《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第4-5話「交渉 Ⅱ」
食事をしながら、ミファは袖をまくりあげた。昨日、かいま見た通りの腕をしていた。注射の痕で青紫色に腫れ上がっていた。痛々しいというよりも、毒々しい。もとの肌が白いゆえに、よりいっそう厭な色合いだ。
「私は薬をやってる。自分でも使うし、売買もする。公爵令嬢の立場を利用して、製造された薬を、都市のなかで売りさばいてる。元売りって言えば、わかるかしら」
「つまり、悪の親玉ってことだろ」
「まぁ。そうかもしれない。暗黒組合の密売人に売りさばくのよ。あとは、そいつらが上手くやってくれるから」
傍からみれば、ノドカな朝食の景色なことだろう。しかし、交わされる会話はあまりに汚れていた。
「公爵令嬢が、暗黒組合に薬を売りつける悪の親玉とはな」
食パン一枚を食べ終えて、物足りないなと思っていた。ミファが切り分けて、ケネスの皿にもう1枚を入れてくれた。
「危険な商売なのよ。だから、護衛が欲しいの。それもマトモな人間じゃないのに、信用できる護衛がね」
「1週間で良いのか」
ええ、とミファはうなずく。姿勢を正したまま微動だにすることなく、食パンをかじっている。その挙措からは、たしかに品格の良さが感じられた。
「センサクはなし――って言ってたわりには、ずいぶんと腹を割ったじゃないか」
「手を組むなら、話は別よ。信用してもらうためには、すべて打ち明けるべきでしょう」
「オレを信用できるのか?」
まだ昨日、会ったばかりだ。
ふふっ、とミファは笑った。
「信用できるに決まってるでしょう、王国治安維持騎士部隊を相手に、魔法を使うような人間なんですもの。行儀の良い人間じゃないことだけは、たしかね」
「たしかにな」
顔を覚えられているかもしれない。顔をさらして外を動くのは、やめたほうが良さそうだ。
「ケネスも事情を話しなさいよ。何かチカラになれるかもしれないわ」
話して良いか迷った。
話そうと、すぐに決めた。
このままバートリーを探していてもジリ貧だ。時間だけが経過してしまう。
「オレは――デラル帝国の人間なんだ」
故郷を焼き滅ぼした部隊を追いかけてきた。そしたら、この都市まで流れて来ることになった。ついでにバートリーを探していることも伝えた。
ミファはズズズ……と紅茶をすすった。
「これは驚いた。まさか、帝国から来た人間だったなんて。まぁ、言われてみれば旅人っぽいけどね」
「何か知ってることがあれば、教えて欲しい」
「ケネスの故郷を滅ぼしたのは、たぶんソルト・ドラグニルね。王国3大剣帝のひとり。戦神カヌスの再来とまで言われた男。そしてこの都市ココルの領主でもある」
「ここの領主か。なるほど」
「ソルトを探しに行くなら、城か、領主館に行くべきね。もしかすると、そこに連れ去られた娘もいるかもしれないわね。でも良いわね」
「何が良いんだ?」
「だって、その娘のこと追いかけて、ここまで来たんでしょ。それって愛なんじゃないの?」
「ぷっ」
と、ケネスは思わず吹き出した。
愛なんて、これっぽっちも考えてなかったからだ。
「何かオカシイの?」
「愛なんかじゃねェよ。追いかけてきたのはついで。オレの故郷をメチャクチャにした、ソルトって男を殺しに来た。それのついで」
「愛じゃなくて、憎悪のほうってわけね」
「ああ」
でも、純粋な憎悪ではない。たしかにそのソルト・ドラグニルという男は憎い。憎いけれど、自分自身だって憎い。だって幼馴染のロールを殺したのはケネス自身なのだ。自暴自棄になって追いかけてきたという面もあるのだ。
「私は薬をやってる。自分でも使うし、売買もする。公爵令嬢の立場を利用して、製造された薬を、都市のなかで売りさばいてる。元売りって言えば、わかるかしら」
「つまり、悪の親玉ってことだろ」
「まぁ。そうかもしれない。暗黒組合の密売人に売りさばくのよ。あとは、そいつらが上手くやってくれるから」
傍からみれば、ノドカな朝食の景色なことだろう。しかし、交わされる会話はあまりに汚れていた。
「公爵令嬢が、暗黒組合に薬を売りつける悪の親玉とはな」
食パン一枚を食べ終えて、物足りないなと思っていた。ミファが切り分けて、ケネスの皿にもう1枚を入れてくれた。
「危険な商売なのよ。だから、護衛が欲しいの。それもマトモな人間じゃないのに、信用できる護衛がね」
「1週間で良いのか」
ええ、とミファはうなずく。姿勢を正したまま微動だにすることなく、食パンをかじっている。その挙措からは、たしかに品格の良さが感じられた。
「センサクはなし――って言ってたわりには、ずいぶんと腹を割ったじゃないか」
「手を組むなら、話は別よ。信用してもらうためには、すべて打ち明けるべきでしょう」
「オレを信用できるのか?」
まだ昨日、会ったばかりだ。
ふふっ、とミファは笑った。
「信用できるに決まってるでしょう、王国治安維持騎士部隊を相手に、魔法を使うような人間なんですもの。行儀の良い人間じゃないことだけは、たしかね」
「たしかにな」
顔を覚えられているかもしれない。顔をさらして外を動くのは、やめたほうが良さそうだ。
「ケネスも事情を話しなさいよ。何かチカラになれるかもしれないわ」
話して良いか迷った。
話そうと、すぐに決めた。
このままバートリーを探していてもジリ貧だ。時間だけが経過してしまう。
「オレは――デラル帝国の人間なんだ」
故郷を焼き滅ぼした部隊を追いかけてきた。そしたら、この都市まで流れて来ることになった。ついでにバートリーを探していることも伝えた。
ミファはズズズ……と紅茶をすすった。
「これは驚いた。まさか、帝国から来た人間だったなんて。まぁ、言われてみれば旅人っぽいけどね」
「何か知ってることがあれば、教えて欲しい」
「ケネスの故郷を滅ぼしたのは、たぶんソルト・ドラグニルね。王国3大剣帝のひとり。戦神カヌスの再来とまで言われた男。そしてこの都市ココルの領主でもある」
「ここの領主か。なるほど」
「ソルトを探しに行くなら、城か、領主館に行くべきね。もしかすると、そこに連れ去られた娘もいるかもしれないわね。でも良いわね」
「何が良いんだ?」
「だって、その娘のこと追いかけて、ここまで来たんでしょ。それって愛なんじゃないの?」
「ぷっ」
と、ケネスは思わず吹き出した。
愛なんて、これっぽっちも考えてなかったからだ。
「何かオカシイの?」
「愛なんかじゃねェよ。追いかけてきたのはついで。オレの故郷をメチャクチャにした、ソルトって男を殺しに来た。それのついで」
「愛じゃなくて、憎悪のほうってわけね」
「ああ」
でも、純粋な憎悪ではない。たしかにそのソルト・ドラグニルという男は憎い。憎いけれど、自分自身だって憎い。だって幼馴染のロールを殺したのはケネス自身なのだ。自暴自棄になって追いかけてきたという面もあるのだ。
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