《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-21話「救出」
フィント・フーリンという者が地下牢に捕まっているので、助けて欲しい――とバートリーは言った。
その言葉を受けて、ケネスとミファはバートリーもまじえて、地下牢に向かうことにした。
バートリーともう一人の女性が、捕虜となっているのは、ケネスも知っていたし、鼻っから助けるつもりではあった。
助けて欲しい――とバートリーは言ったが、そのくせ、そのバートリーが率先してソルトの騎士たちを魔法で圧倒してゆくので、もはやケネスの出番はなかった。
ヘッケラン・バートリー。ガルシアに目をかけられ、幼いころより特別な訓練を積んできた少女。やはり、もともとの実力で比べれば、ケネスよりも、はるか高みにいる女性だった。
「ケネスさまは、お疲れでしょう。こんな王国の土地まで、1人で来られたのです。ここからは私にお任せください」
と、いう弁だ。
そう言われると、頼もしい。
鬱屈とした地下牢にもぐり、ようやくフーリンの捕まっている檻を見つけ出した。フーリンもまた、バートリーと同様、粗悪なチュニックを着せられて、その白く瑞々しい肌には、真っ赤なミミズバレをこしらえていた。金髪を縦巻きロールにしている。いかにもお嬢様といった印象を受ける。ミファよりも公爵令嬢っぽい見た目をしている。そのミファは、仮面をつけたまま大人しくしていた。
バートリーはフーリンの手枷を解きはじめた。
「あぁ。バートリーさま。さすがですわね。脱出に成功したのですね」
「いえ。私が自力で脱出したわけではありません。彼が助けてくれたのです」
「誰です?」
フーリンが胡乱な表情で見てきた。ケネスは仮面をはずして、軽く会釈しておいた。
「ケネス・カートルドです。以前にも話したでしょう」
と、バートリーが言っていた。
「そうですか。彼がウワサの……」
手枷がはずれて、フーリンの身が自由になった。いまだ傷跡の癒えぬ、2人のうら若き乙女が自分のことを話している。そう思うと、ケネスは面映ゆい気持ちになった。仮面があればこそ良かったが、なければ赤面をさらしていたかもしれない。
バートリーとフーリンを救い出して、暗い地下牢を後にした。地下牢は苦悶と怨嗟の声に満ちており、一秒でも長くいると、精神衛生に良くない場所に感じられた。普段から入るような場所でもないので、ケネスにとっては慣れぬ場所だった。
地下牢から地上に上がる階段で、バートリーが話しかけてきた。
「囚人たちを解き放ち、混乱を大きくするという方法もありますが、いかがいたしましょうか?」
「いや。どんなヤツが捕えられてるかも、わかりません。やめておきましょう」
無差別に襲いかかってくる凶悪犯でも捕えられていたら、大変だ。そもそも、なぜオレに訊くんだ――と首をかしげた。そういったことは、バートリーが判断すれば良いと思う。
「ケネスさまが、そうおっしゃるのであれば」
「別にオレの意見なんか、聞かなくても……」
「この都市で起きている混乱も、ケネスさまの策略なのでしょう? でしたら、ここはケネスさまの指示に従うべきかと思いまして」
「そうですか」
都市の騒動も、別にケネスの策略というわけではない。ミファのことを紹介していなかったし、説明しようかと思ったが、ノンビリと話している時間もない。
「この国からの脱出経路は確保しておられるのですか?」
「ここに転移石があります」
ガラス箱に封じられた転移石――。ハーディアル魔術学院につながるものだ。イザというときは、これを使えば良い。
「なるほど。この大きさの石なら、5人ぐらいは転移することが出来そうですね」
「ええ」
ケネスとバートリーとフーリン。
それから、ミファと連れて行くには充分だろう。
ただし転移石は慎重に使わなければならない。みんな一度に触れなければいけないし、これはハーディアル魔術学院への一方通行だ。一度向こうに行けば、こっちに戻ってくることは出来ない。
「ならば今、戻るのも手ですが」
バートリーとフーリンを助けだしたのだ。たしかにここで戻るのも、ひとつの手段ではある。
しかし――。
「申し訳ありません。オレはまだ、やり残したことがあるんです」
ソルト・ドラグニル。
故郷を焼き滅ぼしたあの男を殺さなくては、ここまで来た意味がない。今はすこし冷静さを取り戻してはいるが、もともとは憎悪の炎に駆り立てられて、ここまで来たのだ。
「私たちも可能なかぎり、援護します。ケネスさまのお役に立てるかどうかは、わかりませんが」
「ありがとうございます」
ソルト・ドラグニルと対峙するのは、二度目になる。1度目は、ヴィルザに操られていたので常識破りな魔力を発揮することができた。しかし、そのときの記憶は定かではない。ボーッと霞が勝った向こうに、かすかに覚えている程度だ。
ヴィルザなしの今、あのドラゴンのバケモノと対峙することが出来るのか……。
