《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

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第4-4話「交渉 Ⅰ」

 翌日。
 目が覚めた。モウロウとした意識のなかで、昨晩のことを思い出していた。



 ミファという少女が、王都の治安維持騎士部隊とかいう連中に追いかけられていた。それを助けて、屋敷まで案内されたのだ。



 緩慢に上体を起こした。



「目が、覚めた?」
「いたのか……」



 ケネスは昨晩に引き続き、ベッドで眠りこけていた。そのベッドの脇には、昨晩にはなかったはずの四脚イスが置かれていた。そのイスにミファが座っていた。



 昨晩の退廃した雰囲気は薄くなっていた。白いドレスから水分は抜け落ちていた。紅茶を飲んでいるようだ。その仕草から優雅さが漂っていた。



「もしかして、ホントウに公爵の娘なのか?」
「だから、昨晩にも言ったじゃない。公爵令嬢だって」
「ケリュアル王国の公爵の娘か……」



 誘拐しようかと考えていた。でも、世話になってる身だ。それに今は、バートリーの救出が最優先だ。



 部屋を見渡す。
 窓から陽光がさしこんでいる。大きな窓だから、その分、入ってくる光も多いのかもしれない。まぶしかった。



「これ。昨日、助けてくれた礼金よ」
 ベッドの上に布袋が置かれた。中を見ると、金貨がたんまり入っていた。



「こんなに?」
「いいのよ。お金なんて、いくらでもあるんだから」



「なら、もらっておく」
「それより、あんた。ケネスだっけ」



「ケネス・カートルドだ」



「あんたも懐を探られたら困るんでしょ。だったら、私と組まない?」



「組む?」



「一緒に行動しないかって訊いてるのよ。昨晩みたいなことがあったら厭だし、私の護衛に付いてくれると良いんだけど。メチャクチャ強いみたいだし、頼りになるわ」



「オレは強くない」



「強いわよ。だって、王国治安維持騎士部隊を吹き飛ばしてたじゃない」



 昨晩。
 たしかに、その騎士連中を吹き飛ばした。《爆発イクスプロージョン》の魔法だ。自分でもビックリするぐらいの爆発だった。それだけ魔力の量が多かったのだろう。



(あれは、本来のオレの魔法じゃない)
 右手を見つめる。



 なんの変哲もない人間の腕だが、《可視化》で見たときには、その右手が黒くよどんでいる。ヴィルザに肉体を奪われそうになったとき、ヴィルザの魔力の一部がケネスに注がれていた。たぶん、そのおかげで、魔力量も増加している。



 ヴィルザのことは突き放したけれど、これぐらいなら使っても良いかもしれない。



「ねえ。聞いてる?」
「ああ。なんだっけ?」



「組まないかってこと」
「何のために?」



「私の護衛。私のことを守って欲しいの。でもね、人には言えないようなことだから、普通の人には頼めないの」



「薬か」
 すこし間があった。
「ええ」
 と、ミファはうなずいた。



「やめとけよ。薬なんてさ。自分の身の丈に合わないチカラなんか、手に入れても良いことなんてないんだから」



 ヴィルザのことを思った。マディシャンの杖のことを思った。そして自分の右手のことを思った。



「説教?」
 と、紅茶を飲む手を止めて、軽く睨んでくる。白銀色の薄幸なひとみが細められていた。



「いや……。経験談」



「チョット新鮮。私が薬をやってるって知った人たちは、ミットモナイぐらい怒鳴ったり、あわてたりしてたのに。ケネスは冷静なのね。なおさら、気に入った」



「ふん」
 と、ケネスは鼻で笑った。



 そりゃ、周囲はあわてるだろう。公爵令嬢が薬をやってるなんて知ったら、一大事件だ。ケネスにとって、ミファはどうでも良い人間だから、なんとも思わないだけだ。



「風呂。入ってきても良いか?」



「ご自由にどうぞ」
 と、ミファは儚げに微笑んだ。



 風呂から出てくると、メイドたちがケネスの朝食を運んできてくれた。パンとコーンスープとサラダだった。パン一斤がテーブルの中央に置かれている。好きなだけ取り分けろということらしい。



「朝は、これぐらいで良いかしら? 足りなかったら用意させるわ」



「いや。充分だ」



 風呂に行っているあいだに運び込まれたのだろう、食卓に着席した。正面にミファが座るようなカッコウだ。



「それでは、ごゆっくり」
 と、メイドたちが退散していく。
 部屋にはケネスとミファだけになる。



「公爵令嬢ってのはウソじゃなさそうだな」
「まだ疑ってたの?」



「疑うだろう。護衛の騎士や付き人なんかもいないようだし。それに両親はどうしたんだ?」



「父親は王都で仕事に明け暮れてる。母は男と寝てる。ここにいるのは私だけ」



「ふぅん」



 親の話はあまりしたくないのか、苦々しい顔をしていた。ケネスの手前には、いろんなシロップが置かれていた。どれをどこにかければ良いのかわからなくて、食パンをそのままかじることにした。そのままでも、美味しい。まだ熱をもっていて、充分なやわらかさを持っている。ここで焼き上げたものなのかもしれない。



「私と組むって話。考えてくれた? お互いに脛に傷を持つ者同士。お似合いだと思うんだけど。一緒に地獄まで行けそうじゃない?」



「それも悪くないけど、あいにくオレには時間がない。急いでるんだ」



「こっちも、そんなに守ってもらおうとは考えてないよ。1週間で良い」



「1週間か」
 それなら、良いかもしれない。



 バートリーを見つけ出すのも、それぐらいの猶予は必要になりそうだ。もっとも、早急に見つけ出すに越したことはない。捕虜となっているのであれば、拷問や性的な攻撃を受けている可能性もある。



「どう?」
「いいだろう」
「契約成立ね」



 ミファはうれしそうに、水の入ったグラスを指ではじいた。チリン。涼やかな音が響く。

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