《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第3-23話「魔神の腕」

「ソルトさまァァ――ッ」



 野営地――天幕のなかにて――。



 ソルトは捕えたヘッケラン・バートリーと、その副官であるフィント・フーリンという女性にサルグツワをかませて、目隠しをしているところだった。下手をすると、舌を噛み切って死ぬぐらいのことはやりそうな女たちだと思ったのだ。そこに、騎士の1人が駆けこんできた。



「どうした、どうした? そんなにあわてちゃって」



 村の制圧なんか、各小隊長中隊長に任せていれば、やってくれるだろうと思っていた。バートリーの言っていた、「バケモノじみた強さを持つ青年」というのが気にかかるが、そんなのが1人いたところで、軍に匹敵するとは思えなかった。



「シュネイ村の制圧は、あらかた完了したのですが」



「おう。よくやった」



 バートリーの肩がピクリと動いたのを、ソルトは見逃さなかった。耳まではふさいでいない。取り上げた片メガネを、手のひらで弄び、部下の言葉に耳を傾ける。



「それで?」



「トンデモナイ強い子供がいまして、抑えつけることが出来ません。むしろこちらの騎士が、次々に殺されておりまして」



「ほぉ。そいつァ、面白い。それがウワサの青年か」



 バートリーを見つめる。



 その青年に関する情報を聞き出そうかと思ったが、やめた。サルグツワを噛ませ終わったところで、外すのは手間だった。なにより、これはそんなに簡単に口を割る女じゃない。



「どうかソルトさまに、対処していただこうと」



「中隊長のスランはどうした? それからフィードルも。あの2人は、なかなか剣をやるぜ」



「ふ、2人とも、その子に殺されて……」
「ほお」



 あの2人をやるとは、たしかに手練れだな――。ソルトは気を引き締めることにした。部下を殺されて黙ってるわけにもいかない。



 天幕を部下にあずけて、村へ足を運ぶことにした。思っていたよりも、ずっと凄まじいことになっていた。



 村にあった家々は火が燃え上がっており、村人の死体らしきものが、各地に無造作に転がっていた。しかし、死体は村人のものだけではない。王国騎士の鎧をつけた者も、多く転がっている。



 村の道があった場所なのだろう。草がむしり取られて、踏みならされた通りがあった。左右には木造家屋が、建ち並んでいる。建ち並ぶといっても、ポツポツと点在しているだけだ。都市ほど建物と建物の隙間がないわけではない。一本の大きな樹があった。樹は怒りに震えるかのように、炎で燃え上がっていた。



 その樹の根本に、青年がいた。



 青年というよりも、見た目はまだ子供だ。が、ただの子どもではないことは、明白だった。全身から厭な魔力を発散している。静かに、怒り、狂っている。



(村を潰滅させられてキレちまってるってところか)



『抑え込めッ』
『ソルトさまが来るまでの我慢だ!』



 その子を囲むように、ソルトの部下たちが剣や槍を向けていた。魔法陣を展開している者もいる。



「放てェ」



 魔術師部隊が、火が水系統の魔法をブツけていた。子供は魔法の起こした砂煙に見えなくなった。



「やったんじゃないか?」



 炎や夕日がまぶしい。ソルトはひたいに手をかざして、少年の亡骸を確認しようとした。風が吹き、砂煙を吹きはらってゆく。そこには依然として、憎しみにたたずむ子供の姿があった。



 子供は常に魔法陣を展開し続けている。その魔法陣から、巨大な腕が伸びてきた。岩の手ではない。目が痛いほどの赤に染まった、巨大な腕だった。興奮したように、ふしくれだっている。血管が脈動していて、まるで赤い大樹のような腕だった。その腕が騎士のひとりの足をつまんでいた。



 つかむのではない。つまんでいた。



 人差し指と親指だけで、騎士の足をつまみあげて――そのまま地面に叩きつけはじめた。まるでオモチャで遊ぶ子供のような仕草だが、聞くにも耐えない苦痛の悲鳴があがる。



「ギャァァァッ」



 何度も地面に叩きつけられて、足が変な方向に曲がっていった。次に血を吐いていた。やがて悲鳴はかすれてゆき、頭が割れて血の粥みたいな肉片になっていた。



「ありゃ……なんだ?」



 ただの魔法ではない。



 おそらくなんらかのスキルだろうと思ったが、それにしても、あまりに禍々しすぎる。巨大な赤い腕は魔法陣から、さらに腕を出そうとしていたようだ。が、魔法陣が窮屈なようで、それ以上は出て来られないようだった。



「たしかに凶悪な腕だが、範囲は狭いみてェだな。しかし、悪い夢でも見てるみたいだぜ」



 魔法陣を出しているのは、憎しみに狂っている子供だ。それは間違いない。だが、その魔法陣から生えてくる腕は、何かマッタク別のものに思われた。まるで、檻に囚われているバケモノだ。その檻の隙間である魔法陣から、セイイッパイ腕を伸ばそうとしているようにも見える。



 腕は、手当たりしだいの人間をつかんでは、握り潰し、叩きつけ、弄んでいるようだった。



「ソルトさま。お助けッ」



 恐怖に耐えかねたようで、騎士たちが撤退してきた。



「仕方がねェ。部下をオモチャみたいに殺されて、黙ってるわけにもいかねーもんなぁ」



 ソルトは、剣を抜いた。

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