《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第7-9話「尋問 Ⅰ」
目が覚める。部屋はそのまま。ケネスは木造の四脚イスに座ったままだった。しかし、肘掛に腕が拘束されている。イスの足にケネスの足が縄でくくりつけられていた。腕にはしかも、鉄の輪のようなものがハめられており、魔法陣を展開することが出来なかった。
朧気だったケネスの意識は、危機を認識していっきに覚醒した。勢いよく面をあげると、目の前には仮面をつけた女性が座っていた。その仮面は以前、グラトンとその刺客たちがつけていたものと同じデザインだった。
「ご安心ください。ただ拘束させていただいただけです。魔法陣を使えぬように、魔法封じの腕輪を付けさせてもらいましたが」
仮面を脱ぐ。
そこに現れたのは、バートリーの顔だった。
「まだチョット意識がハッキリしないんですけど、オレは捕まってるみたいですね」
「はい」
「で、その仮面は?」
「これは私の部下たちにつけさせたものです」
「じゃあ、今までオレを襲ってきていた刺客は、バートリーさんの指示で動いていたわけですか」
「はい。申し訳ありません」
この状況で謝罪されることに、違和感をおぼえた。
「帝都の内部に黒幕がいるとはわかってました。グラトン先生を動かしたのが、バートリーさんなら納得もいきます」
もともと帝国軍人だったグラトンを動かせるのは、帝国の重要な人物だとは予想していた。まさか、バートリーが、黒幕だったとは考えていなかったが。
「学園祭のときに、『アクロデリアの香水』を使ったのも私です。そしてあなたの部屋から『アースアースの鉱石』を取り戻したのも、私の部下がやったことです」
バートリーは淡々と述べる。
感情の起伏が見られないその声からは、考えていることが読み取りにくい。
「なぜ、そんなことを?」
「『アクロデリアの香水』はモッタイナイことをしました。ですが、どうしても確かめたいことがありましたので」
「確かめたいこと?」
「ケネスさまの動向です」
「……」
なるほど。
あらかた考えていた通りだ。帝都にあった『アースアースの鉱石』と『アクロデリアの香水』が持ち出されたとガルシアが言っていた。持ち出したのは、バートリーだったというわけだ。
その黒幕であるバートリーに誘いだされて、まんまと眠らされる事態に陥った次第だ。
「どうしてオレを殺そうとしたんです? 厭味な言い方になってしまいますが、オレはバートリーさんに感謝こそされても、憎まれるようなことをした覚えはありません」
バートリーは目を伏せた。
「もちろん。私はケネスさまに感謝しています。王国の捕虜となって、助け出されたことは今でも覚えています」
「だったら……」
「魔神ヴィルザハード」
と、バートリーは伏せていた目をあげて、ケネスの目を見つめてきた。ケネスの心を覗きこんでやろうとしているかのようだった。
「私は、ケネスさまが魔神ヴィルザハードと、なんらかの関係があるのではないか……と睨んでいます」
「まさか。なんの関係もありません」
と、今度はケネスが目をそらす番だった。そらした先。帝都の景観を見下ろせる窓辺に、ヴィルザが腰かけている。ケネスにだけ見えている存在。
「私はケネスさまに感謝しています。出来れば拷問や自白剤は使いたくありません」
「オレを殺そうとしたのに?」
「殺すつもりでかからねば、あなたを押さえつけることは出来ないでしょう。実際、私の送り込んだ刺客は返り討ちにあっている。それに命まで取るつもりはありませんでした」
ケネスは視線をバートリーに戻した。
「で、オレに何を自白しろと?」
「魔神ヴィルザハードの関係です」
バートリーは席から立ち上がると、ケネスの横に座りなおした。
「なんの関係もありませんよ」
「証拠はあがっているのです」
「どんな証拠です?」
「まず1つ。ケネスさまは《神の遺物》を壊して回っている。『マディシャンの杖』『カヌスのウロコ』その2つを壊した疑惑があります」
バートリーが詰め寄ってくる。
顔が、近い。
「疑惑が証拠にはならないでしょう」
と、ケネスはその目を見返した。
すこしでも動揺すれば、ウソを見抜かれるような気がする。魔神ヴィルザハードが見えている。これはゼッタイに言ってはならないことだ。ケネスが殺さてもオカシクはない。見えてはいけない存在なのだから。
