《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第5-3話「サマル・キード」

「おい。お前」



 ユリが立ち去ってくれたので、ケネスも急いで校庭に向かおうとした。チャイムも鳴っているし、早くしないと魔術実践学がはじまってしまう。そう思っていたら、ユリと入れ替わるように、今度は男たちが、声をかけてきた。男たちは3人。ケネスのことを囲むようにした。不穏な空気がたちこめる。



「次はなんだ?」



「《帝国の劫火》とか言われて、調子乗ってんじゃねェぞ。コラ」



 イキナリそんなことを言われても困る。周りが騒ぎ立てているだけで、調子に乗った覚えもない。



「気を付けるから、どいてくれ」



 押しのけようとした。
 もう魔術実践学の講義が校庭ではじまっているはずだ。期末テストが近いのに、遅れたら致命傷になる。



「あぁ? そういうところが調子乗ってんだよ。こっちは先輩だぞ。コラ」



「ああ。そうでしたか。すみません」



「吟遊詩人のユリ姫ちゃんに手ェ出したら、ぶっ殺すからな。コラ」



「ユリ――姫?」
 一瞬、誰のことを言ってるのか、わからなかった。さっきの騒がしい少女のことだとわかった。しかし、あれのどこが姫なのか。



「帝国アイドルのユリ姫ちゃんだよ。そんなことも知らねェのか。もし、ユリ姫ちゃんに手ェだしてみろ、ただじゃおかねェからな。コラ」



「わかりました」



 そんなこと言われる間でもなく、手を出すつもりはない。意中の人がいるわけではないけれど、どうもケネスは色恋沙汰には縁が疎いところがある。それもそのはず、ケネスが女性と話をしようものなら、嫉妬の炎で燃え盛る魔神がついているのだ。



 それに、ケネスはユリが、帝国アイドルとか言われる存在であることも知らなかった。――まあ、たしかに顔立ちは整っていたけど。



「おい。ちゃんとわかってるんだろうな。オレは生徒会副会長のサマル・キードだ。覚えておけよ」



 そう名乗った男は、面長で眉がなかった。そのせいか酷薄そうな印象を受けた。バートリーとよく似た青い髪をしている。



「はいはい」
 と、適当にうながしておいた。




「あんだ? コラ。その適当な返事はよォ」
「講義。急いでるんで」



 つかみかかって来そうな勢いだったので、ケネスは魔法陣を展開して牽制した。サマルは「うっ」と臆していた。その隙にケネスは、校庭へと向かうことにした。



「なんじゃあの男。殺すか?」
 と、ヴィルザが話しかけてきた。



「殺さないって」



「それにしても、さっきのユリなんとやらとかいう娘。アイドルだったのか」



「そうらしい。どうりでサインを書きなれてるわけだ」



 ケネスは己の肩からさげてるバッグを見つめた。茶色い革に黒いインクが染みこんでしまっている。



「帝国アイドルに、いけ好かない先輩。どうも今日はよく絡まれる日じゃな」



「ホントだよ」
 と、ケネスは肩をすくめた。

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