《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-27話「残り6つ」
「勝った……のか」
ケネスはその場に立ち尽くしていた。割れた地面はもとに戻り、ふたたび薫風が優しく平原をナでまわしていた。汗をかいたカラダに、その風が心地よく感じた。ソルトの騎士たちは逃げ去ってゆき、バートリーとフーリン。それから仮面を外したミファが遺されていた。
ソルトが呑み込まれたところには、紅いネックレスが落ちていた。《神の遺物》。戦神カヌスのウロコと聞いている。
「ケネスよ。あれを壊せ」
と、ヴィルザが、その紅のネックレスを指差した。
「え?」
「八角封魔術のひとつかもしれん。呪痕が見えんか?」
「いや。見えるけど……」
ヴィルザはニヤリと微笑んだ。
「やったな。やはり《神の遺物》に呪痕がほどこされておると見て間違いはないな。ほれ、さっさと壊せ」
「でも……」
ヴィルザとは仲直りをしたと言っても、封印を解く否かは、また別問題だ。マディシャンの杖のときは、ひとつぐらいなら良いかという気持ちだった。でも、さすがに2つも壊すのはマズイ。
「ケネス。ちゃんと謝ろうと思っておった。幼馴染を殺したのは悪かった」
「ロールのことか……」
「しかし、そう悲観することはない。王国軍に殺された両親。焼けた故郷。それに殺してしもうた幼馴染。どれもケネスにとっては、辛く悲しいことであろうと思う」
「ああ」
思い出したくもない。
特にロールにいたっては、ヴィルザに操られていたとはいえ、ケネス自身の手で殺してしまったのだ。
ヴィルザの言葉の一片一片が、胸をえぐるようだった。
「しかし、そう悲観することもない。この私の封印が破れれば、もとのチカラを取り戻し、この肉体を顕現することさえできれば、人を生き返らせるなど容易いこと」
「な、なに? 人を生き返らせることが出来るのか?」
ヴィルザは、お腹を抱えて笑った。
「この私を誰と思うておるか。魔神ヴィルザハードじゃ。人の生死など、この掌の上も同然」
その言葉に、ケネスは揺らいだ。
「でも、世界征服。するんだろ」
「諦める。そんなことはせん。だから、封印を解いてくれ。八角封魔術を解いてくれれば、そのお礼に、ケネスの故郷をもとに戻してやる。両親も生き返らせてやるし、あの幼馴染の女も生き返らせてやる」
ヴィルザはケネスの耳元でささやくように言った。
その言葉は、あまりに甘美に満ちていた。桃色の吐息とともに吐き出される言葉は、ケネスの耳朶をうち、鼓膜を振るわせて、脳髄をしびれさせた。
「ホントウに?」
「この魔神に二言はない」
ヴィルザを信じてみようという気になった。こんな魔神を世に放つなど、正気の沙汰ではない。しかし、一度は考えたのだ。世界征服をしないと約束してくれるなら、封印を解くのに協力してやっても良い――と。そして今、ヴィルザは約束をした。世界征服はしないと。
あまつさえ、チカラを取り戻した暁には、ヴィルザはケネスの家族を生き返らせてくれるとまで言った。
ケネスの心は決まった。
「わかった」
ケネスは目の前に落ちている戦神カヌスのウロコに、火球をブツけた。紅き宝玉は哀しげにパリンと砕け散った。
「ふふふっ。ふはははははッ」
ヴィルザの高笑いが、天に轟いた。
残り、6つ。
ケネスはその場に立ち尽くしていた。割れた地面はもとに戻り、ふたたび薫風が優しく平原をナでまわしていた。汗をかいたカラダに、その風が心地よく感じた。ソルトの騎士たちは逃げ去ってゆき、バートリーとフーリン。それから仮面を外したミファが遺されていた。
ソルトが呑み込まれたところには、紅いネックレスが落ちていた。《神の遺物》。戦神カヌスのウロコと聞いている。
「ケネスよ。あれを壊せ」
と、ヴィルザが、その紅のネックレスを指差した。
「え?」
「八角封魔術のひとつかもしれん。呪痕が見えんか?」
「いや。見えるけど……」
ヴィルザはニヤリと微笑んだ。
「やったな。やはり《神の遺物》に呪痕がほどこされておると見て間違いはないな。ほれ、さっさと壊せ」
「でも……」
ヴィルザとは仲直りをしたと言っても、封印を解く否かは、また別問題だ。マディシャンの杖のときは、ひとつぐらいなら良いかという気持ちだった。でも、さすがに2つも壊すのはマズイ。
「ケネス。ちゃんと謝ろうと思っておった。幼馴染を殺したのは悪かった」
「ロールのことか……」
「しかし、そう悲観することはない。王国軍に殺された両親。焼けた故郷。それに殺してしもうた幼馴染。どれもケネスにとっては、辛く悲しいことであろうと思う」
「ああ」
思い出したくもない。
特にロールにいたっては、ヴィルザに操られていたとはいえ、ケネス自身の手で殺してしまったのだ。
ヴィルザの言葉の一片一片が、胸をえぐるようだった。
「しかし、そう悲観することもない。この私の封印が破れれば、もとのチカラを取り戻し、この肉体を顕現することさえできれば、人を生き返らせるなど容易いこと」
「な、なに? 人を生き返らせることが出来るのか?」
ヴィルザは、お腹を抱えて笑った。
「この私を誰と思うておるか。魔神ヴィルザハードじゃ。人の生死など、この掌の上も同然」
その言葉に、ケネスは揺らいだ。
「でも、世界征服。するんだろ」
「諦める。そんなことはせん。だから、封印を解いてくれ。八角封魔術を解いてくれれば、そのお礼に、ケネスの故郷をもとに戻してやる。両親も生き返らせてやるし、あの幼馴染の女も生き返らせてやる」
ヴィルザはケネスの耳元でささやくように言った。
その言葉は、あまりに甘美に満ちていた。桃色の吐息とともに吐き出される言葉は、ケネスの耳朶をうち、鼓膜を振るわせて、脳髄をしびれさせた。
「ホントウに?」
「この魔神に二言はない」
ヴィルザを信じてみようという気になった。こんな魔神を世に放つなど、正気の沙汰ではない。しかし、一度は考えたのだ。世界征服をしないと約束してくれるなら、封印を解くのに協力してやっても良い――と。そして今、ヴィルザは約束をした。世界征服はしないと。
あまつさえ、チカラを取り戻した暁には、ヴィルザはケネスの家族を生き返らせてくれるとまで言った。
ケネスの心は決まった。
「わかった」
ケネスは目の前に落ちている戦神カヌスのウロコに、火球をブツけた。紅き宝玉は哀しげにパリンと砕け散った。
「ふふふっ。ふはははははッ」
ヴィルザの高笑いが、天に轟いた。
残り、6つ。
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