《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第4-25話「ケネスVSソルト Ⅳ」

 ケネスは逃げ回っていた。相手は天をも覆う黒龍である。その漆黒の翼をはためかせて、ケネスを追いかけまわしてくる。とは言っても、走り回る距離は限られている。一騎打ちの舞台は、ソルトの部隊によって包囲されているからだ。



「火系基礎魔法。《火球ファイヤー・ボール》」



 撃つ。
 だが、炎の球は黒きドラゴンのウロコによって、防がれてしまう。



「ムダだ。ムダだ。こう見えても、オレぁ、帝国3大剣帝の名をいただいてるんだ。そんな乳臭い魔法でやられるかよ」



 地を揺るがすような声が、降り注いでくる。



(クソ……)
 と、ケネスは歯噛みした。



 このままでは、やられる。ヴィルザの余韻である魔力を使っても、まだ、ソルトには及ばない。



(どうすりゃ良い?)



 凶悪なキバの生えたノド奥から、炎が勢いよく吐き落とされる。ケネスは辛うじて、それをかわしたが、つまずいてしまった。つまずいたヒョウシに、ポケットに何かが入っている感触があった。ポケットに手を入れると、ビックリするほど冷たい感触があった。



(これは!)



 そこにあったのは、ミファから取り上げた、魔力覚醒剤だった。アンデットのカラダみたく冷え冷えとしていた。



 使うか? 迷った。これを使えば、マトモな人間ではいられなくなる。もしかすると依存症になり、やめられなくなるかもしれない。



 それでも――。
 ここで使わなければ、殺されてしまう。



(仕方ない……か)



 ケネスはポケットの薬を取り出した。否。取り出しそうになったときだった。そんなケネスの手を、抑えつけてくる手があった。



「そこまで堕ちることはない。ケネスよ」



 ケネスは視線をあげた。その視界には、紅色になびく艶やかな髪が見えた。その頭部には、獰猛な巻き角が生えている。そして血のように赤い双眸が、ジッとケネスを見つめていた。



「ヴィルザ……」



 ケンカして別れた。
 しばし、1人の時間を楽しんだ。
 でも。
 悔しいけど。
 ヴィルザの姿を目にすると、安心感がこみ上げてきたのだった。



「まだ怒っているのかもしれん。私はたぶん、コゾウの大切なものを奪ってしもうたんであろう。それは謝る。じゃが今は、私のチカラを必要としているのではないか?」



 ヴィルザに助け起こされるようにして、ケネスは立ち上がった。ヴィルザの紅色の瞳がやどる、目元が真っ赤に爛れていた。



 泣いたあとみたいだ。
 もしかして、ケネスが絶交を宣言したあと、ひとりで泣いていたのかもしれない。



「オレを、助けてくれるのか?」



「当たり前じゃ。私はまだケネスに死なれると困る。ケネスを守るためならば、このチカラ使うに惜しむことはない」



「また、オレのカラダを奪ったりはしないだろうな?」



 そう言うと、ヴィルザは申し訳なさそうにうつむいた。そして、わずかにアゴをあげて、上目使いをおくってくる。



「あれは、出来心じゃった」
「オレにとっては、死活問題だ」



「でも、心配することはない。私のチカラは、ケネスの魔法陣を通してしか発現することはない。この意味。わかるな? ケネスのカラダを奪うためには、ケネス自身が魔法陣を出しっぱなしにしていなければならん。もし、私にカラダを奪われると思ったら、魔法陣をしまえば良い」



「そうか」



「仲直り……しては、くれぬか? ケネスがいてくれんと、私は、ずっと1人なんだ。だから、その……ごめんなさい。その目でもう一度、私を視て欲しい」



 上目使いのまま、その瞳には涙が浮かび上がっていた。幼い少女が、目に涙を浮かべて謝る姿は、ケネスの琴線に触れるものがあった。



「オレのほうも悪かった。世話になってたのに、一方的に突き離しすぎた。オレはやっぱり、ヴィルザがいないとまだまだ弱いみたいだ」



 ケネスがヴィルザの頭をナでると、ヴィルザははにかむようにして微笑んだ。真珠のような歯と、八重歯と呼ぶには鋭すぎるキバがかいま見えた。



「ケネスよ」
「ん?」



「安心せい。コゾウは、目を見張る速度で成長しておる。ただ今回は、相手がチッと悪いというだけだ」



 ドラゴンを、ケネスの頭上を飛びすぎて行った。ソルトの豪快な笑い声が降り注いできた。



「はーはははッ。どうした? 何をブツブツ言っている? このオレを前に怖れをなしたか?」



「いや。ソルト・ドラグニル。待たせたな」
「なに?」
「準備が整った」



 ケネスはふたたび立ち上がった。ソルトの目には見えていないだろう。その隣に立つ、紅き魔神の姿が。

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