《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-16話「囚われのバートリー Ⅱ」
バートリーは、ひたすら責め苦に耐えていた。はがされた爪は2枚。焼けた鉄をはかされたのが1度。あとはおもに棒打ちだった。いっそのこと拷問に耐えかねて、この肉体が朽ちてしまえば良いと思うのだが、拷問官もそう甘くはない。決して殺さぬように、医術の知識があるものが付く――というのが普通だ。何度かの拷問がくりかえされて、失神しては、牢屋に連れ戻されるといった繰り返しだった。
コツ……コツ……コツ……。
地下牢の石畳を叩く足音が響く。この足音が、バートリーの心臓が凍りつかせる。食事の時間以外では、おそらく拷問だろうと思われるからだ。帝国のことよりも、最近は執拗にケネス・カートルドの情報を引き出そうとしてくる。ケネスにソルトの軍が追い返されたからかもしれない。
(屈するものか)
と、歯ぎしりする。
ケネスのことを尋ねられれば、バートリーの堅牢な意地は、決して崩れぬ牙城と化す。ゲヘナ・デリュリアスが帝国を襲撃したさい、バートリーは殺されかけた。そのときに、ケネスに助けられたことがある。バートリーはそれを鮮明におぼえている。ケネスの情報を売るというのは、恩を仇で返すようなもの。
決して口は割るまい。
しかし気になるのは、自身のことよりも、フィント・フーリンのことだった。彼女もまたこの牢獄のどこかで、責め苦に耐えているはずなのだ。
(大丈夫。いずれは……)
時間はかかるかもしれないが、バートリーとフーリンが捕虜となったことは、ガルシアにはわかっているはずだ。《通話》が届かなくなったのが、その証。救助部隊がいずれは来ると信じている。今はその助けを待ち焦がれるしかなかった。
「出せ」
顔を黒いフードで隠した拷問官たちが、バートリーの前で止まった。檻が開けられる。バートリーの手枷が外された。その手枷を引っ張られて、バートリーは連行された。拷問執行室へと連行されるのだとわかった。抵抗してもムダだとわかっているので、大人しく付いて行くことにした。脚も焼けただれており、逃げ出す脚力も残されてはいなかった。
裸足の足に、石畳の感触がつたわってくる。
ヤケドのあとが治ってはおらず、足の裏がヒリつく。
いつも連れて行かれる拷問執行室とは、道順が違った。怪訝に思いながらも、付いて行くと地上に出された。
久しぶりの地上だ。
太陽の光がまぶしくって、目が焼けるかと思った。暗闇になれすぎたのだ。しばらく目をつむっておくことにした。
閉ざされた視界のなかにて、連れて行かれたのは、屋敷の中だった。屋敷の中に入ると、まだ目を開けることができた。
ベッドがある。
そこに四肢を拘束された。
(屋敷の中で拷問されるのだろうか?)
なぜ、屋敷のなかに連れて来られたのか、わからなかった。
「よォ。血の嬢ちゃん」
と、ソルトが上機嫌な声音で現われた。相変わらず髪はぼさぼさで、無精髭の剃り残しが目立つ。清潔感がないのだが、カラダ全体から男の色気が発散しているような男だ。バートリーは目を細めた。
「……」
「どうして屋敷の中に連れて来られたか――って顔をしてるな」
「……」
黙って睨む。
バートリーにできるのは、それぐらいだ。
「もう情報を引き出すのは終わりだ。嬢ちゃんはダンマリだからな。だから、オレの性欲処理として使わせてもらうことにした。なぁに、最初は痛いかもしれないが、すぐに気持ち良くなる。拷問よりかはずっと楽なもんだ」
「……ッ」
ソルトはブレに手をかけていた。なんて下品な男なのだろうかと軽蔑の心を持ってはしても、四肢をベッドに縛り付けられているバートリーは、もはや標本にとらわれた昆虫も同じ。
あとは、ソルトのもので貫かれるのを、待つのみ。
(無念)
バートリーとて女。あまり気にはかけて来なかったが、乙女の恋心というものが、ないわけでもない。その恋心を儚く燃やしていたのは、ケネスの存在であったのだが、その恋慕も今日で終わりか――とバートリーは観念した。
