《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-15話「期末テストの当日」

 魔術実践学――期末テスト当日。



 その日は、他の講義はなく、早朝から校庭に集められることになった。丸一日魔術実践学に当てられることになる。緑に輝く校庭には、黎明の冷たい空気がそよいでいた。肌寒さにケネスはブルッとカラダを振るわせた。



「えーっとですね。それでは、これより魔術実践学の期末テストを開始しますからね。それでははじめーっ」



 グラトンは小太りなカラダを揺らしながら、ノンキな口調でそう合図を出した。ノンキな口調とはウラハラに、ずいぶんと酷なテストだった。なにせここは、校庭なのだ。イキナリはじめーっと言われて、困惑している生徒もすくなからずいる。



「なるほどな。前もって与えられてたヒントを解いてないと、行き先もわかんないってことか」



「行き先ってどこだよ、コラ。さっさと教えろよ、コラ」



 サマルがそう怒鳴ってくる。
 ユリもいる。



 いちおう3人パーティということになっている。不安な組み合わせだ。サマルはケネスにたいして嫌悪感を丸出しにしているし、ユリはまだ1年生だ。助っ人として呼ばれているのはたいていは同学年か3年生で、1年生を連れてきている生徒は他にはいなかった。



「あわわっ。上級生さんたちに囲まれて、私すこし緊張しているのですよッ。だけど、このユリテリア・トネト。ケネス先輩のお役に立てるように、ガンバってみせるのです!」
 と、本人の意気込みは充分なようだが。



「さて、じゃあ、行こう」
 と、ケネスは足をすすめた。



「行くって、どこに行くんだ。コラ」
 と、サマルが突っかかってくる。



「サマル先輩もこのテストで単位がかかってるんでしょう。ヒントを考えたりしなかったんですか」



 サマルはすこし言葉に詰まったが、
「ウルセェ。オレは先輩なんだから、いいんだよ!」
 と、メチャクチャなことを言いはじめた。



 不安だ。



 校庭から、校門を抜ける。



 校門を抜けると、平原が広がっている。すぐ近くに都市があるけれど、ハーディアル魔術学院じたいは都市の中にあるわけではない。学校そのものが、ちゃんと城壁で囲まれているのも、自衛できるようにしているのだろう。平原に伸びている草と土とワダチの道を行く。



 移動しはじめているのはケネスたちのパーティだけではない。他にもいくつかのパーティが見受けられた。そのなかには、もちろんロレンスもいる。



 ヴィルザハード城へ行くまではロレンスたちと一緒に行くことになった。ロレンスのトリマキであるハンプティとダンプティがいる。2人の図体は、入学当初よりもあらに2回りほど大きくなっている。ケネスは縦に伸びたけれど、トリマキの2人は横に伸びたらしい。そのうち爆発するんじゃないかと、ひそかに心配している。



 三又路に入ったときには、各々のパーティはそれぞれ別の場所へと向かって行った。右の道へ行くパーティがあれば、左の道に行くパーティもある。それを見てケネスは戸惑った。



「どういうことだ? なぜ、行く場所がバラバラなんだ?」



「ヒントから導き出した解答が、各々違ってるからだろうさ」
 と、ロレンスが応じた。



「それじゃあ、そもそも試験会場が違ってることもある――ってことかよ。そりゃ過酷だな」



「言うなればあのヒントは1次試験のようなものだ。ヒントから、違った解答を導き出せなかったヤツは、失格ってことだな。それだけ合格者の枠は少ないんだ。ありがたいことだよ」



 ロレンスは自信満々の3叉路の真ん中を進んだ。ケネスもその道をたどることになる。ケネスたちと同じ道を進むパーティも少なからずいた。けれど、みんな不安そうにキョロキョロと周囲を見回している。自分の道が合っているのか、不安なのだろう。ケネスもだんだん自信がなくなってきた。



「おい、この道で合ってるんだろうな。コラ」
 と、サマルが怒鳴ってくる。



「ケネス先輩に、そんな口をきかないでください!」
 ユリがサマルに注意していた。
 サマルはユリに弱いようで、
「ユ、ユリ姫ちゃん」
 と、ユリに注意されるとすぐに萎れる。



 この「帝国アイドルユリ姫ちゃん」という肩書を、ケネスはぜんぜん知らなかった。が、意外とみんな知ってるようで、『ユリ姫ちゃんじゃん』『うわーっ、ホンモノだ』『うちの1年だったのかよ?』『お前知らなかったの? チョット前に編入してきたんだぜ』……と話題になっている。長い白銀のツインテールがうれしそうに揺れていた。



「ロレンス。知ってたか? 帝国アイドルのユリ姫ちゃんって」



「知ってるよ。っていうか、ケネスは知らなかったのかよ。口説き落としておきたいところだが、どうやらあの娘は、ケネスにゾッコンらしいな。ッたく、良い女に好かれたもんだな。おい」
 と、ロレンスはケネスの肩を小突いてきた。



 そう言われても、ケネスにはユリのどこが良いのか、よくわからない。たしかに顔立ちは整っているが、やたらと騒がしい。女性らしい色気が、あまり感じられなかった。



(好みの問題か?)
 と、自問してみる。



 なんだか最近、色恋沙汰に鈍感になっている気がする。これまで色んな女性と出会ってきた。帝国魔法長官のガルシア。副長官のバートリー。孤独の放浪者のテイラ。男だと偽り男子寮にいたヨナ。幼馴染のロール。王国領では薬中の公爵令嬢にも出会った。けれど一度だって、心臓が壊れそうな恋をしていない。生徒会長のクロノや、帝国アイドルのユリにしてもそうだ。



(まぁ、理由は明白か……)



 ケネスのかたわらには、常に凄みすらある美貌の魔神がいるのだ。幼く甘えたり、老獪になったり、ときには冷酷にもなる。どんな女性も、この魔神の前では色あせて見えてしまう。どこか、物足りないのだ。



「コゾウの考えていること、わかるぞ。まぁ、仕方ない。私に比べれば、人間の小娘なぞ乳臭いガキのようなものであろうからな。私はいつも、ケネスの求める女の姿で有り続ける」



 ケネスの考えていることを、ぴたりと言い当てる。
 こんな女と付き合っているのだから、他の女性が色あせるのは仕方ない。



「どうした、急に黙り込んで? もしかして、ヴィルザハード城が目的地じゃないかもしれない――なんて思ってるのか?」



「あ、いや、そういうわけじゃないけど」



「だろう。なにせオレたちは、グラトン先生の机を漁ってるんだ。間違いねェよ」
 ロレンスは自信満々の足取りだった。

「《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く