《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第8-21話「最終決戦 Ⅱ」
「来た……ッ」
短く呟く。
皮肉のように青々と広がる空の向こうから、ノソリノソリと巨大な姿が浮かびあがる。都市の主塔ほどの大きさがある。全身赤黒くて巨木のように手足は太い。ふしくれだった腕や脚部には、血管と思われるものが浮きでている。その血管の部分だけは、やたらと鮮やかな赤色だった。そして頭部には、少女らしき物体が上半身を生やしている。
「あれが……ヴィルザハードですか」
隣にいたフーリンが圧倒されたのか、震える声を発した。
「はい。ですが本体は頭部から生えている少女のようです。あのバケモノのような全身は、彼女の体内にしまいこむことが出来るようなので」
今までの犠牲が、教えてくれた情報だ。
「攻撃命令は?」
「まだ。もう少し近づいてからです。魔神の魔法が飛んでくるかもしれませんので、防御魔法の準備を」
「はい」
作戦はあらかじめ決めてある。魔神ヴィルザハードが戻ってきたところ、その脚部を魔法で拘束して、ヴィルザハード城のある窪地に突き落とす。そして、ヴィルザハード城の屋根で魔神の肉体を貫いてしまおうというのが、第一作戦だ。
魔神と帝国軍の間に、ヴィルザハード城のある窪地がある。魔神はすでに、こちらの部隊に気づいているはず。だが、魔法を放ってくる様子はない。まるで興味がない――といった様子だ。
(もしや?)
各地で暴れまわって多少は疲れているのかもしれない。そうであって欲しい。
(もう少し……もう少し、近づいてくれれば)
焦りが生じる。
この第一作戦。合図はバートリーが出すことになっている。その責任を担っているのもバートリーだ。
手に汗をにぎり、心臓の音を落ちつかせる。
地を揺らし、ノソリノソリと魔神は歩み寄ってくる。
「今です!」
総勢2万の魔術部隊のうち、前衛にいた3000が、「土系上位魔法《鉄の鎖》」を放つ。魔神の足に鉄がからみついた。魔神がよろける。
「やった! そのまま窪地に引きずり落とせ!」
鉄の鎖を発生させた魔術師たちが、馬にまたがり、魔神を窪地に引きずり落とした。すさまじい土煙が、窪地の中から吹き上がる。轟音と地響きも盛大だった。そして静寂。
「やったのでしょうか?」
「歩兵に確認させましょう」
「いえ。私も行きます」
バートリーとフーリンは数人の魔法戦士と連れて、窪地を覗きこみに行った。しばし吹き上がる砂煙で確認することが難しかった。視界が晴れてゆく。狙い通りだった。ヴィルザハード城の主塔によって、魔神が貫かれている。その胸元に、塔の三角屋根が刺さっていた。
「ね、狙い通り……」
ここの城は魔神ヴィルザハード本人の魔力が糊塗されている。そのため非常に堅固で時に朽ちることすらない。その主塔だからこそ、魔神のカラダを貫くことが出来たのだ。
「やった……?」
第一作戦の成功を伝えようとしたときだ。貫かれた魔神は悠々と起き上がったのだ。ダメージが通っているのかどうかも、よくわからない。その魔神の頭部にいる本隊の少女が、こちらを見上げてニンマリと笑った。
「見覚えがあるな。女。私のケネスを弄んでくれた礼をしてやろうか」
赤い魔法陣が展開された。
赤――。
ふつう魔法陣は青いはずなのだ。その赤い魔法陣から、赤黒い腕が伸びてきた。人間の腕のような形状をしているが、手のひらには口がついていた。腕が空を切り裂き、バートリーに迫ってくる。
「バートリーさま!」
フーリンがバートリーをかばって前に出た。
「フー!」
フーリンの背中が、大きく食いちぎられた。バートリーはすぐにフーリンを抱えて、後ろに下がることにした。魔法戦士たちがバートリーとフーリンをかばおうと、その腕を切り払う。しかし、魔神の発したその赤黒い腕は、切れば切るほどに増殖してゆき、しかも、先端についた口で肉を食いちぎってくる。
「第一作戦失敗」
