《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。
第3-27話「絶交」
丘陵を歩いていた。王国軍が侵攻してきた足跡が残っていたので、進むべき道はわかった。シュネイ村近くの丘陵なので、緑が生えそろっていたが、踏み荒らされていた。土はえぐれ、焼け焦げた痕跡が多くあった。死体も多く散乱している。死者の国を進んでいる心地だった。
故郷が焼かれた。
その炎が、まぶたの裏で揺らめいていた。
「なあ。ケネスってばー。悪かったと思うておる。こうして謝っているじゃないか」
ヴィルザが後ろからついて来る。
「なあー。ケネスってばー。お話してくれよ」
と、構ってもらおうとしてくる。
「胸でも触らせてやれば、機嫌をなおすか?」
と、色仕掛けを試みようとしてくる。
すべて、無視していた。
煙草をくわえたまま、モクモクと歩みを進めた。
やがて怒りはじめた。
「ふんッ。なんだ。そんなにあの幼馴染を殺したのが気に食わんのか? 私はケネスのメンドウを見てやったのだ。私がおらんと、ケネスなんかとっくに死んでおるぞ。まだFランク冒険者として、バカにされ続けておるのだぞ!」
「……」
「カラダを乗っ取ろうとしたことを、怒っておるのか? ちょっと気の迷いが生じただけであろうがッ! 私だって、生身の肉体が欲しいのだ。ケネスのことを傷つけるつもりなど、ありはせんかった!」
「……」
「いいだろう。そこまで私と口をきかぬと言うのであれば、もう良い。コゾウなんて、どこへでも好きなところに行くが良い。セッカクここまで2人で一緒にやって来たのに、お別れとはな!」
そう言い残すと、ようやっとヴィルザは姿をくらました。ヴィルザが消えたことに、大きな喪失感があった。その喪失感が、思いのほか大きくて、自分でも「うわぁ」とビックリしてしまうほどだった。ずっと、一緒にやって来た。そのあいだに、醸造されていった情があったのだと思い知った。
でも――。
(これで良かったんだ)
と、思う。
魔神のチカラは、あまりに危険だ。ついにケネスの意思とは関係なく、そのチカラを発現させてしまった。あまつさえ、この肉体を乗っ取ろうとしてきた。そういう個人的な怒りもあったけれど、ヴィルザを拒絶するのは、世界の心配をしてのことだった。8大神が、命をかけてまで、封印した魔神。それを見つけてしまうというのは、ヤッパリ良くないことだ。
信仰心はないけれど、神の意思に反することだってことぐらいは、わかる。出会うべきではなかった。ましてや、そのチカラに頼るべきではなかった。ヴィルザは、封印されてしかるべきことをやった魔神なのだ。
(もう、ヴィルザのことは、忘れよう)
そう、決めた。
歩みを、進める。
バートリーを助けなくちゃいけない。バートリーを連れ去った王国軍を殺したい。故郷を壊された礼を言わなくちゃいけない。1人で行くことが、無謀なんてことは、わかっている。
冷静に考えれば、このことを帝国軍に知らせて、救助部隊を編制してもらうべきなのだろう。でも、そんな余裕はない。黒い炎が、ケネスを急き立ててくるのだ。殺せ。許すな。仕返してやれ。
涙がつたうのを感じた。
どうして自分が泣いているのか、わからなかった。号泣するかわりに、煙草のケムリを大きく吐きだした。赤子の叫びのように、ケムリは残照の空にのぼっていった。
故郷が焼かれた。
その炎が、まぶたの裏で揺らめいていた。
「なあ。ケネスってばー。悪かったと思うておる。こうして謝っているじゃないか」
ヴィルザが後ろからついて来る。
「なあー。ケネスってばー。お話してくれよ」
と、構ってもらおうとしてくる。
「胸でも触らせてやれば、機嫌をなおすか?」
と、色仕掛けを試みようとしてくる。
すべて、無視していた。
煙草をくわえたまま、モクモクと歩みを進めた。
やがて怒りはじめた。
「ふんッ。なんだ。そんなにあの幼馴染を殺したのが気に食わんのか? 私はケネスのメンドウを見てやったのだ。私がおらんと、ケネスなんかとっくに死んでおるぞ。まだFランク冒険者として、バカにされ続けておるのだぞ!」
「……」
「カラダを乗っ取ろうとしたことを、怒っておるのか? ちょっと気の迷いが生じただけであろうがッ! 私だって、生身の肉体が欲しいのだ。ケネスのことを傷つけるつもりなど、ありはせんかった!」
「……」
「いいだろう。そこまで私と口をきかぬと言うのであれば、もう良い。コゾウなんて、どこへでも好きなところに行くが良い。セッカクここまで2人で一緒にやって来たのに、お別れとはな!」
そう言い残すと、ようやっとヴィルザは姿をくらました。ヴィルザが消えたことに、大きな喪失感があった。その喪失感が、思いのほか大きくて、自分でも「うわぁ」とビックリしてしまうほどだった。ずっと、一緒にやって来た。そのあいだに、醸造されていった情があったのだと思い知った。
でも――。
(これで良かったんだ)
と、思う。
魔神のチカラは、あまりに危険だ。ついにケネスの意思とは関係なく、そのチカラを発現させてしまった。あまつさえ、この肉体を乗っ取ろうとしてきた。そういう個人的な怒りもあったけれど、ヴィルザを拒絶するのは、世界の心配をしてのことだった。8大神が、命をかけてまで、封印した魔神。それを見つけてしまうというのは、ヤッパリ良くないことだ。
信仰心はないけれど、神の意思に反することだってことぐらいは、わかる。出会うべきではなかった。ましてや、そのチカラに頼るべきではなかった。ヴィルザは、封印されてしかるべきことをやった魔神なのだ。
(もう、ヴィルザのことは、忘れよう)
そう、決めた。
歩みを、進める。
バートリーを助けなくちゃいけない。バートリーを連れ去った王国軍を殺したい。故郷を壊された礼を言わなくちゃいけない。1人で行くことが、無謀なんてことは、わかっている。
冷静に考えれば、このことを帝国軍に知らせて、救助部隊を編制してもらうべきなのだろう。でも、そんな余裕はない。黒い炎が、ケネスを急き立ててくるのだ。殺せ。許すな。仕返してやれ。
涙がつたうのを感じた。
どうして自分が泣いているのか、わからなかった。号泣するかわりに、煙草のケムリを大きく吐きだした。赤子の叫びのように、ケムリは残照の空にのぼっていった。
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