《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-19話「暴動 Ⅲ」
領主館は小高い丘の上にある。その周囲を鉄柵で囲んでいて、門前には王国騎士が立ちはだかっていた。
「火系基礎魔法。《火球》」
火球で門前の王国騎士を吹き飛ばした。右手に秘められたヴィルザのチカラには、頼らなかった。けれど、それでも充分な大きさの火球を放つことができた。王国騎士は鎖帷子をしていたが、簡単に吹き飛ばすことができた。跳ばされた王国騎士は、門に背中を打ちつけて気絶していた。
確実に、強くなっている。
成長しているのだ。
「そう言えば、ケネスって、火系統の魔法ばかり使うのね」
「他の魔法もチョットは使えるけどな。火がイチバン得意なんだよ」
それを教えてくれたのも、ヴィルザだったなと思い出した。ヴィルザのことを思い出すたびに、胸の奥がチクリと痛む。
(名残惜しいのか?)
そうかもしれない。
ずっと一緒にやってきた仲だった。
いまさらだが、もっと話し合っていれば良かったと後悔する。あのときは、故郷を焼かれて、操られたカラダで幼馴染のロールを殺してしまい、動転していたのだ。
「ボーッとしない」
「悪い」
「私にはわかるわよ。ケネスってば、今、別の女のことを考えてたでしょう」
「そんなんじゃないよ」
「まぁ良いけどね」
と、ミファはむくれていた。
丘をのぼって、領主館の前にたどりついた。ミファの屋敷とは対照的な純白の館だ。《可視化》で内部構造を見通した。バートリーの居場所をすぐに見破った。ボロキレのようなチュニック1枚でベッドに縛り付けられている姿が、しかと確認できた。それを逃がすまいとするように、数人の騎士の護衛がついているのも見えた。
『こっちだ』
『はやくしろッ』
と、領主館の中から、数人の騎士が出てきた。
領主館の庭にあった低木に身を忍ばせて、それをやり過ごし、入れ替わりにケネスたちは屋敷へと足を踏み入れた。
「ソルトは、この屋敷に?」
「いや。今のところはいないみたいだ。おっと、そこの曲がり角に騎士が待ち構えているから、注意しておけよ」
そんな調子で、ケネスはずんずんと領主館を突き進んでいった。ケネスの《可視化》の前では、いかなる待ち伏せも無力と化す。むしろ、すべて丸見えだから、剣を構えたカカシも同然。女性の下着を覗くぐらいしか使えないと思っていたスキルだが、こうして使い慣れてみると、なかなかのもの。ダンジョン攻略なんかには、物凄い効果を発揮しそうだ。
(今度、ダンジョンにもぐるときは、試してみるべきだな)
と、思った。
これはケネスが今まで、このスキルの恩恵に気づかなかったというわけではない。ひとえに熟練度が足らず、ほんの少し先までのものしか見通すことが出来なかったことが起因している。スキルを多用することによって、見える範囲も広がり、はじめてこのスキルもバカにはできないと思いはじめた次第だ。
カカシ同然の待ち伏せを、火系の魔法で焼き払ってゆく。そしてついに、バートリーの捕えられている部屋の前まで来たのだが、そこから先が難所となっていた。ケネスとミファは両開きとなっているトビラの前にいる。そのトビラは今は封じられているのだが、ケネスにはその先が見えている。
部屋の中央にベッドが1台ある。そこにバートリーが縛りつけられている。ほかにはクローゼットやテーブルなどの家具があり、すこし広めの一般的な部屋になっている。だが、バートリーの周囲には8人の王国騎士が待機しており、迂闊に近づくことは難しそうだった。
(8人か……)
ケネスはヴィルザではない。いくら強くなったとはいえ、平気な顔で颯爽と登場というわけにはいかない。《帝国の劫火》などと大層な名前はもらっても、そこには、実力以上の風聞が加味されている。
「どうするの?」
とミファが心配そうに尋ねてきた。
「オレも切り札がないわけでもない」
自分の右手を見つめた。
そこにはヴィルザの魔法が呪いのようにまとわりついている。これを最大限に活かせば、8人でも一掃できる気がする。
とはいえ――。
(このチカラ。リスクはないんだろうか?)
