《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-7話「ソルト・ドラグニルとの再会」
ソルト・ドラグニルを前に、ケネスはフードを目深にかぶった。シュネイの村に攻めてきたとき、ソルトを追い返したのはケネスだ。そのときの記憶が、ケネスには曖昧だ。ヴィルザに操られていたからだ。けれど、ソルトのほうは、ケネスの顔を明瞭に覚えているはずだった。なににせよ、人相書きが回されているので、面をあげることはできなかった。
「ミファさま。あまり外に出歩かれては危険ですよ」
と、ソルトが言った。
「あら。どうしてですの」
と、ミファはたちまち上品な雰囲気をよそおって言った。
「昨日、この男がココルの都市に潜入したようなのです」
ソルトはそう言うと、ケネスの人相書きをミファに見せつけた。その瞬間、ケネスは厭な予感をいだいた。もしここで、ミファがケネスのことを言えば、ケネスは公衆の面前でその素性をさらすことになる。逃げ場はない。殺されるだろう。
いや。
殺されても構うもんか……。
殺される前に、殺してやる。
むしろいっそのこと、ここでソルトを手にかけても良い。そう思った。懐に忍ばせていた短剣に手をあてがった。
が――。
「あら。怖そうな殿方ですのね」
と、ミファはトボけたので、すぐに殺意を引っ込めることにした。ここでソルトを殺しては、バートリーを助けることが出来なくなる。それにミファにだって迷惑がかかってしまう。
殺すには絶好の機会ではあるが、必死にケネスはそれをかみ殺した。
「ケネス・カートルド。おそらく帝国魔術師と思われますが、オレが率いていた部隊を、この男に追い返されることになりました。非常に危険な魔法を使いますので、ご注意ください」
「御忠告、ありがとうございます」
ミファはそう言うと、白いスカートのスソをつまむと、軽く会釈をした。そういった仕草にはたしかに公爵令嬢らしいものがあった。
「それより、ミファさま。今日はこれから、どのような御用事で?」
「すこし散歩に出ていただけですが」
「なら、これから御茶でもいかがです? よろしければ、領主館にお招きいたしますが」
領主館に行くのなら、バートリーを救い出すチャンスだ。
そう思ったのだが、
「いえ。けっこうです」
と、ミファは断った。
「そうおっしゃらずに。一度ぐらいは相手してくれても良いじゃありませんか」
ソルトは卑しい笑みを浮かべると、ミファの肩に手を置こうとした。咄嗟のことだった。ミファの肩に置かれようとしたソルトの手を、ケネスはつかんでいた。自分の意思ではない。まるで右手が勝手に動いたようだった。腕をつかまれたソルトは、あわてて振り払った。
「どうやらミファさまには、怖い付き人がいるようだ。御父上の差し金かな? 今日はこれで失礼するとしましょう」
と、ソルトは立ち去って行った。
ソルトの背中が見えなくなるまで、ミファはしばしその場に立ち尽くしていた。
「あの男。異様なまでに女好きなの。困ったものよ」
「そうみたいだな」
「私をカバってくれたのは、助かったわ。でも、あんまり危険なことはしないほうが良いわよ。顔。見られたら終わりなんだから」
「ああ」
ケネスは自分の右手を見つめた。
ケネスの意思ではなく、この右手は勝手に動いたのだ。まるでここにヴィルザの名残が生きているようだった。もしかして、以前に戦った記憶から、この右手は敵を求めているのかもしれない。
「それにしても、ビックリしたわ」
「何が?」
「まさか、ソルトの部隊を追い返したのは、ケネスだったとはね。ソルトは手強い男だったでしょう?」
「オレは……よく覚えてないだがな……」
正直にそう言った。
ヴィルザが勝手にやったことだ。
「話したくないのなら、構わないわ。しかし、戦神カヌスの再来と言われた男を、追い返したというのは、非常に心強いわね。私の見る目が良かったということかしら。タダモノじゃないとは思ってたけど」
