《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第5-12話「本校舎へ忍び込む道中」

 寮監ハグル教諭の目を盗んで、ケネスとロレンスは男子寮から抜け出した。まだ冬とまではいかないが、夜風は冷気を帯びており肌寒くあった。去年の冬は牡丹雪がしんしんと降り積もった。今年もそうなるのかと思うと、ヘキエキしてしまう。暑いのも好きではないけれど、寒いのも苦手だ。



 今日の月は3つ。2つは煌々と輝いていたけれど、ひとつはわずかに雲がかかり、おぼろげだった。
 男子寮から、本校舎へと続く道を歩く。



「来年のいまごろは、就職活動だなぁ」
 と、ロレンスがしみじみと呟いた。



 プラチナブロンドの髪と、青い瞳の横顔は、見れば見るほど帝国魔法長官の顔に似ている。しかし、似ていると言ったら、怒りそうなので、黙っていることにした。



「そっか。もうそんなに時間は残されてないか……」
 わずかな焦りを覚えた。



 ケネスは強くなった。この学院に入学するころに比べたら、各段に強くなっているはずだ。



 が――。
 それでもまだまだだ。



《帝国の劫火》の二つ名にふさわしい実力ではない。ガルシアが認めるようなチカラもなければ、ソルト・ドラグニルを屠ったチカラも、いまだありはしない。もしかするとそんな強さは一生手に入らないかもしれない。その夢のような強さを、あと1年ほどで手に入れなければならない。



「オレは帝国魔術部隊に入隊する。入隊したら、目覚ましい戦果をあげてやる。そうすれば、姉さんもチョットはオレのことを見てくれるはずだ」



 ロレンスは決意を秘めた目をして、そう言った。



 強くなりたいという意思。ロレンスの抱いているものは、ケネスが抱いているものと似ている。誰かに認めてもらいたい。他の人に負けたくない。ロレンスのその気持ちがわかるからこそ、気が合うことになったのかもしれない。



 ケネスは、どうするんだ――と尋ねてきた。



「オレも帝国魔術部隊に入る。でも、もしダメだったら、ノンビリと旅をしながら冒険者でもやっておくことにするよ」



「ダメってことはないだろ。ケネスなら間違いなく入隊できる。《帝国の劫火》の二つ名までもらっているし、すでに目覚ましい活躍をしてるじゃないか。なにせ、あの帝国副長官のバートリーさんと、それからその部下とフーリンさんを助け出してるんだ」



「まぁな」
 と、ケネスは煙草をくわえた。冷たい夜のなかに、煙草の赤が灯った。ロレンスはそれを眩しそうに見つめていた。



「ケネスは、ちょっと雰囲気変わったよな」
「オレが?」



「ああ。はじめてこの学院に編入してきたころより、なんだか、ずいぶん大人っぽくなった」



「これのせいで、そう見えるんじゃないか?」
 と、ケネスは口元で煙草を揺らした。



「かもな」
 と、ロレンスは曖昧に笑って、とにかく、と続けた。



「ケネスは帝国魔術部隊に入るべき人材だ。一緒に戦おうぜ。王国軍と」



「ああ」
 ロレンスは1魔術師として、軍に入隊するつもりでいるのだろう。ケネスは違う。ガルシアには副官になって欲しいとまで言われているのだ。そのレベルまで到達できなかった場合は、ムリして軍に入ろうとは思わなかった。



 故郷を焼かれた恨みはあるが、ソルトを殺したことで若干は晴れた。なにより、ゲヘナ・デリュリアスやソルト・ドラグニルを倒したときの強さはどうしたのだ――と周囲に怪訝に思われたら、上手く言い逃れる自信がない。



 今の強さでも、冒険者としてなら、そこそこの成果を出せるはずだ。そう考えると、ノンビリと冒険者稼業も悪くないと思うのだ。そうして、残された神の遺物アーティファクトを探し出すのも一興だ。



(故郷は全部、ヴィルザがもとに戻してくれるって言ってるしな……)
 と、後ろからプカプカと浮かんでついて来るヴィルザを見つめて思った。どうして見つめられたのかわからないようで、ヴィルザは首をかしげていた。



「よし、本校舎だ」
 と、ロレンスが足を止めた。



 闇夜に屹立する本校舎の姿は、イビツなシルエットとなって浮かび上がっていた。昼日中の学び舎の姿には見慣れているけれど、奇妙な姿をしているため、暗闇のなかで見るとよりいっそう不気味な雰囲気を発していた。

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