無垢な瞳で見つめたときには、ケネスの右腕はただの人間の腕だ。が、《可視化》で見つめれば、ヴィルザの魔法の名残で赤黒く染まっている。ヴィルザが有している魔力に比べれば、ほんの一部に過ぎない。それでも、膨大と言っても良いぐらいの魔力がある。心配なのは、これを活用したときのデメリットだ。またしても、肉体が奪われそうになる事態はゴメンだ。
(乱用しても良いものかどうか……)
8人も相手にするとなると、何度も魔法を使うことになるだろう。
「迷っても仕方ないか」
他に手段はない。
ケネスは意を決して、トビラを押し開けた。
「火系基礎魔法。《火球》」
火球で門前の王国騎士を吹き飛ばした。右手に秘められたヴィルザのチカラには、頼らなかった。けれど、それでも充分な大きさの火球を放つことができた。王国騎士は鎖帷子をしていたが、簡単に吹き飛ばすことができた。跳ばされた王国騎士は、門に背中を打ちつけて気絶していた。
確実に、強くなっている。
成長しているのだ。
「そう言えば、ケネスって、火系統の魔法ばかり使うのね」
「他の魔法もチョットは使えるけどな。火がイチバン得意なんだよ」
それを教えてくれたのも、ヴィルザだったなと思い出した。ヴィルザのことを思い出すたびに、胸の奥がチクリと痛む。
(名残惜しいのか?)
そうかもしれない。
ずっと一緒にやってきた仲だった。
いまさらだが、もっと話し合っていれば良かったと後悔する。あのときは、故郷を焼かれて、操られたカラダで幼馴染のロールを殺してしまい、動転していたのだ。
「ボーッとしない」
「悪い」
「私にはわかるわよ。ケネスってば、今、別の女のことを考えてたでしょう」
「そんなんじゃないよ」
「まぁ良いけどね」
と、ミファはむくれていた。
丘をのぼって、領主館の前にたどりついた。ミファの屋敷とは対照的な純白の館だ。《可視化》で内部構造を見通した。バートリーの居場所をすぐに見破った。ボロキレのようなチュニック1枚でベッドに縛り付けられている姿が、しかと確認できた。それを逃がすまいとするように、数人の騎士の護衛がついているのも見えた。
『こっちだ』
『はやくしろッ』
と、領主館の中から、数人の騎士が出てきた。
領主館の庭にあった低木に身を忍ばせて、それをやり過ごし、入れ替わりにケネスたちは屋敷へと足を踏み入れた。
「ソルトは、この屋敷に?」
「いや。今のところはいないみたいだ。おっと、そこの曲がり角に騎士が待ち構えているから、注意しておけよ」
そんな調子で、ケネスはずんずんと領主館を突き進んでいった。ケネスの《可視化》の前では、いかなる待ち伏せも無力と化す。むしろ、すべて丸見えだから、剣を構えたカカシも同然。女性の下着を覗くぐらいしか使えないと思っていたスキルだが、こうして使い慣れてみると、なかなかのもの。ダンジョン攻略なんかには、物凄い効果を発揮しそうだ。
(今度、ダンジョンにもぐるときは、試してみるべきだな)
と、思った。
これはケネスが今まで、このスキルの恩恵に気づかなかったというわけではない。ひとえに熟練度が足らず、ほんの少し先までのものしか見通すことが出来なかったことが起因している。スキルを多用することによって、見える範囲も広がり、はじめてこのスキルもバカにはできないと思いはじめた次第だ。
カカシ同然の待ち伏せを、火系の魔法で焼き払ってゆく。そしてついに、バートリーの捕えられている部屋の前まで来たのだが、そこから先が難所となっていた。ケネスとミファは両開きとなっているトビラの前にいる。そのトビラは今は封じられているのだが、ケネスにはその先が見えている。
部屋の中央にベッドが1台ある。そこにバートリーが縛りつけられている。ほかにはクローゼットやテーブルなどの家具があり、すこし広めの一般的な部屋になっている。だが、バートリーの周囲には8人の王国騎士が待機しており、迂闊に近づくことは難しそうだった。
(8人か……)
ケネスはヴィルザではない。いくら強くなったとはいえ、平気な顔で颯爽と登場というわけにはいかない。《帝国の劫火》などと大層な名前はもらっても、そこには、実力以上の風聞が加味されている。
「どうするの?」
とミファが心配そうに尋ねてきた。
「オレも切り札がないわけでもない」
自分の右手を見つめた。
そこにはヴィルザの魔法が呪いのようにまとわりついている。これを最大限に活かせば、8人でも一掃できる気がする。
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