《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第5-6話「生徒会」


 黒いふりふりドレスを身にまとった少女について、石造りの廊下を歩いてゆく。不意に立ち止るから少女のことを、うっかり蹴り飛ばしそうになった。少女の身長はヴィルザほどしかなく、つまり、ケネスの腰にもおよばない。



「……」



 少女は何かを訴えるように、ある部屋のトビラを見つめていた。木造のトビラで、真鍮製のドアノブがついている。別段、変わったトビラではない。ただ、「生徒会室」というプレートがかかっていた。少女は背を伸ばして、ドアノブを回した。



「お、おい、勝手に入っても良いのかよ」



 少女は振り向いて、大丈夫だと言うようにコクリとうなずいた。物怖じすることなく、入ってゆく。



「失礼します」
 と、ケネスもおずおずと部屋に踏み入った。



 森――かと思った。部屋の中には大量の植物が置かれているのだ。窓辺には鉢植えがあり、天井に取っている梁の上にも、同じように鉢植えが置かれている。部屋の節々にも、大きな植物が育っていた。講義のひとつに薬草学というものがあるが、その講義室とすこし似ていた。窓辺には白いポポコの花も咲いていた。思い出深い花なので、ポポコのことはよくわかる。薬草としても使われるし、冒険者にはなじみ深い。



 机が3つ置かれていた。巨木を横倒しにしたような机なので、ますます森っぽい。そこに座っている2人を見て、ケネスは「あっ」と声をあげることになった。



 2人とも見覚えがあったからだ。



「あーっ。ケネス先輩じゃないですか。どうしたのです! もしかして、私に会いに来てくれたのですかッ? 感激なのですよーッ」



 この元気の具現化みたいな少女とは、ついさきほど会ったばかりだ。



 そしてもう一人――。



「あんだ。コラ? ケンカ売りに来たのか? おう、やってやろうじゃねェか。コラ」



 こっちもさっき出会ったばかりだ。
 生徒会室にいたのはユリトネア・トネトと、サマル・キードの2人だった。



(ああ、そう言えば……)
 生徒会副会長だとサマルが言っていたことを思い出した。




 今にもつかみかかって来んとしているサマルに向かって、黒いふりふりドレスの少女が手のひらを突き付けてきた。サマルは「うっ」と息の詰まったような声を発して、留まってくれたようだ。



 少女はそのまま部屋の奥に向かった。奥には黒板が置かれている。少女は台座の上にのぼると、
チョークで文字を書きはじめた。



『はじめまして。私はクロノ・エヴァグ。このハーディアル魔術学院の3年であり、生徒会長よ。よろしく』



 やはりしゃべれないらしく、筆談となった。



「先輩だったんですね。すみません。タメきいちゃいました」



『気にすることはない。よく間違えられるから』
 クロノと呼んでくれということだった。



「オレはケネス・カートルドです」
『知っている。有名人だもの』



 筆談をしている以上、どうしてもクロノの返答は遅くなるが、チョークが黒板を叩くリズムが心地良かった。まるで何かの楽器のようだ。




「そりゃどうも。で、オレをここに呼んだ理由はなんです?」



『生徒会の人員補充。1年のユリ。3年の私とサマル。この3人しかいない。2年生がいない。ケネスは適任』



「オレが?」



『ケネスは特待生として優秀な成績をおさめているし、《帝国の劫火》として、学院内に知れ渡っている。生徒会にふさわしい人選だと思うけど?』



 言われてみれば、その通りなのだが、そんな大層な人間ではないことは、自分がイチバンよくわかっている。実際に、つまらない講義には昼寝をするし、サボったりもする。



 魔法が優秀なだけで特待生の座を勝ち得たのであって――あるいは、学院長アド・ブルンダの忖度もあるのかもしれないが――日々の態度が評価されたわけではないと思う。




 そもそも――。
「セッカクお誘いしていただきましたが、生徒会なんて、そんな堅苦しいの、オレは厭ですよ」



 魔術実践学の期末テストも近いし、委員会の活動なんかに時間を割く余裕はない。



 そうですよ――と横からサマルが口をはさんできた。



「こんなヤツを生徒会に入れるなんて、オレは反対です。どうせ上っ面だけですよ。たいして強くもないに決まってます」



 本人を前にして、よくそんなことが言える。そう言われると、天邪鬼な考えで、生徒会に入ってやろうかと思えてくる。



 ユリまで口をはさんできた。



「えーッ。入ってくださいなのですよ。ケネス先輩。そしたら毎日、同じ部室で活動できるじゃないですかぁ」



 カツンッ!
 と、クロノが勢いよく黒板をチョークで叩きつけた。真っ二つに折れて、そのカケラがユリの額に直撃していた。「うひゃッ」とユリは頭を押さえていた。クロノは構わず、チョークを走らせた。



『すこしずつこのハーディアル魔術学院の風紀が乱れて来ている』



「そうですか?」



 他の生徒たちの素行に、普段から目を配っているわけではないが、あまり風紀が乱れているという感じはしない。むしろ、煙草を吸いはじめたケネスのほうが、風紀を乱しているとさえ言える。



『不良連中もいないわけじゃないし、もっと重大なことは、ケリュアル王国のスパイが何人か、潜りこんでいる』



「あぁ」
 と、ケネスは声を漏らした。



 ヨナのことを思い出したのだ。スパイがヨナ1人だけだったとは考えにくい。他にも複数人いるのだろう。新しく入ってきた者もいるかもしれない。



『生徒会には、スパイをあぶり出す密命がある。でも、私たちだけじゃ限界がある。優秀な戦力が必要』



「だから、こいつは、そんな優秀な戦力じゃないですってば」
 とサマルが、ケネスの顔を指差してきた。あわやその指が顔に当たりそうになったので、後ろに身を引いた。



『サマルは黙っていなさい。その男の優秀さは、すでに調べ上げている。なんなら、サマルと一騎打ちでもやってみれば良い』



「おう。望むところだぜ。コラ。やんのか、コラ」
 と、ケネスのことを睨んでくる。



「はぁ。カンベンしてくださいよ。メンドウくさい。オレは忙しいんですよ。それじゃあ」



 魔術実践学の期末テストのヒントを考えなければいけないのだ。それに、クロノとユリはまだしも、サマルみたいな男と一緒に活動するのは気がすすまない。



 生徒会室を後にすることにした。
 そのケネスの背中には、いつまでもクロノの視線が絡みついて来るかのようだった。

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