《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第3-12話「ファースト・シガーキス」

「ほらよ」



 ダンジョンの最奥まで突き進んで、ケネスたちは3人ともヘトヘトになっていた。ゴブリンの死骸の海のなかで、座り込んで休憩していた。ロビンは周囲の状況を探ると言って、場を離れた。ケネスとロールの二人きりになった。



 そんななか、ロールが煙草を差し出してきた。



「オレ、吸えないって」



「煙草は龍の葉で作られてんだ。魔法使いが魔法を使いすぎたときには、ちゃんと薬になるんだろ。精神刺激薬なんだからよ」



「そうだけど……」



 押し付けられて受け取った。精神刺激薬には違いないのだけれど、ふつうはちゃんと小瓶で飲む。煙草で吸うヤツは、どこかやさぐれている。そういう風潮があった。吸おうか吸うまいか迷っていた。



 バートリーから分けてもらった薬だって、まだ残っている。別にムリして吸うこともない。



「立派な魔術師になりやがったと思ったら、結局、まだガキだな」



「お、大人だって、吸わない人はいるだろ」
「私からもらった煙草は吸えないってか?」
「そんなんじゃないよ」



 ガキだと言われたのが厭で、煙草をくわえた。魔法で火をつけようとしたら、ニヤニヤ笑いながらロールが顔を寄せてきた。



「こうやってさ、煙草の先と先をくっつけるんだよ」



 ロールの顔が迫る。亜麻色の髪からは、やっぱり龍の葉の臭いがした。でも、琥珀色の瞳が近づいてきた。ケネスのくわえていた煙草の先と、ロールの煙草の先が重なりあった。



 煙草はまるで性器のように卑らしく身をくねらせていた。落ちてしまいそうだったので、人差し指と中指で支えた。ロールの頬は紅潮していて、鼻息が荒くなっていた。やがてケネスの煙草の先から、淫靡な空気が立ちはじめた。ロールのその大胆な行いに、ケネスは唖然としていた。



 ヘヘ――と顔を離してロールは照れ臭そうに笑った。



「シガーキスってんだ。ケネスのファースト・シガーキスだろ」



「キスも、したことないけど……」


 照れ臭くて目を合わせられなかった。
 ケムリを吸う。
 苦い。
 でも、吸えないことはない。味は精神刺激薬と同じだ。



「振られた女だけど、一矢報いてやろうと思ってよ。これで私のこと、忘れらんないだろ。精神刺激薬の臭いをかぐたびに、私のことを思い出す。私からケネスに呪いだよ。私を置いて、村を出て行った罰だ」



「変わったよな。雰囲気さ」
「私がか?」



「うん。昔はもっとお淑やかだった。田舎娘とは思えないほど上品だったし。笑顔がもっと無垢だった」



「そう言うの、思い出補正って言うんだよ。バーカ」
 と、軽く肩を殴られた。



「かもしれないけど」



「ケネスが村から出ていって、ヤサグレタんだよ。私をこんな風にしたのは、お前なんだぜ」



 オレも昔は、ロールに惚れていた。
 そう言おうとしたが、やめた。
 過去のことなんて語っても、傷を広げるだけだと思ったからだ。



(もし……)



 2年前。この村を出る前に、ロールから告白されていたら、村を跳び出してなかったかもしれないな、と思った。そのときは、冒険者にもならずに、ロールとの家庭を築いていたかもしれない。平凡で、地獄みたいに平和だけど、それはそれで悪くない妄想だった。



「つーか、死骸多すぎなんだよな。どうやって持って帰るんだよ、これ」



 しんみりした空気を払拭するかのように、ロールが明るい口調でそう話を切りかえた。周囲のゴブリン死骸のことだ。



「別にムリして、持ち帰らなくても良いんじゃないか?」



「バカ言うなよ。モンスターの部位は、冒険者ギルドで買い取ってくれるんだ。それぐらい知ってるだろ」



「耳とか、削ぎ取って持ち帰れば良いんじゃない? 全部はムリだろうし」



 この部屋だけで、30匹程度だ。
 ここに来る道中でも、数匹倒してきた。



「ケネスはまだ、Fランク冒険者なんだろ?」
「うん」



「でも、もうFランクなんて実力じゃねェよ。このダンジョン攻略も、ケネスの魔法があってこそだし。Cランク相当ってところじゃねェかな」



「このクエストが終わったら、ランクあげてくれるかも。これだけゴブリン倒してるし」



「笑って悪かったな」
「え?」



「ほら。お前が村に戻ってきたときにさ、まだFランクなのか――って笑ったろ。笑えるような相手じゃなかったよ」



「ありがと」
 と、ケネスは照れ臭くて、小声で応じた。



 もう短くなった煙草を、ロールは未練がましく、いつまでも吸っていた。ケネスの吸っているのには、まだ余裕がある。静かにケムリを吸いこんだ。ロールの味がする。

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