《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第7-3話「思い出の場所」

 戻ってきた。



 南中の空に輝く太陽。波打つワダツミのような緑の丘陵。多くの貴族や商人が行き交う、大きな街道。その街道の脇に生えている白いポポコの群生。



 デラル帝国帝都の城門棟が正面に見えている。



 かつてヴィルザと出会った場所。まるであのときの時間が再現されているかのようだった。



「おおっ。懐かしいのぉ。ここじゃ、ここじゃ。ここでケネスが私を見つけてくれたんじゃったな」
 と、ヴィルザはポポコの群生に跳びこんだ。花たちはヴィルザの気配に気づかず揺れることもない。



「そうだな。オレの物語は、ここからはじまったんだ」



 なかなか感慨深いものがある。



 場所は同じでも、時間はやはり経過している。あんなにも小さかったケネスは、上下に引っ張られるようにして背が伸びたし、背負いたくないものまで、背負うことになった。口にくわえている煙草も、それのひとつだ。



 この場所と同じく何も変わっていないのは、ヴィルザの存在だ。ヴィルザはあの時から、時間が進んでいない。ケネスは前へ前へ進んでいるのに、ヴィルザはずっと変わらず、あの時のままだ。それは不思議とケネスの胸をチクリと痛ませた。



「ケネス。いまいくつだ?」
「19歳」
「もう大人と言っても過言ではないな。かつては少年だったのにな」



「ヴィルザに頼りきりだった帝都の闘技大会。今度は、オレのチカラで出場するからな。今度は、みんなにオレのチカラを認めてもらうんだ」



「わかっておる。なら私は観客席で見守っておくとしようかのぉ」



「ありがとうな」



「な、なんじゃ、藪から棒に」
 とヴィルザが狼狽えたように言う。



「オレをここまで連れて来てくれたのは、ヴィルザだからな。それは感謝してるんだよ」



 マジメな雰囲気に照れ臭くなったのか、ヴィルザはわざとらしく豪快に笑った。



「はーっはははッ。感謝せよ。私がなければ、ケネスはただの一介の冒険者として、なんの変哲もない人生を歩んでおったんじゃからな」



「行こうぜ」
 ケネスは帝都の城門棟へと続く、人の列に並ぶことにした。

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