《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第6-1話「学院祭」
3年生になった。クロノやサマルたち3年生は卒業して行った。ケネスは1年と2年のあいだに、単位を多く摂取しておいたので、3年になると、もう必要な単位はほとんどなかった。
学院生活を3年も続けていると、そろそろマンネリ化してきて、日々の生活にメリハリがなくなっていた。ときおり刺激を与えてくれるのは、刺客たちだ。魔術実践学の期末テストでヴィルザハード城に行き、グラトン先生たちに襲撃されてから、2回、刺客からの襲撃をくらっていた。
寮。
明朝。
ベッドで寝煙草をふかしていた。精神刺激薬と同じ龍の葉で作られているだけあって、寝起きに吸うと頭がスッキリする。
「もう1年もないな」
と、ヴィルザが言った。
「そうだな」
と、ケネスは宙をただようケムリをボーッと見つめていた。
ガルシアとの約束。
3年後に実力を見てくれという約束から、すでに2年とチョットが経過している。卒業して、ガルシアのもとに行くつもりだった。が、ホントウに帝国魔術師になるべきなのか。ここに来て、ケネスは迷いを覚えていた。ガルシアとの約束を破るつもりはないけれど、帝国そのものに不審感をおぼえているのだ。グラトンはじめに、ケネスを抹殺しようとしてくる刺客たちが、どうしても帝国の息がかかった者としか思えないのだった。
パァン
パァン
と、外で魔法の花火を鳴らす音が聞こえた。
「なんじゃ、外が騒がしいのぉ」
ヴィルザは壁からズボッと頭を突き出して、外の様子を見ていた。
「今日は学院祭だ。それで騒がしいんだろ」
「学院祭か。それは楽しみじゃな」
「なんだ。魔神が学院祭を楽しみにしてるなんてな」
1年のときと2年のときは、王国との戦争があったため、学院祭はなかった。今はふたたび停戦中となったために、再開ということになった。
「ハンバーガーがたくさん食べれそうな予感がするんじゃ」
と、紅色の瞳をキラキラ輝かせて、ケネスのほうに面を向けてきた。
「あー。食べれるかもな」
「なんとしても確保せよ。魔神の命令じゃ」
「そんなに食ったら、太るぞ」
ヴィルザは毎日のように、学校に売っているハンバーガーを頬張っている。最近では、チーズをはさんだものにまで手を出しはじめた。
「何度言えばわかる。私はこの体型から変わることはないと言っておろうが」
「封印を解いたら、成長するとか言ってたくせに」
「胸が大きくなっておるであろう」
ヴィルザは、ふん、と胸を張る。
どう見ても、ペッタンコだ。
「みんな来るってさ」
「うにゅ?」
と、ヴィルザは子供じみた声を発した。
「マスクから連絡があったんだ。バートリーさんからも。学院祭に来るって」
「マスクって、誰じゃったか?」
と、ヴィルザは首をかしげた。
「誰って、『孤独の放浪者』の3人組だよ。ガルとマスクとテイラの3人。ハーディアル魔術学院の学院祭に来るってさ」
あやつらか、とヴィルザはようやく思い出したようだ。
「ってことは、規模の大きな学院祭になるのじゃな」
「ああ。生徒会も引っ張りだこだ」
「ケネスは生徒会じゃが、さっきから寝ておるだけじゃないか」
「ユリに任せてるからな」
ユリテリア・トネト。生徒会の2年。ユリ姫ちゃんの名で知れ渡っており、元気のカタマリのような娘だ。
「押し付けておいて良いのか?」
「オレみたいな陰気なヤツは、裏方が似合ってるんだよ。表向きの仕事は、だいたいユリがやってくれる。そのほうが円滑に進む」
ケネスの生徒会の役目は、おもにスパイのあぶり出しだ。王国の息がかかったものを、徹底的につぶしにかかっている。見つけたスパイは、都市の部隊に引き渡すことにしている。
はじめて相部屋となった相手が、スパイだった。そして今は、そのスパイのあぶり出しをやっていると思うと、何か運命的なものを感じないでもない。
「陰気……なぁ」
と、ヴィルザが物言いたげな目を向けてきた。
「なんだよ」
「表に出れば《帝国の劫火》などとチヤホヤされておるではないか。どこが陰気なんだか」
たしかに、ケネスの人気は、なかなかのものがある。《帝国の劫火》の名は、いまや帝国12魔術師の1枠を勝ち取るにいたった。バートリーとフーリンを救い出した功績が大きいということだ。
「《帝国の劫火》なんて、笑っちまうよな。オレはまだFランク冒険者なんだぜ」
「そりゃ、冒険者組合に申請していないからであろうが」
「学生だしな」
あまり冒険者組合に行く用事もないのだ。
「くひひひッ。まぁ、コゾウがそう言われるに至ったのも、それほどまでの強さを手に入れるに至ったのも、すべては私のおかげだ。それを忘れるでないぞ」
ケネスは煙草を灰皿で押しつぶして、ヴィルザの頭に手を置いた。ヴィルザは手の下から上目使いを送ってくる。
「感謝してるさ。ヴィルザあってこそのオレだ」
「そして、ケネスあってこその私でもある」
互いに、見つめあい、微笑む。
かつてこの部屋で、ケネスは考えたことがある。ヴィルザと自分の関係性について。当時、導き出した解答は、共犯者、だった。でも今は違う。もう恋人と言えるぐらいの関係にはなっている。
