《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第6-10話「学院祭 Ⅹ」

「ホントウにチカラを求める痴女じゃな。あの女、男との交合は物凄く激しそうじゃな。チョット相手をしてやりたくなったわ」



 ヴィルザはケネスの背中にへばりついて、愉快そうにそう言う。ケネスは校舎のなかを走り回って、ようやっとガルシアをまいたところだ。



「でも、ガルシアさんはやっぱり凄いな。ヴィルザの魔力を含んだ、ファラリスの雄牛を、魔法もなしに受けてたし」



「あれはドMじゃな」
「変な言い方するなよ」



「いいや。間違いない。あれはドMだ。でも、自分を虐げてくれる存在がいないから、鬱屈しておるんじゃろう」



 ちなみに――とヴィルザは続けた。



「私はドSじゃからな。ベッドに入るときは、ケネスが押し倒される側じゃ」



 ヴィルザがドSなのは、拷問好きなことからも想像はできていた。



「変なこと言わなくて良いんだよ」



 ヴィルザに馬乗りにされるところを想像して、ケネスはチリッと胸の奥が刺激された。まるで媚薬が回ってきたみたいだ。



「久しぶりに、照れておるな」



「そんなんじゃない。それより、その媚薬を探さなくちゃな。ガルシアさんも、そのせいでオカシクなってるんだし」



「私もさっきから腹の奥が熱くなっておる。しかも媚薬の効果が高まってきておる気がする」



「どこにあるか、わからないか?」



 窓から校庭を見下ろす、生徒たちも淫らに絡み合っている。もし、テイラの薬がなければ、オレもああなっていたのかと思うと、ゾッとする。肉林の騒ぎから、ケネスは目をそらした。



「探し物を見つけるのは、ケネスの得意分野であろうが。まるで私のために生まれてきたようなスキルがあろう」



「そう言えば、そうだったな」



 ヴィルザのために生まれてきたという、台詞には不服をおぼえたが、突っ込まないでおいた。



《可視化》



「うわっ」
 思わず声をあげた。



「どうした?」
「桃色のケムリが……」



 廊下中にたちこめていた。これがアクロデリアの香水の正体なのだろう。校庭のほうにも蔓延している。桃色のケムリを見ることによって、逆に視界が悪くなるぐらいだった。



「そのケムリがどこから流れておるのか、たどれば、そこにアクロデリアの香水があるはずじゃ」



「わかった」



「しかし、待て」
 と、ヴィルザがケネスの背中から離れると、正面に回りこんできた。その姿を見てギョッとした。ヴィルザは普段、ブリオーを着ている。そのブリオーが大きくはだけていた。鎖骨があらわになり、つつましい――谷間と言うには浅すぎる、胸元がのぞいていた。



「な、なにしてるんだ……」



「ほれ、私は今、媚薬でやられておる。私を手籠めにするなら、今がチャンスじゃぞ」



「フザケタことヌかしてるんじゃない」



 ヴィルザの表情が険しくなる。
「フザケタことじゃと?」
 その表情には冗談とは思えない、鬼気迫るものがあったので、ケネスは狼狽えた。



「な、なんだよ」



「私のカラダが、フザケタこととヌかしよるか。私みたいなババァのことは、抱けんと言うのか」



「そ、そんなんじゃないけど……」



 ヴィルザがさらにブリオーをはだける。丸い肩があらわになる。白くて眩しい。つつましい胸元は、妖艶とはまた違うけれど、男を吸い寄せる魔力を発しているかのようだった。ヴィルザはフワッと浮かび上がると、ケネスの肩に頭を置いて、耳元でささやいてきた。



「私のカラダを、満足させてくれぬか?」



 媚薬のせいなのか、ヴィルザの全身からは桃色の闘気とでも言うべき、異様な色気がぶわっと立ち上っていて、あわやその色気に呑み込まれるところだった。ケネスはヴィルザのことを抱きしめた。そうすると、ヴィルザのカラダが弛緩したように柔らかくなった。気張っていたチカラが、不意に抜けた気がした。



「今は、アクロデリアの香水を壊さなくちゃいけないだろ」



「うむ」
「壊して、落ちついたら、そしたら……」



 心臓が緊張にふるえる。カラダと心が、いまだ直面したことのない感情に強張ってしまう。それを無視して、ケネスは意を決して続けた。



「そしたら、相手をしてやる」



「くくくくっ」
 と、ヴィルザはノドを鳴らして笑った。




「わ、笑うなよ」
「何が相手をしてやるじゃ。このスケベ」
「さ、誘ってきたのはそっちだろ」



 狡い。
 媚薬にかかったフリをして、誘惑してくるのは反則だ。



「まあまあ、と言ったところじゃな。そうと決まれば、さっさとアクロデリアの香水を壊さんとな。相手、してくれるんじゃろう」
 と、ヴィルザは艶然と微笑んだ。



 ケネスは赤面を覚えていた。
 異性がらみのことで、顔に熱がのぼってくるのは久しいことだった。けれど、ヴィルザはそのことを揶揄しては来なかった。ケネスは黙って、学院に充満している桃色のケムリの後をつけた。

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