《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-20話「暴動 Ⅳ」
ベッドに沈み込んだバートリーは深く目を閉ざしていた。動悸がおさまらない。自分の心臓の音がうるさいぐらいだった。
期待――してしまうのだ。
外で騒ぎが起きている。
もしかして自分を助けに来た騒ぎなのではないかと思ってしまう。ベッドに縛り付けられたままだから、わからないが、ケネス・カートルドがどうこうとソルトは言っていた。
(でも、まさかケネスさまが?)
助けに来るなら、帝国の部隊だろうと思っていた。ケネスが来るとは、考えていなかった。
ケネスが部隊を引き連れてきたのか? それとも単独で乗り込んできたのか? 何が起きているのかわからない。そもそも、助けに来たというのが、思い込みなのかもしれない。助かると期待してしまう。もし違っていた場合に、大きなショックがあることを、わかっていながらも、灰色の絶望に垂れてきた一筋の光明にすがりつきたくなる。もう拷問は厭なのだ。
「おい。トビラ。開いてるぞ」
バートリーのことを見張っていたソルトの騎士の1人が言った。それを合図に、バートリーは目を開けた。たしかにこの部屋ゆいいつの出入り口となるトビラが小さく開けられていた。
誰か開けたのか。勝手に開いたようだ――などというヤリトリをして、騎士の1人が閉めに行った。その際、ただトビラを閉めに行って、油断していたであろう騎士は、「おわっ」と叫び声をあげた。トツジョとして、トビラの向こうから炎がたちのぼり、その油断していたであろう騎士に襲いかかったのだ。
「なんだ?」
「どうした!」
他の騎士たちがどよめくなか、燃える騎士の向こうに、バートリーは2人の人影をみとめた。仮面をしている。ひとりは女だとわかった。もうひとりは、仮面をしていてもハッキリとわかった。ケネス・カートルドだ。その姿を見たときに、バートリーは「助かった」と、大きな安堵を覚えざるをえなかった。
「かかれッ」
「曲者だッ」
バートリーの護衛についていた騎士たちは、その手に剣や槍を構える。なかには魔法陣を発するものもいた。
1人目の騎士がロングソードを上段に構えて、ケネスに襲いかかった。ケネスは火球を撃った。騎士の腹に直撃する。鎖帷子でかためていてもなお、火球はきくようだ。昏倒していた。
「よくもッ」
「左右から、挟むぞッ」
2人の騎士が、ケネスのことを挟み込むように、斬りかかる。ケネスは両手を広げて、左右に魔法陣を展開すると同時に、その場で爆発を起こした。2人の騎士は木端微塵になっていた。
(強い……)
ここの騎士たちは、鎧に多少は魔力を練り込んでいるはずで、それなりに魔法にたいしては耐性があるはずだ。その鎧をものともしない魔法は、さすがケネスといったところだ。
(でも、何か……)
何か、違う。
バートリーの知っているケネスの魔法とは、何かが違って見えた。以前、帝都で助けられたときに見たものは、もっと狂気を帯びていた。見る者をゾッとさせる何かがあったのだ。今も多少、その性質の魔力を感じるのだが、薄まっているようにも思える。今のケネスになら、バートリーでも勝てる気がする。以前、帝都で見た魔法は、バートリーなど足元にも及ばない魔法だった。
(そうか……)
もしかすると、被害を大きくしないために、手加減しているのかもしれないと納得することにした。
そもそも、強さなどバートリーにとっては、あまり問題ではない。助けに来てくれたのだ。これで助けられるのは2度目になる。
「御無事ですか」
8人の騎士を片付けると、ケネスは仮面を取った。ケネス・カートルドの顔があった。ケネスだとわかってはいたが、その顔を見ると安心できた。
ケネスがバートリーの縄をほどく。そのうえ、バートリーの粗末な服をあわれに思ったのか、羽織っていた黒い外套まで着させてくれた。外套にはケネスの温もりが残っていて、まるで彼に抱かれているかのようだった。
「ありがとうございます。助けられるのは、これで2度目ですね」
「お気になさらず」
バートリーを縛っていた縄には、魔力を封じる効果が込められていた。縄が解けたことによって、バートリーも魔法を発することが出来る。
「帝国軍が、救援部隊を出してくれたのですか?」
「いえ。残念ながら、オレひとりです」
「ひとりで、私を助けに?」
「助けに来たというか……ええ、まぁ……」
と、ケネスは困ったような顔をすると、ふたたびその顔に仮面をつけていた。
「感謝いたします」
仔細はわからぬが、帝国軍としてではなく、ケネスが単身で乗り込んできたのは事実。1人で我が身を助けに来てくれたのかと思うと、感激すらおぼえる。
「実は、もうひとり、助けてもらいたい人がいるのですが」
と、バートリーはフーリンのことを伝えた。
期待――してしまうのだ。
外で騒ぎが起きている。
もしかして自分を助けに来た騒ぎなのではないかと思ってしまう。ベッドに縛り付けられたままだから、わからないが、ケネス・カートルドがどうこうとソルトは言っていた。
(でも、まさかケネスさまが?)