両親を殺された恨みの炎、臆病風ごときに吹き消されてたまるものか――とケネスは石段をのぼった。
その言葉を受けて、ケネスとミファはバートリーもまじえて、地下牢に向かうことにした。
バートリーともう一人の女性が、捕虜となっているのは、ケネスも知っていたし、鼻っから助けるつもりではあった。
助けて欲しい――とバートリーは言ったが、そのくせ、そのバートリーが率先してソルトの騎士たちを魔法で圧倒してゆくので、もはやケネスの出番はなかった。
ヘッケラン・バートリー。ガルシアに目をかけられ、幼いころより特別な訓練を積んできた少女。やはり、もともとの実力で比べれば、ケネスよりも、はるか高みにいる女性だった。
「ケネスさまは、お疲れでしょう。こんな王国の土地まで、1人で来られたのです。ここからは私にお任せください」
と、いう弁だ。
そう言われると、頼もしい。
鬱屈とした地下牢にもぐり、ようやくフーリンの捕まっている檻を見つけ出した。フーリンもまた、バートリーと同様、粗悪なチュニックを着せられて、その白く瑞々しい肌には、真っ赤なミミズバレをこしらえていた。金髪を縦巻きロールにしている。いかにもお嬢様といった印象を受ける。ミファよりも公爵令嬢っぽい見た目をしている。そのミファは、仮面をつけたまま大人しくしていた。
バートリーはフーリンの手枷を解きはじめた。
「あぁ。バートリーさま。さすがですわね。脱出に成功したのですね」
「いえ。私が自力で脱出したわけではありません。彼が助けてくれたのです」
「誰です?」
フーリンが胡乱な表情で見てきた。ケネスは仮面をはずして、軽く会釈しておいた。
「ケネス・カートルドです。以前にも話したでしょう」
と、バートリーが言っていた。
「そうですか。彼がウワサの……」
手枷がはずれて、フーリンの身が自由になった。いまだ傷跡の癒えぬ、2人のうら若き乙女が自分のことを話している。そう思うと、ケネスは面映ゆい気持ちになった。仮面があればこそ良かったが、なければ赤面をさらしていたかもしれない。
バートリーとフーリンを救い出して、暗い地下牢を後にした。地下牢は苦悶と怨嗟の声に満ちており、一秒でも長くいると、精神衛生に良くない場所に感じられた。普段から入るような場所でもないので、ケネスにとっては慣れぬ場所だった。
地下牢から地上に上がる階段で、バートリーが話しかけてきた。
「囚人たちを解き放ち、混乱を大きくするという方法もありますが、いかがいたしましょうか?」
「いや。どんなヤツが捕えられてるかも、わかりません。やめておきましょう」
無差別に襲いかかってくる凶悪犯でも捕えられていたら、大変だ。そもそも、なぜオレに訊くんだ――と首をかしげた。そういったことは、バートリーが判断すれば良いと思う。
「ケネスさまが、そうおっしゃるのであれば」
「別にオレの意見なんか、聞かなくても……」
「この都市で起きている混乱も、ケネスさまの策略なのでしょう? でしたら、ここはケネスさまの指示に従うべきかと思いまして」
「そうですか」
都市の騒動も、別にケネスの策略というわけではない。ミファのことを紹介していなかったし、説明しようかと思ったが、ノンビリと話している時間もない。
「この国からの脱出経路は確保しておられるのですか?」
「ここに転移石があります」
ガラス箱に封じられた転移石――。ハーディアル魔術学院につながるものだ。イザというときは、これを使えば良い。
「なるほど。この大きさの石なら、5人ぐらいは転移することが出来そうですね」
「ええ」
ケネスとバートリーとフーリン。
それから、ミファと連れて行くには充分だろう。
ただし転移石は慎重に使わなければならない。みんな一度に触れなければいけないし、これはハーディアル魔術学院への一方通行だ。一度向こうに行けば、こっちに戻ってくることは出来ない。
「ならば今、戻るのも手ですが」
バートリーとフーリンを助けだしたのだ。たしかにここで戻るのも、ひとつの手段ではある。
しかし――。
「申し訳ありません。オレはまだ、やり残したことがあるんです」
ソルト・ドラグニル。
故郷を焼き滅ぼしたあの男を殺さなくては、ここまで来た意味がない。今はすこし冷静さを取り戻してはいるが、もともとは憎悪の炎に駆り立てられて、ここまで来たのだ。
「私たちも可能なかぎり、援護します。ケネスさまのお役に立てるかどうかは、わかりませんが」
「ありがとうございます」
ソルト・ドラグニルと対峙するのは、二度目になる。1度目は、ヴィルザに操られていたので常識破りな魔力を発揮することができた。しかし、そのときの記憶は定かではない。ボーッと霞が勝った向こうに、かすかに覚えている程度だ。
ヴィルザなしの今、あのドラゴンのバケモノと対峙することが出来るのか……。
両親を殺された恨みの炎、臆病風ごときに吹き消されてたまるものか――とケネスは石段をのぼった。
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