《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第8-18話「シュララゼィラの領主」
王国領――シュララゼィラ。
すこし前までは、暗黒組合にむしばまれており、スラム街同然の都市だったそうだが、領主が交代したことをキッカケに、息を吹き返したのだという。
たしかに、それなりに商人の人通りもあり、もとがスラム街だったとは思えなかった。ヨナとともに、その都市の城門棟をくぐったとき、豪華なキャリッジがケネスの事を迎えに来た。
ヨナが馬からおりて、頭を下げていた。ケネスもそれにならうことにした。周囲には騎士もたくさんいる。王国は、帝国とは違って、封建国家の色が強い。そのため、ここにいる騎士たちも、王国騎士というよりかは、ここの領主に仕えている騎士なのだろう。だが、つい最近まで戦争をしていた敵国の騎士であることに変わりはなく、その騎士に囲まれていることに、ケネスは若干の緊張をおぼえた。
「大丈夫なんだろうな」
と、尋ねると、
「心配いらない。ここの領主はケネスの味方だよ。ほら、彼女がここの領主」
と、ヨナが教えてくれた。
キャリッジから降りてきた、その領主とやらに目を向けた。その顔を見て、ケネスは「げっ」と声をあげてしまった。
「久しぶりの再会なのに、そんな声をあげなくても良いじゃない!」
白銀の髪を長く伸ばしており、銀色の瞳をかがやかせている。ヨナとの再会にも久闊を埋める感動があったけれど、目の前の女性にも懐かしさを覚えた。ミファ・フリードリッヒだ。
「何してんだ。お前?」
「なにって、私がここの領主なのよ」
「ミファが?」
「ええ。そうよ。出世したでしょう」
ふふん、とミファは得意気に胸を張っている。
詳しく教えてくれた。
ミファはここ数年で、暗黒組合の扱っている魔力覚醒剤を片っ端から摘発していったらしく、その功績を認められて、ここの土地を任されることになったそうだ。
もともと荒廃したスラム街だったところを、ミファが更生させたということだ。今では《王国の猟犬》などと呼ばれているらしい。
「厳密には父の領地なんだけどね。私がその一部を預かることになったのよ」
「なるほどね。もと薬売りとしての鼻が、売人どもを嗅ぎつけるわけか」
「そういうこと。ケネスには世話になったわ」
「もう薬は、やってないんだろうな?」
「もちろん」
ミファは大きくうなずいた。
訊くまでもないことだった。かつてのミファには、貴族から気品を削ぎ落したような薄幸さがあった。けれど今は、頬もふっくらとしているし、充実した光に満ちていた。
「ちゃんと借りは返したわよ。ヴィルザハード城で、あんたが帝国軍に捕まったとわかるやいなや、ヨナに助けに行かせたのは私なんだから。感謝しなさい」
とミファがケネスの鼻先に指をつきつけてくる。
この高慢な態度は、相変わらずのようだ。
ケネスは苦笑した。
「ヨナはミファに仕えてるのか?」
「彼女はもともと王都本隊の諜報部員よ。ケネスの助けになってくれそうな人を見つけて、私が遣わせたの。これであのときの借りが返せたかは、わからないけど」
「助かったよ」
今まで出会ってきた人たちとの縁が、ここに来て花を開いたということだろう。
「ついて来なさい。主役が来たんだから、みんなで話あわなくちゃね」
ミファはケネスの手をとると、キャリッジのなかに連れ込んだ。
すこし前までは、暗黒組合にむしばまれており、スラム街同然の都市だったそうだが、領主が交代したことをキッカケに、息を吹き返したのだという。
たしかに、それなりに商人の人通りもあり、もとがスラム街だったとは思えなかった。ヨナとともに、その都市の城門棟をくぐったとき、豪華なキャリッジがケネスの事を迎えに来た。
ヨナが馬からおりて、頭を下げていた。ケネスもそれにならうことにした。周囲には騎士もたくさんいる。王国は、帝国とは違って、封建国家の色が強い。そのため、ここにいる騎士たちも、王国騎士というよりかは、ここの領主に仕えている騎士なのだろう。だが、つい最近まで戦争をしていた敵国の騎士であることに変わりはなく、その騎士に囲まれていることに、ケネスは若干の緊張をおぼえた。
「大丈夫なんだろうな」
と、尋ねると、
「心配いらない。ここの領主はケネスの味方だよ。ほら、彼女がここの領主」
と、ヨナが教えてくれた。
キャリッジから降りてきた、その領主とやらに目を向けた。その顔を見て、ケネスは「げっ」と声をあげてしまった。
「久しぶりの再会なのに、そんな声をあげなくても良いじゃない!」
白銀の髪を長く伸ばしており、銀色の瞳をかがやかせている。ヨナとの再会にも久闊を埋める感動があったけれど、目の前の女性にも懐かしさを覚えた。ミファ・フリードリッヒだ。
「何してんだ。お前?」
「なにって、私がここの領主なのよ」
「ミファが?」
「ええ。そうよ。出世したでしょう」
ふふん、とミファは得意気に胸を張っている。
詳しく教えてくれた。
ミファはここ数年で、暗黒組合の扱っている魔力覚醒剤を片っ端から摘発していったらしく、その功績を認められて、ここの土地を任されることになったそうだ。
もともと荒廃したスラム街だったところを、ミファが更生させたということだ。今では《王国の猟犬》などと呼ばれているらしい。
「厳密には父の領地なんだけどね。私がその一部を預かることになったのよ」
「なるほどね。もと薬売りとしての鼻が、売人どもを嗅ぎつけるわけか」
「そういうこと。ケネスには世話になったわ」
「もう薬は、やってないんだろうな?」
「もちろん」
ミファは大きくうなずいた。
訊くまでもないことだった。かつてのミファには、貴族から気品を削ぎ落したような薄幸さがあった。けれど今は、頬もふっくらとしているし、充実した光に満ちていた。
「ちゃんと借りは返したわよ。ヴィルザハード城で、あんたが帝国軍に捕まったとわかるやいなや、ヨナに助けに行かせたのは私なんだから。感謝しなさい」
とミファがケネスの鼻先に指をつきつけてくる。
この高慢な態度は、相変わらずのようだ。
ケネスは苦笑した。
「ヨナはミファに仕えてるのか?」
「彼女はもともと王都本隊の諜報部員よ。ケネスの助けになってくれそうな人を見つけて、私が遣わせたの。これであのときの借りが返せたかは、わからないけど」
「助かったよ」
今まで出会ってきた人たちとの縁が、ここに来て花を開いたということだろう。
「ついて来なさい。主役が来たんだから、みんなで話あわなくちゃね」
ミファはケネスの手をとると、キャリッジのなかに連れ込んだ。
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