《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第5-16話「ヴィルザハード城 Ⅰ」

 平原を歩いていると、ボコッと巨大な落とし穴のような陥没があるところを発見した。その陥没の中心には、巨大な石造りの城があった。まるで世間から隠れるようにして、地の底でうずくまっていた。さっきまで晴れていた空には、急に雨雲が立ち込めてきた。ポツリ……ポツリ……と涙を流すようにして、雨粒が落ちてきた。



「雨か」
「こっから下りれるみたいだぜ」
 と、ロレンスが下り坂を指差した。



 陥没の周囲には渦を巻くようにして、下り坂が伸びていた。ケネスたちはその坂を下ることにした。決して足場の良い道ではない。1列になって歩く。



「ッたく、生徒にこんなところ来させるなんて、正気じゃねェぜ。コラ。ここってあれだろ。魔神ヴィルザハード城って言われてるところだろ。封印された魔神とやらが、まだ居ついてるかもしれねェぞ、コラ」
 と、サマルは1人でぶつぶつ呟いていた。



「怖いこと言わないでくださいよ。魔神ヴィルザハードがいたら、どうするのですか! 世界を破壊しつく魔神なのですよね」
 と、ユリも怖がっている。



 2人の怯えようを見て、ケネスは思わずほくそ笑んだ。その魔神ヴィルザハードは、ずっと近くにいるのだ。その魔神本人は、「くひひひっ」と、腹を抱えて笑っている。



「うん。でも、冗談で済まないかもしれないからな。もしも魔神らしきものがあっても、触れないようにしておこう」
 と、先頭を歩いているロレンスが言った。



 魔神ヴィルザハードについての話題になった。



 ――どんな姿だったと思う? そりゃ山よりも大きいバケモノだろ。悪系統と言われるトンデモナイ魔法を使ったとされてるらしいな。人間たちを弄んでいたらしい。封印されてくれて何よりだ。二度と出て来て欲しくない。クソッタレの魔神――。



 みんな好き勝手なことを言っていた。ケネスは気が気ではなかった。なにせ、その罵詈雑言は、すべて魔神の耳に入っているのだ。



「怒るなよ」
 と、ケネスは小さくつぶやいた。



「うふふ」
 と、ヴィルザは怒っているどころか、むしろ嬉しそうだった。目に涙まで浮かべている。



「どうした?」



「いや。人間どもが私の話をしておる。そう思うと、うれしくてな――つい」
 と、ヴィルザは浮かべていた涙を、ブリオーの袖でふいていた。悪口でさえも、自分のことが話題にのぼると嬉しいようだ。



「故郷らしいが、何か思い入れのある場所とか、物とかないのか?」



「これといって、ありはせん。ただ、この空気、この景色は、懐かしくはあるがのぉ」
 と、ヴィルザはしみじみと呟いていた。



 坂道をくだりきった。
 穴の底に広がっていたのは、石造りの建物の群れだった。人間たちが住んでいたような跡がある。



「しかし、数千年前のものにしては、キレイに残ってるな」
 と、ケネスは呟いた。



 石造りの建物たちも、石畳の床もそのまま残っている。崩れたり、亀裂が入ったりはしているが、トテモ神話の時代の遺物には思えなかった。ヴィルザの思い出に、足を踏み入れてしまったような心地になる。



「そりゃそうじゃ。ここいらの建造物には私の魔力が塗り込められておるからな。ほれ。ハーディアル魔術学院もそうであろう。時間の流れなどで、私の魔力が風化するものか」



「なるほどね」



 なら、この荒廃的な雰囲気は、時間の流れによって醸造されたものではないのだろう。雨が降っているせいもあるかもしれないが、やたらとオドロオドロしい雰囲気がたちこめている。開け放たれたトビラや、ガラスの砕け散った窓枠の向こうには、粘着質な暗闇が滞っているように見えた。



「ケネス先輩。ちょっと寒くなってきたのです」
 と、ユリが言った。



「じゃあ、オレたちは、そこの建物で休むとするか」



「はい!」



 ロレンスたちは先に行くということだったので、別れることにした。ベッド4台分ぐらいの広さしかない石造りの一戸建てに入った。クローゼットやベッドが、そのまま残っていた。ユリがベッドに腰かけると、「ひぇ」と跳びあがっていた。



「どうした!」



 ケネスはすぐに魔法陣を展開して、警戒した。アンデッドが出たのかと思ったのだ。



「なんか、お尻で踏んじゃったみたいなのですよ」



 土で汚れたフトンをめくると、中からガイコツが出てきた。



「うおっ」
 と、サマルも動揺しているようだったが、この程度ではケネスは驚かない。人間の骨なんてダンジョンにだって、いくらでも転がっている。



「スケルトンではないみたいだな」


 骨は部屋のすみにどけておくことにした。魔法陣から炎を出して、ユリとサマルを温めた。



「ケネス先輩。すごいのですよ。私もはやくこんなに自在に、魔法を使えるようになりたいのです!」



「火と水と、風と土。4系統あるからな。自分の得意な属性を見つけることだ」



 そんなことを言っている自分が、不思議だった。
 つい先日までは、ケネスも魔法を使えずに苦心していた身なのだ。



「アドヴァイス。ありがとうなのですよ!」



 ユリは頭を下げると、机でその頭を打ちつけていた。落ちつきのない娘だ。ケネスとユリが仲良くしているところ、サマルはふてくされたような顔で見ていた。



「おい、コラッ。こんなところでノンビリしてても良いのかよ! あのロレンスとかいうヤツらに先を越されるぞ」



「まあ、良いでしょう。そんなに焦らなくても、合格者の枠はある程度用意されているでしょうし」



「ッたく、なんでオレが、お前なんかと一緒に行動しなくちゃいけないんだよ。コラ」
 と、サマルは凄んだ。



 サマルは顔色がもともと青白く、青い髪が雨で顔にはりついている。濡れていると、よりいっそう病弱そうに見える。



「仕方ないでしょう。生徒会長の人選なんですから。別に好きに行動してくれても良いんですよ。身の安全は保障しかねますけど」



「ウルセェ! オレはひとりでもやって行けるッつーの! 先に合格者の証とやらを、見つけ出してきてやるからな」
 と、サマルは1人で外に出て行ってしまった。出てゆくさいに、名残惜しそうな目で、ユリのことを見ていたようだが、ユリはジーッとケネスの顔を見つめていた。バタン。トビラを叩きつけるように閉めていった。

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