《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第3-14話「上位魔法」

「手を貸してやろうか? コゾウ」



 ゴブリンたちの死骸が積もるダンジョンにて、ケネスはジャイアント・ゴブリンと相対していた。1対1。否。ケネスにはいつだって、頼もしい小さな保護者がついている。その保護者は面白がるように、そう声をかけてきた。



「いや。いい。ここは1人でやってみたいんだ」



 ジャイアント・ゴブリン――。B級相当のモンスターだと聞いているが、勝てない相手ではないと思った。



 これも、またひとつ階段だ。一歩ずつ上がって行く。自分の足で届く範囲で良いから、少しずつ上がってゆく。そうやって、ガルシアやバートリー。そしてヴィルザのいる場所まで行くのだ。



 いつまでも、甘えてばかりじゃ、いられない。



「良いだろう。私は手を出さずに見守っておこう。しかし、ホントウに危ないときは手を出すからな」



「うん」



 ジャイアント・ゴブリンはケネスに向かって猛進してくる。地に積もるゴブリンたちの死骸は、その進行の妨げにはならないようだ。砂塵のように、蹴散らされてゆく。ケネスは魔法陣を展開する。



「火系基礎魔法。《火球ファイヤー・ボール》」



 火の球が射出された。ヴィルザが放つ《火球ファイヤー・ボール》は、それはもう隕石のように大きいのだけれど、ケネスはまだ人の顔ほどの大きさのものしか作れない。魔神にはぜんぜん及ばない。



 それでも、魔術学院に入学したころに比べると、手軽に出せるようになった。複数個、射出できるようにもなった。たしかに1歩ずつ成長しているのだ。



 火の球が、ジャイアント・ゴブリンの厚ぼったい腹を焼く。怯んだ。が、それだけだった。ふたたび猛進してくる。



「ケネス。かわせッ」
「わかってるッ」



 横に跳ぶ。



 かろうじて、ジャイアント・ゴブリンの体当たりを避けることができた。蹴散らされたゴブリンの肉片がカラダにかかった。魔術学院の制服。あとでキレイに洗わなくちゃいけない。



「ケネスよ。そろそろもう一つ上の魔法に挑戦してみよ」



「もうひとつ上?」



「上位魔法だ。扱えるようになれば、この時代の魔術師としては、優秀と言える部類になる」



「火の上位魔法って言うと、酸の魔法か」



 思い出深い魔法だ。
 かつて帝国闘技大会で、帝国12騎士と言われるベルモンド・ゴーランを殺した系統の魔法だ。



「やってみろ」



「でも、魔術学院でもまだそんな上位魔法なんて習ってないし」



「魔術学院にいる者たちより、もっと優秀な先生がここにおるじゃろうが。言っておくが、ケネスには才能がある。使えてもオカシクはない」



「オレに才能なんて……」
 そんなものがあるとは思えない。



 ずっとFランクだとバカにされてきて、負け犬根性が板についているぐらいだ。



「弱気になってる場合か、あのデカブツは、ヤル気まんまんみたいだぞ」



 ヴィルザの言うように、ジャイアント・ゴブリンはその豊満な肉をドラミングするように、手で叩きつけて、カラダ全体から闘気を発していた。ふたたび、猛進してくる。ケネスはそれに合わせて、魔法陣を展開する。



「コツは?」



「イメージせよ。炎を発したときと同じだ。そしてコゾウには、それをイメージできるじだけの経験を積んで来ておる」



 この魔神の魔法を、見てきたのだ――とヴィルザはささやいた。



「火系上位魔法。《酸の霧アシッド・フォグ》」



 ベルモンド・ゴーランを溶かしたときと同じ、あの帝都の闘技大会を思い出せば良いのだ。



 ポポコの群生のなかでたたずむ少女と出会い、すべてがはじまった日。ケネス・カートルドの歯車が動き出した日……。多くの観客の前で、帝国12騎士と謳われた双剣のゴーランを殺した日。



 思い出されるのは、ヴィルザの圧倒的なチカラと、帝国闘技大会での狂騒と熱気だった。



「行け。私を視る者よ」



 魔法陣から、白いケムリがモウモウと吹き上がる。ケムリがジャイアント・ゴブリンの巨体を包み込む。



「うごぉぉぉぉッ」
 ジャイアント・ゴブリンの悲鳴があがった。その声はやがて小さくなってゆく。ケムリも同時に薄れてゆく。白くけぶった酸の霧から出てきたのは、巨大なゴブリンの骨だった。



 一瞬、ゴーランを殺したときの罪悪感が波のように押し寄せてきたけれど、すぐに引いていった。



「やった……のか?」
「見事じゃ」
「このオレが、ついに上位魔法を?」



「まだ魔術学院の2年で、上位魔法を扱えるのは、ケネスぐらいであろう。でも、満足するなよ。コゾウはもっと上に行ける。もっと上り詰めろ。もっと私を満足させてくれ」



 ヴィルザは歌うように言う。
 自分が発した魔法だとは、今でも信じられずに、ケネスはジッと自分の手のひらを見つめていた。



「おや?」
 ヴィルザが胡乱な声を出した。



「どうかしたか?」
「いや……。なんだか懐かしい匂いがする」
「懐かしいってどういう?」



 ヴィルザの懐かしいは、10年や20年前のことではないだろうとわかった。太古の昔のことを言っているのだろう。



「争いの匂い……。血と悲鳴の匂い……。悲劇の香り」



 ヴィルザは何かを探すように、周囲をせわしなく見回していた。頬が紅潮していた。



 厭な、予感が、する。

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