《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第6-9話「学院祭  Ⅸ」

「見つけたぞ。ケネス・カートルド!」



『アクロデリアの香水』を探して、校舎の廊下を歩いていると、そう怒鳴りかかられた。刺客かと思った。違う。ガルシアだ。



「ガルシアさん!」
 どうも様子がオカシイ。
 頬を上気させており、目がらんらんと輝いている。しかも、どういうわけか魔法陣を展開している。



「火系A級基礎魔法。地獄の劫火ヘル・フレイム



 黒い炎が廊下いっぱいに広がって、虫の大群のように壁をつたってケネスに襲いかかってきた。



「火系A級基礎魔法。地獄の劫火ヘル・フレイム
 と、ケネスも同じ魔法で返した。



 火と火が衝突して、窓が盛大に割れた。ケネスとガルシアの間に、ガラス片が飛散する。ガラス片の向こうに肩で息をするガルシアの姿が映っていた。



「なにするんですか!」
 もしやケネスを殺す刺客のひとりとして現れたのかと思ったのだが、どうも、そういう様子ではない。



「もう待ってられんのだ」
「え?」



「さあ。見せてくれ。君の実力。ケネス・カートルドよ。そのチカラの神髄を私に見せてくれ! 約束であろう。君の実力を、君の魔法を私にブツけてくれたまえ」



 たしかに3年待ってくれとは言った。
 けれど、こんなに突発的に試験がはじまるとは思っていなかった。だいたいガルシアの様子は正気には見えない。



「まるでチカラに魅了された痴女のようじゃな。あれも媚薬に当てられての姿であろう。あの女が求めているのは、私だ。私が相手をしてやる」



「いや。オレにやらせてくれ」
「ほお」



 わざわざ3年待ってもらったのは、ヴィルザを見てもらうためではない。本来のケネスを見てもらうためだったのだ。



「行くぞ。私の可愛いケネス」
 と、ガルシアが吠えた。



「風系上位魔法。蔦の呪いカース・オブ・アイビー



 壁から蔦が生えている。



「火系B級基礎魔法《火炎手フレイム・ハンド》」



 ケネスの魔法陣から、炎の手が伸びてきて、壁から生えてくる蔦を焼き切っていった。



「さすがだ。さすだぞ。ケネス・カートルド。ならばこれならどうだ。水系最上位魔法《絶対零度アブソリュート・テンパラチャー》」



 廊下が凍りついた。
 ケネスのカラダもいっきに凍てついた。



「火系基礎魔法《炎の衣フレイム・ドレス》」
 と、ケネスは炎をまとって、カラダにまとわりつく氷を溶かした。



 さすがは魔法長官の座にいるだけはある。あらゆる魔法の最上位を自在に操ることができるようだ。



「いいぞ。上手く対処している。その炎の扱いだけは、私と互角と見て間違いはない。さすが《帝国の劫火》だ」



「ありがとうございます」



 帝国最強の魔術師であるガルシアから、ホめてもらえた。かつて最弱だった冒険者は、いまやそんな場所にまで上り詰めて来たのだ。うれしくなって骨の芯が震えるようだった。ガルシアは軽くホめただけなのかもしれないが、ケネスにとっては大きな意味のある言葉だった。



 ガルシアははじめてヴィルザではなくて、ケネスの存在に気づいたのだ。ガルシアの目に留まるほどにはなったのだ。



「が、しかし」
 と、ガルシアは続けた。



「君の魔法はそんな程度ではないだろう。遠慮することはないのだ。もっと、私を、世界を圧倒するほどの、チカラを見せてくれ。暴風のようなあの魔力だ。さあ、私を包みこんでくれッ」



 ガルシアは目を血走らせており、その美貌が廃れて見えた。まるで薬でトリップしている人のようだ。



「オレじゃ、やっぱりダメか」
 と、落ち込んだケネスにヴィルザがささやいた。ヴィルザは相変わらず、ケネスの背中にへばりついている。



「あれ、を使え。それで多少は満足させられるやもしれん」



「これか」



 ケネスの右手に宿っているヴィルザの魔力だ。グラトンたちに襲撃された際に、一度あの魔法を発動させている。悪系統の魔法。魔神にのみ許された系統の魔法だ。ケネスのコントロールを離れて、あまりに危険な魔法だった。いくつもの腕が魔法陣から生えてきて、グラトンたちを食い散らかし惨劇は、いまだ脳裏に新しい。あれから何度か使って、ケネスなりに改良をくわえた魔法があった。



「でも、あれはトッテオキだ。ガルシアさんを殺してしまうかも」



「あの小娘を甘く見るな。そう易々と死ぬような玉ではないわ」



「わかった。なら……」



 ケネスはふたたび魔法陣を発した。
 それに合わせてガルシアも魔法陣を展開させる。



「さあ。来い! ケネス・カートルド。もっとチカラを隠しているのだろう。私にブツけてッ。さあ、もっとチカラをッ」
 と、ガルシアは昂ぶっている。



 媚薬に当てられて、性欲に走るのではなくて、チカラを求めるというのが、ガルシアなりの興奮なのだろう。



「死なないでくださいよ」



「遠慮はいらん。全力をブツけて来い。私のすべてを焼き尽くしてくれ!」



 ガルシアは魔法陣をしまいこんで、両手を広げた。まるでケネスの魔法を迎え入れようとしているかのようだ。



「火悪系魔法。《ファラリスの雄牛》」



 本来ケネスの持っている魔力と、ヴィルザから与えられた右手の魔力を複合させたものだ。



 赤黒い炎が牛の形となって、ケネスの魔法陣から現れる。その牛の巻き角は、まるでヴィルザの頭から生えている角のようだ。その牛は全身が炎でかたどられている。炎の牛はガラス片の散乱した廊下を駆けた。床に散るガラスが、炎を照らし返して、煌びやかに輝いていた。



 ファラリスの雄牛はガルシアを包み込む。そして、さらに炎を猛らせる。凄愴たる赤黒い炎のなかから、狂気じみた笑い声があがっていた。



「はーははははッ。これだ、感じるぞ。ケネス・カートルドを感じる。私の見たことのない魔法だ。私を焼き尽くしてくれる炎だ。これだ。やはり私は、君が欲しい!」



 ファラリスの雄牛が鎮火したとき、ガルシアはまだ毅然とそこに立っていた。その表情は蕩けきっており、服もすべて焼き尽くされていた。しかし、その裸体には傷一つなかった。



「なかなか良かった。《帝国の劫火》。良い二つ名だ」



「大丈夫ですか?」



「カラダの芯が焼けるように熱かった。先の発言は撤回しよう。その炎の魔法に関して言えば、私よりはるかに強力だ。やはり私の目に狂いはなかった」



 君は強い。
 ガルシアはそう言った。
 その言葉を、ケネスは噛みしめた。



「さあ、続きをしよう」
 と、ガルシアは亡者のごとく足取りで歩み寄ってくる。



「つ、続き?」



「そうだ。もう一度、私が満足するまで、魔法を放ってくれ。まだ隠しているチカラはないか? すべて私にブツけてくれ。あまさずすべて、だ」



「し、失礼します!」
 その異様な雰囲気に気圧されて、ケネスはその場から逃げ出したのだった。

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