「しかし、あなたは『アースアースの鉱石』を隠し持っていた。グラトンから奪ったものでしょう」
「いずれ返そうとは思ってましたよ」
「『アクロデリアの香水』も破壊した」
「学院をメチャクチャにしていた香水ですよ。破壊することの、何がオカシイんですか?」
シラを切る。
それしかない。
あくまでシラを切り続ける。
ケネスの意思とはウラハラに、ゼッタイに訊きだしてやろうとするかのごとく、バートリーが詰め寄ってくる。
「誰か人を呼ぶとか、先生を呼ぶといった方法もあったはずです。ケネスさまは、しかし自分で香水を処理された」
「なににせよ、それだけでオレが魔神ヴィルザハードと関係があるというのは、強引すぎるでしょう」
「なら、証拠の2つ目です。ケネスさまが悪系統の魔法を使うところを、私は見ている。ソルト・ドラグニルとの決戦のとき。たしかに私は見た。私だけではない。フーリンも見ている。あれは魔神にのみ許された魔法です」
「偶然使えた。それだけです。魔神ヴィルザハードとは関係ありませんよ」
視線が衝突する。
しばしの沈黙。
バートリーは大きくため息を吐いた。
「では3つ目の証拠です。シュネイの村についてです」
「オレの故郷ですか」
あまり思い出したくはない出来事だ。
「ソルトの部隊がシュネイの村に押し寄せてきたとき、ケネスさまはソルトの部隊をたった1人で撃退されたでしょう」
「ええ」
そのときのことは、あまり覚えていないのだ。
ヴィルザにカラダを乗っ取られそうになっていたのだ。
「あのときケネスさまは、故郷の村人も敵も、構わず殺されたそうですね。まるで魔神のような暴れ具合だったと聞いております。その勢いで、幼馴染のロール・ステラという女性まで殺害された――とか?」
「どこでそれを聞いたんです?」
ケネスとロールの関係や、あの時のことは、チョット調べた程度で判明するものではない。シュネイの村人は、全滅したのだ。あの悲劇は、ケネスの胸の内にだけ秘められたもののはずだ。
「証人がいるのです」
バートリーはそう言って、手を叩いた。トビラが開く。入ってきた男性を見て、ケネスは息を呑んだ。
ロビン・クレイ。
もう一人の、ケネスの幼馴染だ。
朧気だったケネスの意識は、危機を認識していっきに覚醒した。勢いよく面をあげると、目の前には仮面をつけた女性が座っていた。その仮面は以前、グラトンとその刺客たちがつけていたものと同じデザインだった。
「ご安心ください。ただ拘束させていただいただけです。魔法陣を使えぬように、魔法封じの腕輪を付けさせてもらいましたが」
仮面を脱ぐ。
そこに現れたのは、バートリーの顔だった。
「まだチョット意識がハッキリしないんですけど、オレは捕まってるみたいですね」
「はい」
「で、その仮面は?」
「これは私の部下たちにつけさせたものです」
「じゃあ、今までオレを襲ってきていた刺客は、バートリーさんの指示で動いていたわけですか」
「はい。申し訳ありません」
この状況で謝罪されることに、違和感をおぼえた。
「帝都の内部に黒幕がいるとはわかってました。グラトン先生を動かしたのが、バートリーさんなら納得もいきます」
もともと帝国軍人だったグラトンを動かせるのは、帝国の重要な人物だとは予想していた。まさか、バートリーが、黒幕だったとは考えていなかったが。
「学園祭のときに、『アクロデリアの香水』を使ったのも私です。そしてあなたの部屋から『アースアースの鉱石』を取り戻したのも、私の部下がやったことです」
バートリーは淡々と述べる。
感情の起伏が見られないその声からは、考えていることが読み取りにくい。
「なぜ、そんなことを?」
「『アクロデリアの香水』はモッタイナイことをしました。ですが、どうしても確かめたいことがありましたので」
「確かめたいこと?」
「ケネスさまの動向です」
「……」
なるほど。
あらかた考えていた通りだ。帝都にあった『アースアースの鉱石』と『アクロデリアの香水』が持ち出されたとガルシアが言っていた。持ち出したのは、バートリーだったというわけだ。
その黒幕であるバートリーに誘いだされて、まんまと眠らされる事態に陥った次第だ。