助けに来るなら、帝国の部隊だろうと思っていた。ケネスが来るとは、考えていなかった。
ケネスが部隊を引き連れてきたのか? それとも単独で乗り込んできたのか? 何が起きているのかわからない。そもそも、助けに来たというのが、思い込みなのかもしれない。助かると期待してしまう。もし違っていた場合に、大きなショックがあることを、わかっていながらも、灰色の絶望に垂れてきた一筋の光明にすがりつきたくなる。もう拷問は厭なのだ。
「おい。トビラ。開いてるぞ」
バートリーのことを見張っていたソルトの騎士の1人が言った。それを合図に、バートリーは目を開けた。たしかにこの部屋ゆいいつの出入り口となるトビラが小さく開けられていた。
誰か開けたのか。勝手に開いたようだ――などというヤリトリをして、騎士の1人が閉めに行った。その際、ただトビラを閉めに行って、油断していたであろう騎士は、「おわっ」と叫び声をあげた。トツジョとして、トビラの向こうから炎がたちのぼり、その油断していたであろう騎士に襲いかかったのだ。
「なんだ?」
「どうした!」
他の騎士たちがどよめくなか、燃える騎士の向こうに、バートリーは2人の人影をみとめた。仮面をしている。ひとりは女だとわかった。もうひとりは、仮面をしていてもハッキリとわかった。ケネス・カートルドだ。その姿を見たときに、バートリーは「助かった」と、大きな安堵を覚えざるをえなかった。
「かかれッ」
「曲者だッ」
バートリーの護衛についていた騎士たちは、その手に剣や槍を構える。なかには魔法陣を発するものもいた。
1人目の騎士がロングソードを上段に構えて、ケネスに襲いかかった。ケネスは火球を撃った。騎士の腹に直撃する。鎖帷子でかためていてもなお、火球はきくようだ。昏倒していた。
「よくもッ」
「左右から、挟むぞッ」
2人の騎士が、ケネスのことを挟み込むように、斬りかかる。ケネスは両手を広げて、左右に魔法陣を展開すると同時に、その場で爆発を起こした。2人の騎士は木端微塵になっていた。
(強い……)
ここの騎士たちは、鎧に多少は魔力を練り込んでいるはずで、それなりに魔法にたいしては耐性があるはずだ。その鎧をものともしない魔法は、さすがケネスといったところだ。
(でも、何か……)
何か、違う。
バートリーの知っているケネスの魔法とは、何かが違って見えた。以前、帝都で助けられたときに見たものは、もっと狂気を帯びていた。見る者をゾッとさせる何かがあったのだ。今も多少、その性質の魔力を感じるのだが、薄まっているようにも思える。今のケネスになら、バートリーでも勝てる気がする。以前、帝都で見た魔法は、バートリーなど足元にも及ばない魔法だった。
(そうか……)
もしかすると、被害を大きくしないために、手加減しているのかもしれないと納得することにした。
そもそも、強さなどバートリーにとっては、あまり問題ではない。助けに来てくれたのだ。これで助けられるのは2度目になる。
「御無事ですか」
8人の騎士を片付けると、ケネスは仮面を取った。ケネス・カートルドの顔があった。ケネスだとわかってはいたが、その顔を見ると安心できた。
ケネスがバートリーの縄をほどく。そのうえ、バートリーの粗末な服をあわれに思ったのか、羽織っていた黒い外套まで着させてくれた。外套にはケネスの温もりが残っていて、まるで彼に抱かれているかのようだった。
「ありがとうございます。助けられるのは、これで2度目ですね」
「お気になさらず」
バートリーを縛っていた縄には、魔力を封じる効果が込められていた。縄が解けたことによって、バートリーも魔法を発することが出来る。
「帝国軍が、救援部隊を出してくれたのですか?」
「いえ。残念ながら、オレひとりです」
「ひとりで、私を助けに?」
「助けに来たというか……ええ、まぁ……」
と、ケネスは困ったような顔をすると、ふたたびその顔に仮面をつけていた。
「感謝いたします」
仔細はわからぬが、帝国軍としてではなく、ケネスが単身で乗り込んできたのは事実。1人で我が身を助けに来てくれたのかと思うと、感激すらおぼえる。
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