と、《通話》で後方の部隊に伝えた。
短く呟く。
皮肉のように青々と広がる空の向こうから、ノソリノソリと巨大な姿が浮かびあがる。都市の主塔ほどの大きさがある。全身赤黒くて巨木のように手足は太い。ふしくれだった腕や脚部には、血管と思われるものが浮きでている。その血管の部分だけは、やたらと鮮やかな赤色だった。そして頭部には、少女らしき物体が上半身を生やしている。
「あれが……ヴィルザハードですか」
隣にいたフーリンが圧倒されたのか、震える声を発した。
「はい。ですが本体は頭部から生えている少女のようです。あのバケモノのような全身は、彼女の体内にしまいこむことが出来るようなので」
今までの犠牲が、教えてくれた情報だ。
「攻撃命令は?」
「まだ。もう少し近づいてからです。魔神の魔法が飛んでくるかもしれませんので、防御魔法の準備を」
「はい」
作戦はあらかじめ決めてある。魔神ヴィルザハードが戻ってきたところ、その脚部を魔法で拘束して、ヴィルザハード城のある窪地に突き落とす。そして、ヴィルザハード城の屋根で魔神の肉体を貫いてしまおうというのが、第一作戦だ。
魔神と帝国軍の間に、ヴィルザハード城のある窪地がある。魔神はすでに、こちらの部隊に気づいているはず。だが、魔法を放ってくる様子はない。まるで興味がない――といった様子だ。
(もしや?)
各地で暴れまわって多少は疲れているのかもしれない。そうであって欲しい。
(もう少し……もう少し、近づいてくれれば)
焦りが生じる。
この第一作戦。合図はバートリーが出すことになっている。その責任を担っているのもバートリーだ。
手に汗をにぎり、心臓の音を落ちつかせる。
地を揺らし、ノソリノソリと魔神は歩み寄ってくる。
「今です!」
総勢2万の魔術部隊のうち、前衛にいた3000が、「土系上位魔法《鉄の鎖》」を放つ。魔神の足に鉄がからみついた。魔神がよろける。
「やった! そのまま窪地に引きずり落とせ!」
鉄の鎖を発生させた魔術師たちが、馬にまたがり、魔神を窪地に引きずり落とした。すさまじい土煙が、窪地の中から吹き上がる。轟音と地響きも盛大だった。そして静寂。
「やったのでしょうか?」
「歩兵に確認させましょう」
「いえ。私も行きます」
バートリーとフーリンは数人の魔法戦士と連れて、窪地を覗きこみに行った。しばし吹き上がる砂煙で確認することが難しかった。視界が晴れてゆく。狙い通りだった。ヴィルザハード城の主塔によって、魔神が貫かれている。その胸元に、塔の三角屋根が刺さっていた。
「ね、狙い通り……」
ここの城は魔神ヴィルザハード本人の魔力が糊塗されている。そのため非常に堅固で時に朽ちることすらない。その主塔だからこそ、魔神のカラダを貫くことが出来たのだ。
「やった……?」
第一作戦の成功を伝えようとしたときだ。貫かれた魔神は悠々と起き上がったのだ。ダメージが通っているのかどうかも、よくわからない。その魔神の頭部にいる本隊の少女が、こちらを見上げてニンマリと笑った。
「見覚えがあるな。女。私のケネスを弄んでくれた礼をしてやろうか」
赤い魔法陣が展開された。
赤――。
ふつう魔法陣は青いはずなのだ。その赤い魔法陣から、赤黒い腕が伸びてきた。人間の腕のような形状をしているが、手のひらには口がついていた。腕が空を切り裂き、バートリーに迫ってくる。
「バートリーさま!」
フーリンがバートリーをかばって前に出た。
「フー!」
フーリンの背中が、大きく食いちぎられた。バートリーはすぐにフーリンを抱えて、後ろに下がることにした。魔法戦士たちがバートリーとフーリンをかばおうと、その腕を切り払う。しかし、魔神の発したその赤黒い腕は、切れば切るほどに増殖してゆき、しかも、先端についた口で肉を食いちぎってくる。
「第一作戦失敗」
と、《通話》で後方の部隊に伝えた。
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