《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-11話「ロレンスの誘い」

 コンコン



 これから寝ようとしているところに、部屋のトビラがノックされた。仮面野郎のことを考えていたし、殺気をはらんでいたなんてヴィルザが言うものだから、ケネスは警戒状態にあった。



 もしや殺しに来たかもしれないと思ったのだ。用心して部屋のトビラを開ける。消灯されてすでに暗くなった廊下にいたのは、ロレンスだった。見知った顔だったので、ホッとして緊張をゆるめた。



「よっ。入れてくれ」
 と、ロレンスは部屋の中に入り込んできた。



「どうしたんだ? こんな時間に」
「ちょいと相談があってな」
「なんだ? 恋の悩みか?」



 違げぇよ――とロレンスは一蹴した。この男のルックスなら、女性の1人や2人は、すぐに引っかけられそうではある。



「魔術実践学のヒント、解けたか?」



「いいや。ぜんぜん」
 とケネスがかぶりを振ると、ロレンスは安心したように笑った。どうやら、ロレンスのほうも解けていないらしい。



「そこでオレに考えがあるんだが、職員室に忍び込まないか?」



「忍び込んでどうするんだ」



「グラトン先生の机を漁ろうぜ。調べてみりゃ、期末テストのヒントが何か見つかるかもしれねェだろ」



「それって、ありなのか?」



「無しだろ。反則だ。だから今から、夜中に行こうという相談を持ちかけてるんじゃないか」
 と、ロレンスが顔を詰め寄ってくる。
 姉とうり二つの青い瞳が輝いている。



「あの2人――ハンプティとダンプティを誘えば良いだろ」



「あの2人は図体がでかいから、見つかりやすい。それに、ケネスといりゃ何とかなると思ってな。お前の目が良いことぐらい、すでに気づいてるんだ」



《可視化》のことだろう。



 スキルのことは、あまり他人に公言して良いものではない。が、同じ寮で暮らしていると、おのずと気づくこともある。ロレンスはそういった勘の働かせかたが異様に鋭い男なのだ。もしかすると、そういうスキルなのかもしれない。



「スキルで、期末テストの内容に関するものを見つけ出せ――ってことかよ」



「夜中に動き回るのは、オレたちの18番だろ」
 と、ロレンスは悪そうな笑みを浮かべた。



『マディシャンの杖』の騒動のことを言っているのだろう。ヨナのことは残念だったが、あれはあれで良い思い出だ。『マディシャンの杖』があった封印のトビラの場所は、今でも破壊された痕跡が残っている。



「な、頼む。一緒に行こうぜ」
 と、ロレンスは頭を下げてきた。



「別にそんなリスクをおかす必要ないだろ。誰かヒントを理解したヤツから、教えてもらえば良いんだし」



「そんなお人よしがいると思うか? 合格者の数は限られてるんだ。他人に教えたら、それだけライバルを増やすことになる。誰も教えちゃくれねェよ」



「それもそうか……」



「オレはなんとしても、魔術実践学の単位をとって、高等魔術実践学を受講しておきたいんだ。それが姉さんに近づくためだから。オレの気持ちはわかってるんだろ? だったら、協力してくれよ」



 頼む、と手を握ってくる。



「わかったよ」
 と、ケネスは根負けすることになった。魔術実践学の単位を落としたくないという気持ちは、ケネスだって同じだ。

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