舌を噛み切るか。
この肉体が穢されたとしても、生き残る道を選ぶか……。バートリーの胸裏は灰色の絶望にけぶっていた。その灰色の景色のなかでは、なぜかケネス・カートルドの姿が思い浮かばれるのであった。
コツ……コツ……コツ……。
地下牢の石畳を叩く足音が響く。この足音が、バートリーの心臓が凍りつかせる。食事の時間以外では、おそらく拷問だろうと思われるからだ。帝国のことよりも、最近は執拗にケネス・カートルドの情報を引き出そうとしてくる。ケネスにソルトの軍が追い返されたからかもしれない。
(屈するものか)
と、歯ぎしりする。
ケネスのことを尋ねられれば、バートリーの堅牢な意地は、決して崩れぬ牙城と化す。ゲヘナ・デリュリアスが帝国を襲撃したさい、バートリーは殺されかけた。そのときに、ケネスに助けられたことがある。バートリーはそれを鮮明におぼえている。ケネスの情報を売るというのは、恩を仇で返すようなもの。
決して口は割るまい。
しかし気になるのは、自身のことよりも、フィント・フーリンのことだった。彼女もまたこの牢獄のどこかで、責め苦に耐えているはずなのだ。
(大丈夫。いずれは……)
時間はかかるかもしれないが、バートリーとフーリンが捕虜となったことは、ガルシアにはわかっているはずだ。《通話》が届かなくなったのが、その証。救助部隊がいずれは来ると信じている。今はその助けを待ち焦がれるしかなかった。
「出せ」
顔を黒いフードで隠した拷問官たちが、バートリーの前で止まった。檻が開けられる。バートリーの手枷が外された。その手枷を引っ張られて、バートリーは連行された。拷問執行室へと連行されるのだとわかった。抵抗してもムダだとわかっているので、大人しく付いて行くことにした。脚も焼けただれており、逃げ出す脚力も残されてはいなかった。
裸足の足に、石畳の感触がつたわってくる。
ヤケドのあとが治ってはおらず、足の裏がヒリつく。
いつも連れて行かれる拷問執行室とは、道順が違った。怪訝に思いながらも、付いて行くと地上に出された。
久しぶりの地上だ。
太陽の光がまぶしくって、目が焼けるかと思った。暗闇になれすぎたのだ。しばらく目をつむっておくことにした。
閉ざされた視界のなかにて、連れて行かれたのは、屋敷の中だった。屋敷の中に入ると、まだ目を開けることができた。
ベッドがある。
そこに四肢を拘束された。
(屋敷の中で拷問されるのだろうか?)
なぜ、屋敷のなかに連れて来られたのか、わからなかった。
「よォ。血の嬢ちゃん」
と、ソルトが上機嫌な声音で現われた。相変わらず髪はぼさぼさで、無精髭の剃り残しが目立つ。清潔感がないのだが、カラダ全体から男の色気が発散しているような男だ。バートリーは目を細めた。
「……」
「どうして屋敷の中に連れて来られたか――って顔をしてるな」
「……」
黙って睨む。
バートリーにできるのは、それぐらいだ。
「もう情報を引き出すのは終わりだ。嬢ちゃんはダンマリだからな。だから、オレの性欲処理として使わせてもらうことにした。なぁに、最初は痛いかもしれないが、すぐに気持ち良くなる。拷問よりかはずっと楽なもんだ」
「……ッ」
ソルトはブレに手をかけていた。なんて下品な男なのだろうかと軽蔑の心を持ってはしても、四肢をベッドに縛り付けられているバートリーは、もはや標本にとらわれた昆虫も同じ。
あとは、ソルトのもので貫かれるのを、待つのみ。
(無念)
バートリーとて女。あまり気にはかけて来なかったが、乙女の恋心というものが、ないわけでもない。その恋心を儚く燃やしていたのは、ケネスの存在であったのだが、その恋慕も今日で終わりか――とバートリーは観念した。
舌を噛み切るか。
この肉体が穢されたとしても、生き残る道を選ぶか……。バートリーの胸裏は灰色の絶望にけぶっていた。その灰色の景色のなかでは、なぜかケネス・カートルドの姿が思い浮かばれるのであった。
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