《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第7-2話「卒業 Ⅱ」
ブルンダは校舎裏に移動した。校舎裏は男子寮との狭間になっていて、日が陰っている。低木が植わっており、庭園の様相を呈していた。庭園の中には、床が石畳になっている場所がある。生徒たちはよくここで、魔法の練習をしていた。ブルンダはその上に立つと、神妙な面持ちで振りかえった。
「ケネスくん」
「はい?」
「魔法を極めることは出来たかね」
「いえ……。極めるとまでは」
「しかし、君の魔力の保有量は尋常ではない。魔法の神髄をこのワシに見せてくれると期待していた。今、ここで学んだ成果を見せてくれ」
「今、ですか?」
「ワシは若いころから、魔法の研究に明け暮れていた。他は何をやってもダメでね。ワシには魔法しかないと思っていた。しかし、私は魔術の神マディシャンに好かれてはいなかった。世間にはワシより優れた魔術師など、いくらでもいる。一生を費やしてきたのに、ワシは凡人でしかなかった。じゃから、自分で究めるのは諦めた。かわりにワシに魔法の神髄を見せてくれる者を探しはじめた」
ブルンダは定規で刈りそろえられたような白ヒゲをナでつけて、微笑んだ。
「あのガルシア・スプラウドでさえも、至らなかった。その神髄を、君なら見せてくれると思うたのだ。今ここで、3年間、学んだ成果を見せてはくれぬか?」
ブルンダは懇願するように言った。
メガネの奥にある狡猾そうな目つきが、不安と期待に揺れているのが見て取れた。
(あぁ……)
と、ケネスは胸裏で嘆息した。
この人はきっと、魔法という概念に、恋をしてしまっているのだ。残念ながら学院長を満足させるには、ケネスでは不足のようだった。
「ヴィルザ」
「私が魔法を使っても良いのか?」
「オレじゃ、この人を満足させられない。この人が見たがってるのは、オレのチカラじゃない。魔法の神髄だ」
「神髄か。そりゃ人にたどり着けるものではありゃせんな。かつて魔法は、神々のチカラだったんじゃから」
「だから、ブルンダ学院長が満足するような魔法を、見せてやってくれないか?」
「この私が、魔法を使うなんて、久しぶりのことじゃな。張り切ってやらせてもらうとしよう」
「殺したりはするなよ?」
「わかっておる」
ケネスは魔法陣を展開した。ヴィルザの放つ魔法に、ブルンダは打ち震えていた。ずっと探し求めていた恋人を見つけたかのように、その場で泣き崩れていた。不思議なことに、このときのヴィルザの魔法を、ケネスは思い出すことができなかった。
何か、とてつもなくスゴイ魔法が発せられたとは思うのだが、どうしても思い出すことが出来ないのだった。歓喜にふるえるブルンダに別れを告げて、ケネスは学院を後にした。
ちなみに転移石はトテモ貴重なものなので、卒業と同時に学院に返すことになっている。だから、今はもう持ってはいない。
学生のケネス・カートルドは幕を閉じる。
これからは、ヴィルザの恋人としてのケネスの物語が続いているのだ。隣に並んで歩くヴィルザを見つめる。
この魔神と打ち解けるまで、ずいぶん時間をかけてしまった気がする。でも、学生生活の3年間は、長いようでアッという間の3年間だった。
「ヴィルザ」
「うぬ?」
「オレは、強くなったか?」
ヴィルザは返事をすることなく、ケネスの手をにぎってきた。ケネスはヴィルザの手を優しく握り返した。
「ケネスくん」
「はい?」
「魔法を極めることは出来たかね」
「いえ……。極めるとまでは」
「しかし、君の魔力の保有量は尋常ではない。魔法の神髄をこのワシに見せてくれると期待していた。今、ここで学んだ成果を見せてくれ」
「今、ですか?」
「ワシは若いころから、魔法の研究に明け暮れていた。他は何をやってもダメでね。ワシには魔法しかないと思っていた。しかし、私は魔術の神マディシャンに好かれてはいなかった。世間にはワシより優れた魔術師など、いくらでもいる。一生を費やしてきたのに、ワシは凡人でしかなかった。じゃから、自分で究めるのは諦めた。かわりにワシに魔法の神髄を見せてくれる者を探しはじめた」
ブルンダは定規で刈りそろえられたような白ヒゲをナでつけて、微笑んだ。
「あのガルシア・スプラウドでさえも、至らなかった。その神髄を、君なら見せてくれると思うたのだ。今ここで、3年間、学んだ成果を見せてはくれぬか?」
ブルンダは懇願するように言った。
メガネの奥にある狡猾そうな目つきが、不安と期待に揺れているのが見て取れた。
(あぁ……)
と、ケネスは胸裏で嘆息した。
この人はきっと、魔法という概念に、恋をしてしまっているのだ。残念ながら学院長を満足させるには、ケネスでは不足のようだった。
「ヴィルザ」
「私が魔法を使っても良いのか?」
「オレじゃ、この人を満足させられない。この人が見たがってるのは、オレのチカラじゃない。魔法の神髄だ」
「神髄か。そりゃ人にたどり着けるものではありゃせんな。かつて魔法は、神々のチカラだったんじゃから」
「だから、ブルンダ学院長が満足するような魔法を、見せてやってくれないか?」
「この私が、魔法を使うなんて、久しぶりのことじゃな。張り切ってやらせてもらうとしよう」
「殺したりはするなよ?」
「わかっておる」
ケネスは魔法陣を展開した。ヴィルザの放つ魔法に、ブルンダは打ち震えていた。ずっと探し求めていた恋人を見つけたかのように、その場で泣き崩れていた。不思議なことに、このときのヴィルザの魔法を、ケネスは思い出すことができなかった。
何か、とてつもなくスゴイ魔法が発せられたとは思うのだが、どうしても思い出すことが出来ないのだった。歓喜にふるえるブルンダに別れを告げて、ケネスは学院を後にした。
ちなみに転移石はトテモ貴重なものなので、卒業と同時に学院に返すことになっている。だから、今はもう持ってはいない。
学生のケネス・カートルドは幕を閉じる。
これからは、ヴィルザの恋人としてのケネスの物語が続いているのだ。隣に並んで歩くヴィルザを見つめる。
この魔神と打ち解けるまで、ずいぶん時間をかけてしまった気がする。でも、学生生活の3年間は、長いようでアッという間の3年間だった。
「ヴィルザ」
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ヴィルザは返事をすることなく、ケネスの手をにぎってきた。ケネスはヴィルザの手を優しく握り返した。
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