《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-20話「ヴィルザハード城 Ⅴ」

「ギャ――ァァァァ!」



 ヴィルザハード城内に男のものと思われる悲鳴が響きわたった。城内のあちこちに、その絶叫は反響して、どこから聞こえたのかわからなかった。



「なんだ、今の声は?」



「こっちじゃな」
 と、ヴィルザは進んだ。ケネスはヴィルザについて行った。いくつか階段をのぼり、不気味な鉄の箱がいくつも置かれた通路を抜けて、また階段を下りて行くと、階段の踊り場のところに、大柄な男が倒れていた。



 ハンプティかダンプティのどちらかだ。双子で、同じ顔をしているので、ケネスには見分けがつかなかった。



 腹に穴が開いている。血だまりが出来ていた。
 これはもう、助からない。



「おい、どうした!」
 と、ロレンスたちが駆けつけてきた。



「オレも今来たところで、何があったのか、わからないんだけど」



「ハンプティ!」
 と、ロレンスは叫んだ。
 どうやらダンプティではないらしい。



「オレが来たときには、もうやられてた。もしかすると、アンデッドかもしれない」



「まさか、人が死ぬなんて……クソッ」



 ロレンスはハンプティとダンプティと常にかたわらに従えていた。仲間を失ってショックなのかもしれない。特に双子の相方の慟哭は激しかった。獣のように泣き叫んでいた。



「うぇ? 何かあったのです?」
 ダンプティの泣き声で、ユリが目を覚ましたらしい。



「起きたか」
「げッ。人が死んでる……うへぇ」
 と、ユリはまたしても気絶したようだ。



「ケネス。いったい何があったんだ?」
 と、ロレンスが沈痛な面持ちで尋ねてきた。



「だから、オレもわからないって。さっき悲鳴が聞こえただろう。オレもその声を聞いて、こっちに来たんだ。そしたら、こんな状態になってた」



 ロレンスはちょっと疑るような目をしたけれど、ストンと肩を落としてため息を吐いた。



「そうか」



「疑ってくれても良いが、オレは殺してないからな」



「いや。悪い。ケネスが使うのは火系統の魔法だもんな。こんな死体にはならないはずだ」



 ハンプティの腹には、ポッカリと穴が開いている。魔法で殺されたのならば、土系統の魔法だろう。水ならもっと濡れる。風なら切断されたような痕になる。そして火なら、もっと焼ける。



「それよりロレンスこそ、ハンプティと別れて行動してたのか?」



「ハンプティが奇妙なものを見たとか言ってな。追いかけて行って、途中ではぐれちまったんだ」



 ハンプティが殺された悲しみを引きずっているようで、ロレンスは震える声でそう言った。



「奇妙なもの?」
「仮面をつけた先生――って言ってたが」
「仮面!」



 ケネスは後頭部をガツンと殴られたような衝撃を受けて、その場で立ち尽くした。忘れていた。そう言えば以前、サマルと一騎打ちをしたときに、仮面をつけた奇妙な人物が、ケネスのことを見つめていた。そして、グラトン先生の机のなかにも同じものがあった。そしてまた、仮面……。



「覚えがあるのか?」



「以前にも言っただろ。仮面をつけた妙な人物を、オレも見たことがある。ケリュアル王国のスパイかと思ってたけど、まさか殺しをするなんて」



 期末テストの一環と考えるには、殺しはあまりに過激だ。これは、異常事態だろう。



「ちッ。さっさと合格の証を見つけ出して、ここから出たほうが良さそうだな」



「引き返す手もある」



「本気で言ってるのかよ、ケネス。他の連中は
合格の証を手に入れてるかもしれないんだ。こんなところで、引き返せない」



 それは、ケネスも同じ気持ちだった。この講義の単位は、死んでも落としたくない。



「しばらく一緒に行動するか? 数は多いほうが安心だろ」



「そうするか」



 ケネスと気絶しているユリ。それから、ロレンスとダンプティの4人は、一時ともに行動することになった。同じ魔術師でも、土系魔法を使うダンプティが前衛、ケネスとロレンスが後衛という形で動くことになった。



 今のところ、モンスターやアンデッドとは遭遇していないが、それよりも、仮面をつけた謎の人物に注意をしておくべきだ。



 ハンプティの死体は帰りに回収して、弔ってやるということだった。



 食堂――。
 巨大な長机がいくつも置かれてあり、テーブルの上には骨が大量に置かれている。白いテーブルクロスは血で汚れていた。それもずいぶんと前のもののようだ。虫が集っている。腐臭にケネスは顔をしかめた。どう見たら食堂になるのかわからないのだが、ヴィルザいわく食堂なのだそうだ。部屋の中央にはヴィルザの肖像画が飾られていた。



「へえ。可憐な少女の絵だな。この城には似つかわしくない」
 と、ロレンスが感想を述べていた。



 まさか、この城の主である魔神ヴィルザハードの肖像画だとは、思いもしないだろう。その絵画の下に、宝箱が置かれていた。



「おッ。あれじゃないか。合格の証」
 と、ロレンスが駆け寄る。



 ケネスは注意した。
「気を付けろよ。ミミックかもしれない。ダンジョンにたまにいるんだ。宝箱のカッコウをしたモンスターが。ウッカリ開けたら、腕を食いちぎられる」



 冒険者をやっていたときの知識だ。



「どうすれば良いんだ?」
「木の棒か何かで開けてみるべきだ」
「わかった」



 そんなに都合良く木の棒が落ちているわけもない。ただ、机上にはたくさんの骨が散乱していたので、その一本を使ってみることにした。宝箱のフタを骨で突いてみたが、反応がなかった。これはミミックではない。そう判断して、手で留め金を開けた。



 宝箱から出てきたのは、「合格」と黒インクで大きく書かれた羊皮紙だった。



「おおっ。やっぱりこれが期末テストの合格の証だ」
 と、ロレンスが手を叩いて喜んでいた。



「でも、1枚しかないな」



「3人パーティだから、オレたちのチームか、ケネスのチームか、持ち帰ったほうが合格ってわけか」



「じゃあ、いいよ。これはロレンスに譲る」
 と、ケネスは身を引くことにした。



「いいのか?」
 と、ロレンスはヒョウシヌケした顔をした。



「先に見つけたのはロレンスだし、そっちはハンプティのこともあるから、早く帰ったほうが良いだろ。それにオレのところは、1人はぐれちまってるんだ」



 サマルだ。
 勝手にひとりで行動して、いなくなってしまった。難儀な先輩だが、あれを置いて帰るわけにはいかない。



「そうか。じゃあ、有りがたくいただくぜ」
 と、ロレンスは羊皮紙を受け取った。



「合格者の枠分だけは、用意されてるはずだ。オレも自分の分を見つけたら、すぐに戻る。人が死んだこと、ちゃんと先生に伝えておいてくれ」



「早く戻って来いよ」



 ロレンスはそう言い残すと、戻って行った。これでまたケネスとユリの2人になった。正確にはヴィルザがいるので3人だが。

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