《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第4.26話「ケネスVSソルト Ⅴ」

 ソルト・ドラグニルとケネス・カートルドの一騎打ちを、バートリーはソルト率いる王国騎士たちに捕えられたカッコウで観戦していた。



 ケネスは一度、シュネイの村でソルトを追い返している。だが、その現場を、バートリーは見ていない。これがはじめての観戦となる。



 王国3大剣帝のひとりソルト・ドラグニル。対する《帝国の劫火》。ケネス・カートルド。2人がどういう戦いをするのか、見物だった。



 が――。
「押されていますわね」
 と、フーリンが不安気な声で言った。



 ソルトはドラゴンとなって、ケネスを圧倒していた。この戦いには、バートリーの命運がかかっている。是非ともケネスには勝ってもらいたいのだが、それよりも、バートリーはケネスの様子に疑問を抱いた。



(どういうことでしょう?)



 ケネス・カートルドという男は、尋常ではないぐらいに強い。それはバートリーが見ている。
しかし、あのときの精彩がない。



 大幅に魔力が弱くなっているのだ。それに使う魔法も、火系統のものばかりだ。帝都では、あらゆる系統の魔法を使いこなしていたはずだ。この状況下で、手加減しているとも思えない。



 ソルトが一方的にケネスを押していたのだが、不意にケネスが立ち上がった。



「準備が整った」



「ほお。面白い。まだオレとやりあえるチカラが残っているか。ならば、これで終わらせてやる」



 ドラゴンを化して、青い空を悠々と飛んでいたソルトは、ケネスめがけて垂直に降下してきた。ケネスは地上に踏ん張って、ソルトをにらみあげている。



 2人が衝突する。



 激しい砂塵がまきおこって、観戦していたバートリーは何度も目をしばたかせた。目をこすろうにも、縄で縛られているため出来ない。



「あ……」
 と、バートリーは声を漏らした。
 ケネスが、死んだかもしれないと思ったのだ。――が。



 砂塵が晴れてゆくと、想像もしていなかった景色があらわれた。土系基礎魔法の《岩の手》と思われるものが2本、地面から生えていた。それも半端な大きさではない。城の主塔ぐらいはあるだろうと思われる大きさのものが2本だ。それがガッシリと、ソルトのカラダをつかんでいた。



「おおっ」
 と、バートリーは全身に鳥肌がたつのを感じた。



 これだ。
 これが、ケネス・カートルドなのだ。
 天衣無縫の強さ。
 技巧や小細工を弄する必要はイッサイない。ただただ強いのだ。



「うおぉッ」
 と、ソルトはうめいた。



 巨大な岩の手につかまれて潰されそうになっているところを、なんとか脱したようだ。岩の手がその場で崩れ落ちて、岩なだれのように落ちてくる。ソルトの騎士たちが、あわえて距離をとっていた。



「やるなァ。コゾウ。ようやく本気になったってわけか。けど、オレだって、そう簡単にやられるわけにゃ、いかねェのよ!」



 この2人の戦は、まだまだ続きそうに思われた。まるで神話の戦いを見ているかのようだ。戦神カヌスと――ケネスは、魔術の神マディシャンといったところか。



「え……?」
 と、バートリーは唖然として見つめた。



 地が割れていた。



 その地割れのあいまから、巨大な赤黒い手が蛇の大群のように生えてきた。その手が、空を飛ぶソルトをつかむ。ソルトは振り払おうとしていたが、一本二本とからみつかれて、ついにはからめ捕られてしまっていた。無数の手がソルトをつかんだまま、割れた地面のなかに引きずり込む。



「うおぉぉぉッ」
 と、咆哮を残しつつ、ソルトは完全に食われてしまった。まるで大地に食われたかのようだ。割れていたはずの地面はピタリとまた、口を閉ざしていた。



 静寂が訪れた。
 ケネスの勝利だ。



 それを実感したソルトの騎士たちが、1人2人と逃げはじめて、大騒ぎになった。逃げ惑う騎士の波に流されながらもバートリーは唖然としていた。



(今の魔法って……)
 火、水、土、風――。



 魔法というのは、それらを組み合わせて、ある程度は自在にあやつることができる。しかし、どうやっても発することの出来ない、神話の時代にのみ存在していた魔法がある。それは、魔神ヴィルザハードが使ったとされる、「悪」系統の魔法。他の神々にも、その魔法を使うことはできなかったと言い伝えられている。



 バートリーの背中に冷や汗が流れていた。



(今のは、悪系統の魔法じゃなかった? でも、まさか、そんなわけ……)



 弱かったり、強かったりするケネス。そして急に強くなったかと思いきや、悪系統の魔法を放った。



 それも生半可な魔法ではない。
 おそらくは、A級最上位――神の領域とされる魔法だ。



 何かわかりそうなのだが、まだよくわからない。
 しかし、ひとつだけ判明したことがある。



 ただ強いだけではない。ケネス・カートルドのあの強さには、何か秘密があるのだ。

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