ケネスの愛撫に、ヴィルザは心地よさそうに頭を預けていた。
学院生活を3年も続けていると、そろそろマンネリ化してきて、日々の生活にメリハリがなくなっていた。ときおり刺激を与えてくれるのは、刺客たちだ。魔術実践学の期末テストでヴィルザハード城に行き、グラトン先生たちに襲撃されてから、2回、刺客からの襲撃をくらっていた。
寮。
明朝。
ベッドで寝煙草をふかしていた。精神刺激薬と同じ龍の葉で作られているだけあって、寝起きに吸うと頭がスッキリする。
「もう1年もないな」
と、ヴィルザが言った。
「そうだな」
と、ケネスは宙をただようケムリをボーッと見つめていた。
ガルシアとの約束。
3年後に実力を見てくれという約束から、すでに2年とチョットが経過している。卒業して、ガルシアのもとに行くつもりだった。が、ホントウに帝国魔術師になるべきなのか。ここに来て、ケネスは迷いを覚えていた。ガルシアとの約束を破るつもりはないけれど、帝国そのものに不審感をおぼえているのだ。グラトンはじめに、ケネスを抹殺しようとしてくる刺客たちが、どうしても帝国の息がかかった者としか思えないのだった。
パァン
パァン
と、外で魔法の花火を鳴らす音が聞こえた。
「なんじゃ、外が騒がしいのぉ」
ヴィルザは壁からズボッと頭を突き出して、外の様子を見ていた。
「今日は学院祭だ。それで騒がしいんだろ」
「学院祭か。それは楽しみじゃな」
「なんだ。魔神が学院祭を楽しみにしてるなんてな」
1年のときと2年のときは、王国との戦争があったため、学院祭はなかった。今はふたたび停戦中となったために、再開ということになった。
「ハンバーガーがたくさん食べれそうな予感がするんじゃ」
と、紅色の瞳をキラキラ輝かせて、ケネスのほうに面を向けてきた。
「あー。食べれるかもな」
「なんとしても確保せよ。魔神の命令じゃ」
「そんなに食ったら、太るぞ」
ヴィルザは毎日のように、学校に売っているハンバーガーを頬張っている。最近では、チーズをはさんだものにまで手を出しはじめた。
「何度言えばわかる。私はこの体型から変わることはないと言っておろうが」
「封印を解いたら、成長するとか言ってたくせに」
「胸が大きくなっておるであろう」
ヴィルザは、ふん、と胸を張る。
どう見ても、ペッタンコだ。
「みんな来るってさ」
「うにゅ?」
と、ヴィルザは子供じみた声を発した。
「マスクから連絡があったんだ。バートリーさんからも。学院祭に来るって」
「マスクって、誰じゃったか?」
と、ヴィルザは首をかしげた。
「誰って、『孤独の放浪者』の3人組だよ。ガルとマスクとテイラの3人。ハーディアル魔術学院の学院祭に来るってさ」
あやつらか、とヴィルザはようやく思い出したようだ。
「ってことは、規模の大きな学院祭になるのじゃな」
「ああ。生徒会も引っ張りだこだ」
「ケネスは生徒会じゃが、さっきから寝ておるだけじゃないか」
「ユリに任せてるからな」
ユリテリア・トネト。生徒会の2年。ユリ姫ちゃんの名で知れ渡っており、元気のカタマリのような娘だ。
「押し付けておいて良いのか?」
「オレみたいな陰気なヤツは、裏方が似合ってるんだよ。表向きの仕事は、だいたいユリがやってくれる。そのほうが円滑に進む」
ケネスの生徒会の役目は、おもにスパイのあぶり出しだ。王国の息がかかったものを、徹底的につぶしにかかっている。見つけたスパイは、都市の部隊に引き渡すことにしている。
はじめて相部屋となった相手が、スパイだった。そして今は、そのスパイのあぶり出しをやっていると思うと、何か運命的なものを感じないでもない。
「陰気……なぁ」
と、ヴィルザが物言いたげな目を向けてきた。
「なんだよ」
「表に出れば《帝国の劫火》などとチヤホヤされておるではないか。どこが陰気なんだか」
たしかに、ケネスの人気は、なかなかのものがある。《帝国の劫火》の名は、いまや帝国12魔術師の1枠を勝ち取るにいたった。バートリーとフーリンを救い出した功績が大きいということだ。
「《帝国の劫火》なんて、笑っちまうよな。オレはまだFランク冒険者なんだぜ」
「そりゃ、冒険者組合に申請していないからであろうが」
「学生だしな」
あまり冒険者組合に行く用事もないのだ。
「くひひひッ。まぁ、コゾウがそう言われるに至ったのも、それほどまでの強さを手に入れるに至ったのも、すべては私のおかげだ。それを忘れるでないぞ」
ケネスは煙草を灰皿で押しつぶして、ヴィルザの頭に手を置いた。ヴィルザは手の下から上目使いを送ってくる。
「感謝してるさ。ヴィルザあってこそのオレだ」
「そして、ケネスあってこその私でもある」
互いに、見つめあい、微笑む。
かつてこの部屋で、ケネスは考えたことがある。ヴィルザと自分の関係性について。当時、導き出した解答は、共犯者、だった。でも今は違う。もう恋人と言えるぐらいの関係にはなっている。
ケネスの愛撫に、ヴィルザは心地よさそうに頭を預けていた。
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