その言葉を聞いているのが面映ゆくて、ケネスはなにげなく煙草を取り出した。無意識のうちに口にくわえるほど、煙草というものに慣れてしまっていたのだった。
「ミファさま。あまり外に出歩かれては危険ですよ」
と、ソルトが言った。
「あら。どうしてですの」
と、ミファはたちまち上品な雰囲気をよそおって言った。
「昨日、この男がココルの都市に潜入したようなのです」
ソルトはそう言うと、ケネスの人相書きをミファに見せつけた。その瞬間、ケネスは厭な予感をいだいた。もしここで、ミファがケネスのことを言えば、ケネスは公衆の面前でその素性をさらすことになる。逃げ場はない。殺されるだろう。
いや。
殺されても構うもんか……。
殺される前に、殺してやる。
むしろいっそのこと、ここでソルトを手にかけても良い。そう思った。懐に忍ばせていた短剣に手をあてがった。
が――。
「あら。怖そうな殿方ですのね」
と、ミファはトボけたので、すぐに殺意を引っ込めることにした。ここでソルトを殺しては、バートリーを助けることが出来なくなる。それにミファにだって迷惑がかかってしまう。
殺すには絶好の機会ではあるが、必死にケネスはそれをかみ殺した。
「ケネス・カートルド。おそらく帝国魔術師と思われますが、オレが率いていた部隊を、この男に追い返されることになりました。非常に危険な魔法を使いますので、ご注意ください」
「御忠告、ありがとうございます」
ミファはそう言うと、白いスカートのスソをつまむと、軽く会釈をした。そういった仕草にはたしかに公爵令嬢らしいものがあった。
「それより、ミファさま。今日はこれから、どのような御用事で?」
「すこし散歩に出ていただけですが」
「なら、これから御茶でもいかがです? よろしければ、領主館にお招きいたしますが」
領主館に行くのなら、バートリーを救い出すチャンスだ。
そう思ったのだが、
「いえ。けっこうです」
と、ミファは断った。
「そうおっしゃらずに。一度ぐらいは相手してくれても良いじゃありませんか」
ソルトは卑しい笑みを浮かべると、ミファの肩に手を置こうとした。咄嗟のことだった。ミファの肩に置かれようとしたソルトの手を、ケネスはつかんでいた。自分の意思ではない。まるで右手が勝手に動いたようだった。腕をつかまれたソルトは、あわてて振り払った。
「どうやらミファさまには、怖い付き人がいるようだ。御父上の差し金かな? 今日はこれで失礼するとしましょう」
と、ソルトは立ち去って行った。
ソルトの背中が見えなくなるまで、ミファはしばしその場に立ち尽くしていた。
「あの男。異様なまでに女好きなの。困ったものよ」
「そうみたいだな」
「私をカバってくれたのは、助かったわ。でも、あんまり危険なことはしないほうが良いわよ。顔。見られたら終わりなんだから」
「ああ」
ケネスは自分の右手を見つめた。
ケネスの意思ではなく、この右手は勝手に動いたのだ。まるでここにヴィルザの名残が生きているようだった。もしかして、以前に戦った記憶から、この右手は敵を求めているのかもしれない。
「それにしても、ビックリしたわ」
「何が?」
「まさか、ソルトの部隊を追い返したのは、ケネスだったとはね。ソルトは手強い男だったでしょう?」
「オレは……よく覚えてないだがな……」
正直にそう言った。
ヴィルザが勝手にやったことだ。
「話したくないのなら、構わないわ。しかし、戦神カヌスの再来と言われた男を、追い返したというのは、非常に心強いわね。私の見る目が良かったということかしら。タダモノじゃないとは思ってたけど」
その言葉を聞いているのが面映ゆくて、ケネスはなにげなく煙草を取り出した。無意識のうちに口にくわえるほど、煙草というものに慣れてしまっていたのだった。
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