《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第6-1話「学院祭」

 3年生になった。クロノやサマルたち3年生は卒業して行った。ケネスは1年と2年のあいだに、単位を多く摂取しておいたので、3年になると、もう必要な単位はほとんどなかった。



 学院生活を3年も続けていると、そろそろマンネリ化してきて、日々の生活にメリハリがなくなっていた。ときおり刺激を与えてくれるのは、刺客たちだ。魔術実践学の期末テストでヴィルザハード城に行き、グラトン先生たちに襲撃されてから、2回、刺客からの襲撃をくらっていた。



 寮。
 明朝。
 ベッドで寝煙草をふかしていた。精神刺激薬と同じ龍の葉で作られているだけあって、寝起きに吸うと頭がスッキリする。



「もう1年もないな」
 と、ヴィルザが言った。



「そうだな」
 と、ケネスは宙をただようケムリをボーッと見つめていた。



 ガルシアとの約束。



 3年後に実力を見てくれという約束から、すでに2年とチョットが経過している。卒業して、ガルシアのもとに行くつもりだった。が、ホントウに帝国魔術師になるべきなのか。ここに来て、ケネスは迷いを覚えていた。ガルシアとの約束を破るつもりはないけれど、帝国そのものに不審感をおぼえているのだ。グラトンはじめに、ケネスを抹殺しようとしてくる刺客たちが、どうしても帝国の息がかかった者としか思えないのだった。



 パァン
 パァン
 と、外で魔法の花火を鳴らす音が聞こえた。



「なんじゃ、外が騒がしいのぉ」
 ヴィルザは壁からズボッと頭を突き出して、外の様子を見ていた。



「今日は学院祭だ。それで騒がしいんだろ」
「学院祭か。それは楽しみじゃな」



「なんだ。魔神が学院祭を楽しみにしてるなんてな」



 1年のときと2年のときは、王国との戦争があったため、学院祭はなかった。今はふたたび停戦中となったために、再開ということになった。



「ハンバーガーがたくさん食べれそうな予感がするんじゃ」
 と、紅色の瞳をキラキラ輝かせて、ケネスのほうに面を向けてきた。



「あー。食べれるかもな」
「なんとしても確保せよ。魔神の命令じゃ」
「そんなに食ったら、太るぞ」



 ヴィルザは毎日のように、学校に売っているハンバーガーを頬張っている。最近では、チーズをはさんだものにまで手を出しはじめた。



「何度言えばわかる。私はこの体型から変わることはないと言っておろうが」



「封印を解いたら、成長するとか言ってたくせに」
「胸が大きくなっておるであろう」



 ヴィルザは、ふん、と胸を張る。
 どう見ても、ペッタンコだ。



「みんな来るってさ」



「うにゅ?」
 と、ヴィルザは子供じみた声を発した。



「マスクから連絡があったんだ。バートリーさんからも。学院祭に来るって」



「マスクって、誰じゃったか?」
 と、ヴィルザは首をかしげた。



「誰って、『孤独の放浪者』の3人組だよ。ガルとマスクとテイラの3人。ハーディアル魔術学院の学院祭に来るってさ」
 あやつらか、とヴィルザはようやく思い出したようだ。



「ってことは、規模の大きな学院祭になるのじゃな」



「ああ。生徒会も引っ張りだこだ」



「ケネスは生徒会じゃが、さっきから寝ておるだけじゃないか」



「ユリに任せてるからな」



 ユリテリア・トネト。生徒会の2年。ユリ姫ちゃんの名で知れ渡っており、元気のカタマリのような娘だ。



「押し付けておいて良いのか?」



「オレみたいな陰気なヤツは、裏方が似合ってるんだよ。表向きの仕事は、だいたいユリがやってくれる。そのほうが円滑に進む」



 ケネスの生徒会の役目は、おもにスパイのあぶり出しだ。王国の息がかかったものを、徹底的につぶしにかかっている。見つけたスパイは、都市の部隊に引き渡すことにしている。



 はじめて相部屋となった相手が、スパイだった。そして今は、そのスパイのあぶり出しをやっていると思うと、何か運命的なものを感じないでもない。



「陰気……なぁ」
 と、ヴィルザが物言いたげな目を向けてきた。



「なんだよ」



「表に出れば《帝国の劫火》などとチヤホヤされておるではないか。どこが陰気なんだか」



 たしかに、ケネスの人気は、なかなかのものがある。《帝国の劫火》の名は、いまや帝国12魔術師の1枠を勝ち取るにいたった。バートリーとフーリンを救い出した功績が大きいということだ。



「《帝国の劫火》なんて、笑っちまうよな。オレはまだFランク冒険者なんだぜ」



「そりゃ、冒険者組合に申請していないからであろうが」



「学生だしな」



 あまり冒険者組合に行く用事もないのだ。



「くひひひッ。まぁ、コゾウがそう言われるに至ったのも、それほどまでの強さを手に入れるに至ったのも、すべては私のおかげだ。それを忘れるでないぞ」



 ケネスは煙草を灰皿で押しつぶして、ヴィルザの頭に手を置いた。ヴィルザは手の下から上目使いを送ってくる。



「感謝してるさ。ヴィルザあってこそのオレだ」
「そして、ケネスあってこその私でもある」



 互いに、見つめあい、微笑む。



 かつてこの部屋で、ケネスは考えたことがある。ヴィルザと自分の関係性について。当時、導き出した解答は、共犯者、だった。でも今は違う。もう恋人と言えるぐらいの関係にはなっている。



 ケネスの愛撫に、ヴィルザは心地よさそうに頭を預けていた。

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