「どうしてオレを殺そうとしたんです? 厭味な言い方になってしまいますが、オレはバートリーさんに感謝こそされても、憎まれるようなことをした覚えはありません」
バートリーは目を伏せた。
「もちろん。私はケネスさまに感謝しています。王国の捕虜となって、助け出されたことは今でも覚えています」
「だったら……」
「魔神ヴィルザハード」
と、バートリーは伏せていた目をあげて、ケネスの目を見つめてきた。ケネスの心を覗きこんでやろうとしているかのようだった。
「私は、ケネスさまが魔神ヴィルザハードと、なんらかの関係があるのではないか……と睨んでいます」
「まさか。なんの関係もありません」
と、今度はケネスが目をそらす番だった。そらした先。帝都の景観を見下ろせる窓辺に、ヴィルザが腰かけている。ケネスにだけ見えている存在。
「私はケネスさまに感謝しています。出来れば拷問や自白剤は使いたくありません」
「オレを殺そうとしたのに?」
「殺すつもりでかからねば、あなたを押さえつけることは出来ないでしょう。実際、私の送り込んだ刺客は返り討ちにあっている。それに命まで取るつもりはありませんでした」
ケネスは視線をバートリーに戻した。
「で、オレに何を自白しろと?」
「魔神ヴィルザハードの関係です」
バートリーは席から立ち上がると、ケネスの横に座りなおした。
「なんの関係もありませんよ」
「証拠はあがっているのです」
「どんな証拠です?」
「まず1つ。ケネスさまは《神の遺物》を壊して回っている。『マディシャンの杖』『カヌスのウロコ』その2つを壊した疑惑があります」
バートリーが詰め寄ってくる。
顔が、近い。
「疑惑が証拠にはならないでしょう」
と、ケネスはその目を見返した。
すこしでも動揺すれば、ウソを見抜かれるような気がする。魔神ヴィルザハードが見えている。これはゼッタイに言ってはならないことだ。ケネスが殺さてもオカシクはない。見えてはいけない存在なのだから。
「しかし、あなたは『アースアースの鉱石』を隠し持っていた。グラトンから奪ったものでしょう」
「いずれ返そうとは思ってましたよ」
「『アクロデリアの香水』も破壊した」
「学院をメチャクチャにしていた香水ですよ。破壊することの、何がオカシイんですか?」
シラを切る。
それしかない。
あくまでシラを切り続ける。
ケネスの意思とはウラハラに、ゼッタイに訊きだしてやろうとするかのごとく、バートリーが詰め寄ってくる。
「誰か人を呼ぶとか、先生を呼ぶといった方法もあったはずです。ケネスさまは、しかし自分で香水を処理された」
「なににせよ、それだけでオレが魔神ヴィルザハードと関係があるというのは、強引すぎるでしょう」
「なら、証拠の2つ目です。ケネスさまが悪系統の魔法を使うところを、私は見ている。ソルト・ドラグニルとの決戦のとき。たしかに私は見た。私だけではない。フーリンも見ている。あれは魔神にのみ許された魔法です」
「偶然使えた。それだけです。魔神ヴィルザハードとは関係ありませんよ」
視線が衝突する。
しばしの沈黙。
バートリーは大きくため息を吐いた。
「では3つ目の証拠です。シュネイの村についてです」
「オレの故郷ですか」
あまり思い出したくはない出来事だ。
「ソルトの部隊がシュネイの村に押し寄せてきたとき、ケネスさまはソルトの部隊をたった1人で撃退されたでしょう」
「ええ」
そのときのことは、あまり覚えていないのだ。
ヴィルザにカラダを乗っ取られそうになっていたのだ。
「あのときケネスさまは、故郷の村人も敵も、構わず殺されたそうですね。まるで魔神のような暴れ具合だったと聞いております。その勢いで、幼馴染のロール・ステラという女性まで殺害された――とか?」
「どこでそれを聞いたんです?」
ケネスとロールの関係や、あの時のことは、チョット調べた程度で判明するものではない。シュネイの村人は、全滅したのだ。あの悲劇は、ケネスの胸の内にだけ秘められたもののはずだ。
「証人がいるのです」
バートリーはそう言って、手を叩いた。トビラが開く。入ってきた男性を見て、ケネスは息を呑んだ。
ロビン・クレイ。
もう一人の、ケネスの幼馴染だ。
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