《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-14話「関係性の成熟」

「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……ふぅ……」



 ケネスとロレンスは、見回りの教員の目をかいくぐって、なんとか男子寮に戻ってきた。寮監のハグルももう眠っているようで、寮監室は静まりかえっていた。お互いに魔法樹に乗って上の階層へと移動した。最初は乗りなれぬ木の枝ったけれど、今では目をつむっていても乗りこなせる。



「じゃあ、また明日な。いいか。期末テストの内容は、誰にも言い触らすんじゃないぞ。ライバルを増やすことになるんだからな」
 と、釘をさして、ロレンスは部屋に戻っていった。



 ケネスも301号室に戻ることにした。



 外は涼しかったけれど、室内は熱気がこもっていた。走って寮まで戻ってきたので、カラダが熱を帯びていた。窓を開けて、夜風を取り込むことにした。ベッドに腰かけて、夜風に当たることにした。火照った頬を、冷たい風が愛撫してゆく。汗をかきそうな気配があったけれど、静まってくれた。



「収穫はあったではないか」
 と、ケネスのヒザの上に腰かけているヴィルザが、そう言ってきた。出会った当初は、ヴィルザの感触にドギマギしていたが、今ではもう肉体が接していても、それほどの緊張は感じなかった。ただ、女の肉の感触がケネスに、幸福感を与えるだけだった。



 ケネスはなにげなくヴィルザの頭に手を置いた。どうして自分が、そんな行動をとったのかわからない――つまりは無意識だった。



 ヴィルザはビックリしたように目を大きく開けたけれど、すぐにケネスの手にひらに頭をあずけてきた。小さくて形の良い頭からは、大きくて獰猛な巻き角が伸びている。その角の根本を指でナでてやると、ヴィルザは気持ちよさそうに目を閉じていた。



「ヴィルザハード城だとよ。しかしまさか、ヴィルザの城が、この学院の近くにあるとはな」



「私とケネスは、運命でつながれておるからな」



 冗談なのかもしれないが、あながち冗談とも受け取れない。いまだにヴィルザのことを視認できるのは、ケネスだけなのだから、2人の出会いはたしかに運命なのかもしれなかった。



 はじめて出会ったときのことは、昨日のことのように思い出せる。月並みな言い方かもしれないが、鮮明かつ強烈にケネスの脳裏に焼き付いているのだった。白いポポコの群生にたたずむ、紅の少女――。



「ヴィルザハード城って、アンデッドが多く住みついてるんだろ?」



「うむ」



「危険じゃないのかな? 生徒に行かせても良いような場所なんだろうか」



「私にはわからんが、教師たちが見守っておるんだろう」



 月明かりが、ヴィルザの紅色の髪を艶やかに照らしている。ナでると、その髪はケネスの指のあいだをすり抜けてゆく。その頭にケネスは鼻を近づけた。甘い、ミルクのような香りがする。白くて細いうなじがかいま見えた。



「故郷なのか? ヴィルザの」
「私の生まれた場所だ」



 ヴィルザはケネスの胸元に頭をあずけてきた。



「故郷ってのは大切な場所だからな。ヴィルザにも両親とかいるのか?」



「おらん」
「いないのか……。まぁ、神様だもんな」



「8大神と魔神ヴィルザハードは、もともと大きな1つの魔力のカタマリであった。それが9つに別れて、誕生することになった。だから、親と言えるような存在はおらんな」



「じゃあ、8大神が兄弟姉妹みたいなもんか」



 バカにするように、はっ、とヴィルザは笑う。
「超絶仲は悪かったがな」



「それはヴィルザが悪いんだろ。悪い事ばっかりするから、封印されることになったんだし」



「ふんっ」
 と、鼻息を荒げるだけだった。



 ケネスは自分の胸のなかにある、少女のことを想うと、胸が痛くなった。この少女は親もおらず、兄弟姉妹とも仲が悪い、あまつさえ人間たちにも無視され続けてきたのだ。それは酷く寂しかったことだろうと思う。



「この間はオレの帰郷に付き合ってもらったからな。今度はヴィルザの帰郷ってことになるわけか。期末テストのついでだけどな」



「この間のこと、まだ怒っておる?」



 ヴィルザは不安そうな顔で、ケネスのことを見上げてきた。ケネスの故郷で起こったことを言っているのだろう。



「もう怒ってないよ」



「そうか」
 と、ヴィルザはふたたび、ケネスの愛撫に身を任せてきた。今、撫でているのはヴィルザの頭だけだ。その手をカラダに移動させても文句は言われなさそうだった。そこまで妄動すると、ふとある考えが脳裏をよぎった。



「もし――さ」
「うにゅ?」
 と、甘ったるい声音で応じてくる。



「変な意味じゃないから、落ち着いて聞いて欲しいんだけど」



「なんじゃ、もったいぶって」



「オレとヴィルザのあいだに、子供が出来たとしたら、その子もやっぱり誰からも見えないままなのかな――って思ってさ。それともちゃんとした人間になるのかな?」



「それは難しい問題じゃな。私にもよくわからん」
「そっか」



「私との間に子供を作ろうなんて、スケベなことを考えておったな?」
 と、毒婦のような笑みを向けてきた。



「変な意味じゃないって言っただろうが。気になっただけだ」
 と、ケネスは言下に否定した。



「照れておる」



「もう夜も遅い。寝よう」
 と、ケネスはベッドに潜りこんだ。



「チョット前までは、もっと面白い反応をしてくれたのに、つまらん」



 ヴィルザも同じベッドに潜りこんでくる。赤子を抱くようにしてヴィルザのカラダを抱き寄せた。ヴィルザはされるがままになっていた。表情は見えなかったけれど、胎児のように丸めたカラダは幸せそうだった。その小さな手のひらが、ギュ、とケネスの服を端をつかんでいるのを、ケネスは見逃していなかった。



 時の経過は、ただただケネスを強くしただけではない。2人の関係も成熟させていた。最初は利用できると思った。でもすぐに、怖ろしい存在だと思うようになった。ケンカもした。仲直りしてから、いっきに距離が縮まった気がする。



(こいつは、オレのこと、どう思ってんだろうか?)
 と、ケネスは、胸の中で寝息をたてている少女を想うのだった。

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