《完結》異世界最強の魔神が見えるのはオレだけのようなので、Fランク冒険者だけど魔神のチカラを借りて無双します。

執筆用bot E-021番 

第3-11話「ダンジョンでの魔法」

 翌朝。


 バートリーたち野営地を後にして、ケネスたち3人パーティは今度こそ、ダンジョン攻略へ行こうと決めていた。


 薬草や精神刺激薬。他にモロモロの道具などは冒険者ギルドから買おうと思っていたのだが、バートリーが分けてくれたので、買う必要はなくなった。バートリーと別れても、ロビンはいつまでも浮かれていた。



「《血の伯爵》。ヘッケラン・バートリーさんかぁ。美しい人だったなぁ」
 と、酩酊の中にいた。



「いつまで言ってんだよ。もう会う機会なんてないよ」
 と、ロールが煙草をくわえながらそう言った。



「わかんないだろ。このオレの魅力に惚れちゃったかもしれないし」



「相手は、帝国魔術部隊の副長官さまだ。私たちみたいな田舎者が会えることなんて、もうねェよ」



「会えるよ。運命を感じる」
「こいつ恋してやがる」



 ロールは困惑した表情で、ケネスのほうを見てきた。なんとかしろ、と言ってるようだった。そんな顔で見られても、どうしようもできない。



「そんな調子でダンジョン攻略できるのか?」



「バカにするなよ。ケネス。こう見えてもオレは、お前よりもランクはひとつ上なんだからな。ダンジョンを攻略して、カッコウ良くバートリーさんのもとに行くんだ」



 だから、もう会えないって――とロールが口をはさんでいた。



 朝日が世界を照らし上げていた。丘陵に生えそろっている草木たちは、うれしそうに身動ぎしていた。



 昨日、ダンジョンを見つけた場所に行くと、暗くポッカリと開いた洞窟の入口が待ち構えていた。ダンジョンは呼吸している。血なまぐさい息を吐きつけてきては、軽く外の空気を吸い込んでいた。冒険者たちを待ち構えている、巨大なモンスターの口のようだ。



「ふう」
 と、緊張を吐きだすように息を吐いた。



 この1年でケネスは、魔法についてかなり勉強した。強くなったとは思う。それでも、ダンジョンに入るのは、久しぶりだ。ずっと以前――ヴィルザと出会う前に、一度だけダンジョンに入ったことがある。そのときは、ゴブリンと出会っただけで、あわてて逃げた。思い出すだけでも、胸がムズかゆくなる。



「じゃあ、入るぜ」
 ロビンが足を踏み出した。



 そのときにはもう恋に浮かれた青年ではなくて、果敢な冒険者の顔つきになっていたので、大丈夫そうだなと安心した。ロビンもロールも剣を使う。だから前衛になった。ケネスは魔法を使うから、後衛だ。



「癒術は使えるのか?」
「いや。そっちはぜんぜん」



 マホ教の講義にも、癒術についてのものがある。でも、そっち系の講義は取っていなかった。魔法だけで手いっぱいだ。ヴィルザは使えるのかもしれないが、使っているところを見たことはない。



「なんだよ。使えねェな」
 と、ロビンはツッケンドンに言った。



 ロビンの悪態は昔からのことで、嫌われてるからだと思っていた。でも、もしかするとロビンは、こういうヤツなのかもしれない。



 洞窟を進む。



 入口付近は、地肌が露出していた。が、奥へ進むと足場や壁が石で組まれていた。通路は細長くなって、3人以上は並んで歩くことが難しそうだった。



「けっこうシッカリした造りだな」
 と、ケネスが呟く。



「ダンジョンは放っておくと、モンスターどもがこうやって要塞化していくんだ。冒険者やってたくせに、そんなことも知らねェのかよ」



「Fランだし……」



「そう言えば、そうだった。要塞化してるダンジョンは、けっこう規模が大きいってことだ。気を引き締めておけよ」



「わかった」



 広間に出た。石で組み上げられた立方体の空間だった。3匹。ゴブリンが座り込んでいた。侵入者に気づいたようで、弾かれたように立ち上がっていた。黒く鋭利に伸びた爪を立てて疾駆してくる。



「来るぞッ!」
 ロビンが声を尖らせた。



 ロビンの構えていたロングソードと、ゴブリンの爪が結び合った。カチン。硬い金属の音が響く。



 もう1匹のゴブリンはロールのもとへ向かった。ロールが装備しているのはダガーだった。身をよじってゴブリンの爪をかわして、そのミゾオチにコブシを叩きこんでいた。ダガーなんて装備で、どうやって戦うつもりなのかと心配していたが、どうやら肉弾戦が得意らしい。



「おいッ。1匹そっちに行ったぜッ!」
 ロールがケネスに向かって言う。



「わかってる」



 魔法陣を展開する。火系基礎魔法《火柱ファイヤー・ピラー》。唇を小さく動かす。地面から炎の柱がゴッと吹き上がる。3本の柱は、3匹のゴブリンに直撃した。かつてヴィルザがやって見せてくれたみたいな、立派な火柱ではない。人間の指ぐらいの太さしかない。頼りない火柱だった。それでも、3匹のゴブリンをけん制することはできた。



 続けて――。



「火球基礎魔法《火球ファイヤー・ボール》」



 人の顔ほどの大きさがある、炎の球が3つ。ゴブリンの腹に直撃した。「熱ちッ」とロビンがあわてて避けていた。3匹のゴブリンはその場で倒れていた。



「へ、へぇ。チッとはやるようじゃねェか」
 と、ロビンは震える声で賞賛を送ってくれた。



「さすが私の見込んだ男だね。けっこうシッカリした魔術師やってんじゃないか」
 と、ロールはもっと素直な言葉を与えてくれた。



 魔法は、ずっと魔術学院で練習してきた。実戦で使うのは、はじめてだった。自分のチカラでゴブリンを倒したのも、はじめてのことだった。ゴブリンを倒した。つまり、Eランク相当の実力はあるということだ。



(オレも、やれるじゃないか)
 ケネスは自信を得て、みずからの手の平を見つめた。

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