《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第7-1話「卒業 Ⅰ」

 まだわずかに冷気をふくんだ春先の風に、芽吹いたばかりの花々が、ほろりほろりとわずかな花弁を散らしてゆく。緑の生えそろったハーディアル魔術学院の校庭に、花弁が色を添える。その校庭には、黒い外套と黒いトンガリ帽子を着用した生徒たちが並んでいる。ケネスもその一列に加わった。



 学院長のアド・ブルンダが生徒たちの名前を読み上げていく。名前を呼ばれた生徒はアド・ブルンダの握手を貰いうけて、列に戻ってくる。



「ケネス・カートルド」
 と、名を呼ばれた。
「はい」
 と、ケネスはブルンダの前に進み出た。



「君のことはよく覚えているよ。優秀な生徒だった。はじめて見たときは、神童かと思ったほどだ。そしてワシの目に狂いはなかった。《帝国の劫火》と呼ばれ、帝国12魔術師に加わることになった。そして見事、この学院を首席で卒業。そのたゆまぬ努力に、おめでとう」



 ブルンダはそう言うと、ケネスの手を強くにぎってきた。はじめてブルンダに会ったとき、ケネスはまだ《ライト》の魔法しか使えなかった。我ながら、なかなかの進歩だと思っている。ケネスの心のなかには、階段が続いていた。ずっと先に、ガルシアやバートリーがいた。そしてヴィルザがいた。今、ようやく、この足で目指してきた人たちの足元ぐらいには辿りつけたような実感を覚えていた。



「3年間。ありがとうございました。御世話になりました」
 と、ケネスは一礼して、列に戻った。



 卒業式が終わると、生徒たちの緊張がほどける。友達と急にしゃべりだす者がいれば、涙を流しはじめる者もいた。



「よっ。首席」
 と、ロレンスがケネスの肩を軽くたたいてきた。



「まだ根に持ってるのかよ」



「持ってないよ。オレはケネスには勝てない。それはもうわかってた。数学と歴史学以外ではな」



「わ、悪かったな」



 数学と歴史学では、単位を落としかけていたのだが、ギリギリの及第点だった。その分、魔術実践学や魔術学の成績が良かったので、総合的に見ればケネスのほうが成績は良かった。



「ただし今だけだからな。オレももっと強くなる。魔法に磨きをかけてやる」



「わかってる」



 ケネスもロレンスも2人とも、得意な系統の魔法が「火」だ。だからお互い友人であり、ライバル視もしていた。



「帝都の大会。出るんだろ?」



「闘技大会だろ。出るよ。もうエントリーも済ませてある」



 3年前に行われた闘技大会が、もう一度行われようとしていた。かつてヴィルザのチカラに頼りきって出場した大会。今度は、自分自身のチカラで出場すると決めていた。その大会で実力を示せ――とガルシアからも言われている。



「貴賓室で見てるんだ。オレの姉さん」



 ロレンスは哲学者のように難しい顔をして呟いた。ロレンスにとっても、大事な大会になりそうだ。姉にチカラを見せつけて。姉に認めてもらいたい。ロレンスはその一心で、魔法を鍛えてきたのだ。



「ガルシアさんは、なんていうか、チョット変わった人だよな」



「姉さんのこと、知ってるのか?」



「まぁ、チョットだけ。ただひたすらチカラを求めてる。チカラ以外のものは何にも求めてないような人だよな」



 ガルシアと知り合いであることは、ロレンスにはあまり話していない。実の弟は無視されているのに、ケネスにばかり目をかけてもらっているなんて話すのは、あまりに酷だ。



「姉さんは、昔からそうなんだ。強いものにしか興味がない。本人が強いからかもしんないけど」



「まぁ、お互い頑張ろうぜ」
「オレたち、大会で当たるかもしれないな」
「その時は、手加減なしってことで」



「もちろんだ。じゃあオレは行くからな。帝都で会おうぜ」
 と、ロレンスはハーディアル魔術学院の門をくぐって行った。1人、2人と門を抜けてゆく。ともに学んだ学徒たちが、次から次へと消えて行く。ケネスは呆然とそれを見つめていた。物悲しい思いで、その様子を見ていた。これは終わりではない。あの門は、はじまりの門なのだ。



 ケネスにもまだやるべきことが、残されている。まずは帝都闘技大会で結果を残して、帝国軍に入隊すること。



 そして――。



 ケネスの隣に立っている紅き恋人を見つめる。魔神ヴィルザハード。彼女の封印があと5つ残されている。恋人の封印を解くこと。それがケネスの人生を費やす使命だ。



 感慨にふけっていると、
「すこし、良いかね」
 と、ブルンダが声をかけてきた。

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