神経抜群、イケメンと三拍子揃った青年に育っていた。引き取られたその年、5歳から入門した鶴姫流だが、それから2年後の7歳にして免許皆伝を許されるほどの技術を身につけていた。

 三拍子揃っているんだから彼女くらいいるでしょ!と思っているそこのみなさん。残念ながらその期待を裏切り色恋沙汰は全くなし。友達と言えるほど親しい人間がいる訳でもなし。話しかけられたら話す程度の関係を周りと保っている。

 そんな何気ない日々を送っていた彼だったが、唐突に終わりを送ることになる。

 その日の帰り道、いつもの公園で少しトレーニングをしていこうと決めた彼は荷物をベンチに置き、走り込みを始めた。周りを3周ほど走り終わった頃、公園の隅の方で遊んでいた子どもにマスクをした人が近づいき、腕を乱暴に掴んでいる姿が見えた。助けに行こうと急いで向かう。

 この時、いつもの彼であればしっかり周りを見て犯人が1人ではないことに気づいただろう。しかし、昔のことがあってか子と親が離れ離れになってしまうことを嫌う彼は、珍しく焦っていた。その焦りが命取りとなった。

「何をしているんですか!」

 そう言うと同時に怪しい男に近づき、腕を掴む。それと同時にかれの背後から胸にかけて痛みが走る。その場所は心臓。刺されれば間違いなく絶命する。彼は刺された痛みを感じながら、直ぐに命を引き取った。

 この死が幸か不幸か、彼の輪廻の大きな転換期となる。永遠に続く転生の輪から抜け、とある世界の唯一神の手に渡った彼の魂。

「さて。この子を引き取ったのはいいけど、私からすることはほとんどないかな。この子の次の人生は幸せになるといいんだけど…。全てはこの子次第、か」

 そう言うと、神は彼の魂を両手で横から挟むように持ち、魔法・ ・を唱えた。光を発した魂は光が収まると消えていた。

「さぁ、君の物語を見せてくれヒイロ・ ・ ・君。君の人生が幸福で満たされますように…」

 「私にはこんなことしか出来ないから」と苦笑いをした神は、空中からノートとペンを取り出しこう書き出した━━━━━



「少年はその人生ステージでどう踊り、魅せてくれるのか。弱者であるはずの人間が強者として生まれたのならその力をどう使うのか。それが私の生まれて初めての興味であり研究である」




どうも、作者です。初めての作品なので至らない所もあるかと思いますが大目に見てくださると助かります。学校、部活、バイトと書く暇があまりなく不定期になってしまいますが、これから頑張っていきますのでよろしくお願いします!

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