《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第4-24話「ケネスVSソルト Ⅲ」

 ケネスとソルトは対峙している。場所は平原の真っただ中。夏の気配をはらんだ薫風が、足元の緑をやさしくなびかせる。



 空は青く、白い雲がノンビリと漂っている、のどかな春景とはウラハラに、ケネスとソルトのあいだには、物凄い闘気が渦巻くことになった。



「もしオレが勝ったら、ヘッケラン・バートリーとフィント・フーリンの2名はもらう。それに、公爵令嬢さまも後でオシオキしてやる」



 ケネスとソルトの周囲には、ソルトの騎士たちが円をつくっている。バートリーたちは縛られていた。



「オレが勝ったら?」



「そうだな。コゾウが勝てたら、命の保障はしてやる。無事に帝国まで帰れるように、オレの部下たちに手配させてやる。あと、上げられるもんって言えば、こいつかねぇ」
 と、ソルトは首にかかっているネックレスを、つまみあげた。



 紅色の輝きを、まばゆいばかりに放っている。



「それは?」



「《神の遺物アーティファクト》。戦神カヌスが遺した、ドラゴンのウロコだ。まぁ、オレに勝つことが出来れば、くれてやるさ」



神の遺物アーティファクト



 それを聞くと、どうしてもヴィルザのことを思い出してしまう。《神の遺物アーティファクト》のひとつであるマディシャンの杖が、八角封魔術の1つだった。ならば、そのドラゴンのウロコも、そうである可能性が高い。



《可視化》
 見てみると、ネックレスには、何やら妙な紋様が刻まれているのが見て取れた。



(あれが、呪痕か?)
 マディシャンの杖にも、同じような紋様があった気がする。



 ならば、あれもまたヴィルザの封印を解くカギのひとつになっているわけだ。



「どうした? あまりの輝きに見惚れたか? コゾウと戦うために、わざわざ持ってきたんだよ。こいつは、人の理性をむしばむ禁断のチカラだ。とはいえ、これがなきゃコゾウには勝てんと思ったからな」



 さて、無駄話はこれぐらいにして、はじめるとするか――とソルトが言った。一騎打ちの合図である銅鑼が鳴り響いた。それと同時に、まるで空気を読んだかのように、風がピタリとやんだ。



「さあ。来い!」
 ソルトは剣を抜きはらった。



 別に特徴のない、ロングソードだった。日差しを受けて、威勢よく輝きを放っている。その眩しさにケネスは目を細めた。その隙を突くかのように、ソルトが疾駆して距離を詰めてきた。



「あんまりナめてると、痛い目みるぜ!」
 ソルトの剣が突き出される。
 ケネスは魔法で対抗することにした。



「火系基礎魔法。《火球ファイヤー・ボール》」



 魔法陣より、炎の球が生み出されて、ソルトに直撃した。避けられると思っていたので、直撃したのが意外だった。しかしさらに意外だったのは、ソルトにはヤケドひとつついていないことだ。モウロウとけぶるケムリのなかから、ソルトは平然と跳び出してきた。



「甘いな。コゾウ。オレのカラダはドラゴンの恩恵に守られているのだ。この程度の魔法。痛くもカユくもないわ!」



 ロングソードが突き出される。ケネスは身をよじってかわした。後ろの下がろうとするのだが、ソルトがなかなか間合いから逃がしてくれなかった。猛然と剣を突き入れてくる。



「逃がすものか! 魔術師にとっては、近接攻撃がイチバン苦手なのだろう!」



「ちッ」
 ケネスはくわえていた煙草を、その場に落とした。煙草が魔法陣をまとって、その場で爆発を起こす。そのおかげで、ふたたびソルトと距離を取ることに成功した。



(やっぱり、普通にやって勝てる相手じゃないか)



 右手を見つめる。
 ヴィルザが遺したチカラに頼るしかない。



「火系上位魔法《酸の霧アシッド・フォグ》」



 魔法陣を展開して、今度はそこから白い蒸気のようなものが発生した。思い出深い魔法だ。ベルモンド・ゴーランを殺した魔法。そして、ジャイアント・ゴブリンを倒して一段階成長を成し遂げた魔法。



 酸の霧が、ソルトのカラダを包んでゆく。



(やったか?)
 と、ケネスは目を細めて、霧を見つめた。



 しかし――。



「ほお。さすが――といったところか。その歳で上位魔法を扱うとはな。コゾウの年齢なら、賞賛に値するレベルだろう」



「……ッ」
 絶句した。
 ソルトは、酸の霧のなかでも平然と立っていたのだ。



「なんだぁ。このぬるま湯みてェな、魔法はよ。もっと本気を出したほうが良いぜ。オレをナめるのも良いかげんにしな」



 ソルトがふたたび距離を詰めてくる。
 一閃。
 ケネスの左肩から右の腹にかけて、浅く斬られた。ブリオーの内側にはミノタウロスの革でできた鎧をまとっていたけれど、ソルトの一閃はそれを簡単に裂いていた。



「ははーん。なるほどね。どうやら今は本気を出せないらしいな。あんな常識破りの魔法なんだ。そう連発はできないってわけか。そうとわかれば、いっきに片付けさせてもらうぜ」



 ソルトのカラダが変形してゆく。いっきに全身が膨張したように見えた。首が伸びて、手足もそれに合わせて伸びていく。そして全身を黒い鎧が覆ってゆく。ドラゴンと化したソルトは、はるか高みからケネスのことを見下ろしていた。その首元に、《神の遺物アーティファクト》のネックレスが埋め込まれていた。



「チカラを使えないうちに、始末させてもらうぜ。コゾウ」
 と、ソルトは火を吹いたのだった。 

「《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く